賃貸物件で、
借主に家賃を滞納されると、
貸主としては非常に困ります。
このような借主に
出ていってもらうには
どうしたら良いか?
その法的な手順を説明します。
(今日の「棒人間」 家賃を取り立てる?)
<毎日更新771日目>
先日、
不動産賃貸業を営むA社長から
ご相談を受けました。
実は、うちの会社で管理している賃貸マンションの借主で、もう3ヶ月も家賃を滞納している人がいるのです。
3ヶ月も、それはちょっとひどいですね。
この借主に電話で催促しようとしても、いつかけてもつながりません。
手紙を出しても無視されてて、まったくらちがあかないんです。
それは困りましたね〜。
うちとしては、もうこんな借主には出ていってもらいたいのですが、何か良い方法はありませんか?
そうですね。
その場合、まず催告と言って、再度内容証明郵便の形で滞納している家賃を一定の期間を定めて支払うような手紙を出します。
今さら、また請求しないといけないんですかね?
催告したら、滞納している家賃を支払ってくる、という場合もありますので、この場合はいったん催告は必要なのです。ただ、確実に催告したという証拠が残るように、必ず内容証明郵便の形で送るべきです。
なるほど。
その上で、もしこちらが設定した期限までに支払いがない場合は、賃貸借契約を解除した上で、建物明渡しを請求します。
しかし、こういう相手なので、そうすんなりは出ていってくれないのではないでしょうか?
確かにそうですね。
その場合には、建物明渡を請求する裁判を起こさなければなりません。
裁判ですか・・・。
そうですね。
ただ、相手方で何か反論するポイントもなさそうなので、通常の裁判よりはかなり早く終わることが多いです。
ただ、裁判所の判決が出ても、借主が出ていかない、ということもありますよね。
そうですね。その場合は、こちらの勝訴の判決に基づいて、建物明渡の強制執行手続きを行なって、裁判所を使って強制的に出ていってもらうことになります。
は〜。
そこまでやらないとダメなんですね。
こちらで借主の部屋の合鍵を持っているので、勝手に部屋に入って中の荷物を撤去したり、鍵を交換したり、なんてことはやってはマズイんでしょうかね?
それは絶対にやめてください。
いくら貸主でも、借主の部屋に勝手に入ったりすれば、住居侵入罪という刑法上の犯罪になりますし、中のものを勝手に撤去したりすれば、器物損壊罪に問われます。
ここは、面倒でもやはり法律上の王道の手続きを踏まなければなりません。
貸している物件について、
借主が家賃を滞納すると、
貸主としては困ってしまいます。
家賃を滞納するということは、
法律的に言うと、
賃貸借契約における契約違反、
債務不履行になるわけです。
本来ならば、
債務不履行を理由に、
即座に契約の解除が
できそうにも思います。
ただ、
賃貸借契約というのは、
継続的な契約であって、
当事者間の信頼関係が
重要な性質の契約です。
ですから、
1ヶ月とか2ヶ月程度の滞納が
あっただけでは、
即契約解除、
というのは難しいと
されています。
裁判例では、
3ヶ月程度の家賃の滞納が
あった場合には、
まず貸主が借主に対して、
滞納した家賃を支払うように
催告をすることが
求められています。
そして、
催告しても支払いが
なかった場合に、
貸主は賃貸借契約を
解除することができる、
とされています。
賃貸借契約が解除されれば、
借主がその賃貸物件に
住み続ける法的根拠が
なくなりますので、
建物を貸主に明け渡さなければ
なりません。
すんなりと明け渡して
くれれば良いのですが、
家賃を何ヶ月も滞納する
借主ですから、
そう簡単に出ていってくれる
とは限りません。
もし、
出ていってくれない場合には、
裁判所に、
建物明渡請求の裁判を起こす
必要があります。
裁判とは言っても、
家賃を滞納している事実は
明らかですので、
それほど争いになることは少なく、
裁判自体は短時間で終わる
ことが多いです。
ただ、
勝訴の判決が得られても、
まだ借主が出ていってくれない
という場合は、
次に、
裁判所に勝訴判決に基づいて
強制執行の手続きを行う
必要があります。
この段階でようやく、
裁判所を使って強制的に
借主に出ていってもらうことが
できるのです。
ところで、
貸主というのは、
通常は賃貸物件の
スペアキーを持っています。
家賃を長期間も
滞納している借主の部屋に、
このスペアキーを使って
入ることはできるか?
実は、
これをやってしまっている
貸主が現実には一定数います。
しかし、
これは絶対にやっては
いけません。
いくら自分が所有者であり、
自分が貸している物件であっても、
借主の部屋に勝手に入ることは、
刑法上の住居侵入罪にあたります。
さらに、
部屋の中のものを勝手に
撤去したりすれば、
器物損壊罪に問われる
可能性もあります。
これらの行為は、
いわゆる自力救済と言います。
つまり、
法律上の手続きを使わないで
自分の実力行使で権利行使を
してしまうことですが、
法律では禁止されている
行為ですので、
注意が必要です。
そんなわけで、
家賃の滞納がある場合には、
面倒ではありますが、
上記で述べたような法律上の
手続きを踏んでいくしか
ありません。
こうした困った借主が
一定数いるというのは、
不動産賃貸業を行う上での
1つのリスクでしょう。
この手のトラブルを
予防するためには、
保証人をしっかり取っておく、
1ヶ月でも遅れたらすぐに催促する、
場合によっては保証人にも
催促を入れるなど、
やはり普段からマメな
債権管理が必要となりますね。
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6月は会社の株主総会のシーズンなわけですが、今回は、この株主総会の招集通知というものを、いつ、どのタイミングで送らなければいけないのか、こんなテーマでお話しています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。