契約がいつ成立したのか?
契約とは、法的な約束で、成立した以上は当事者間に一定の拘束力が生じます。
ところが、場合によっては、いつ契約が成立したのか、判定が難しい場面もあります。
(話し合いは「成立」しない?@静岡市)
<毎日更新603日目>
今日はブログで書くネタをどうしようかな〜と、なんとなく「Yahoo知恵袋」をながめていたら、次のような質問がありました。
ある不動産の売買契約で、不動産の売主さんからの質問。
話が整って、12月24日に仲介業者から
契約が成立して、買主さんに契約書に署名していただきました。つきましては、契約書を郵送しますので、売主であるあなたにも署名及び捺印をお願いします。
そして、翌日、仲介業者から売主さんのところに契約書が届きました。
契約書は、確かに買主の署名・捺印があり、契約書の日付欄も、買主が署名した12月24日付と書かれていました。
なお、この売買契約では、買主から手付金が支払うことになっており、契約が成立した後でも、買主は支払った手付金を放棄することで、また売主は買主から支払われた手付金の倍額を支払うことで解除できる、とされていました。
そこで売主さんが契約書に署名・捺印しようとしたところ、また不動産仲介業者から連絡が。
実は、買主さんがキャンセルしたいと言っています。あなたがまだ契約書に署名していなければ、契約は不成立です。契約は成立していないので、買主は手付金は支払いません。
いやいや、確かに売主はまだ契約書に署名はしていませんけど、買主の署名・押印はしっかりあり、日付も買主が署名した12月24日と書かれています。
売主としては、すでに契約は成立しているはずなので、買主がキャンセルすると言うなら、手付金を支払うべきだと主張しています。
このような事案で、果たして不動産の売買契約は成立しているのでしょうか?
このように、契約がいつ成立したのかよくわからない、というケースが時々生じます。
特に、買主と売主の間で契約書を郵送でやり取りしていて、双方の署名・押印にタイムラグが生じるようなケースは尚更です。
この点、民法522条は、契約の成立に関して次のように定めています。
法律の条文なのでちょっと固い表現ですが、大切なことは、契約が成立するためには、原則として書面、すなわち契約書の作成は必要ではない、ということなのです。
契約はあくまで、申し込みの意思表示と、それを承諾する意思表示が合致することによって成立します。
つまり、契約は口頭、すなわち口約束でも成立する、ということなのです。
それでは、冒頭のYahoo知恵袋の事例は、どのように考えたら良いのでしょうか?
この点、すでに不動産の仲介業者が間に入って契約書が作成され、そこに買主が署名・押印して売主に対して送っています。
ですから、大前提として売主と買主との間で、特定の不動産の売買を行うという意思が合致していたと考えられます。
常識的に考えて、売主が承諾していないにも関わらず、仲介業者が買主の署名・押印のある契約書を売主に送るとは考えられないからです。
ですから、冒頭の事例では、たとえ売主がまだ契約書に署名・押印していなかったとしても、遅くとも買主が契約書に署名・押印した12月24日には契約が成立していた、と考えられます。
この点、今回の契約では、契約の成立時に買主は売主に手付金を支払うことになっています。
そして、買主がいったん成立した契約を後になって解約するためには、支払った手付金を放棄することが必要となります。
このように、手付金というのは、成立した契約をキャンセルした方に対する、一種のペナルティーなわけです。
ですから、冒頭の事例においても、いったん契約が成立している以上、買主としては、契約を解約するためには、ペナルティーとしての手付金を支払わなければならない、という結論になります。
このように、契約というのは法的な約束を意味しますので、もしそれを破った場合には、それなりのペナルティーが発生します。
ですから、いったいいつ、どの時点で契約が成立したのか、を確定する作業が重要になってくるわけです。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
ただ、口約束でどんなやり取りがなされたのか、厳密には証拠が残っていない場合があり得ます。
その場合には、通常契約を結ぶプロセスで、メールやSNSでのやり取りなどもなされることもあります。
そうしたテキストでのやり取りなども、場合によっては契約の成立を裏付ける証拠になり得るので、重要です。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。