借りている建物のオーナーが、建物を別の人に売却して、オーナーが変わることがあります。
この場合に、新しいオーナーから賃貸借契約書の書き換えを求められることがあります。
新しいオーナーとの間で契約書を作り直す場合は、気をつけなければいけない落とし穴があります。
(次々と新しいビルができる渋谷の街)
<毎日更新596日目>
今回も、先日実際に受けたご相談を題材に書いてみたいと思います。
(守秘義務がありますので、ご相談内容は大幅に変えています)
うちの会社では、オフィスの建物を賃借しているのですが、最近この建物のオーナーが、建物を不動産会社に売却したのです。
なるほど、それでは借りている建物のオーナーが変わって、新しい貸主になったということですね。
そうなんですが、この新しい貸主である不動産会社の対応が何かと悪くて、ちょっと不信感を持っているのです。
なるほど。
旧貸主との間では賃貸借契約書を結んでいたのですが、最近この新しい貸主が、契約書を新しく作り直したいと言ってきたのです。
なるほど、貸主の交代にともなって、契約書を新しく作り直すことを求めてきた、というわけですね。
そうなんです。それで、この場合は新しく契約書を作り直さなければならないのでしょうか?
あまり信用できない貸主なので、契約書を作り直すという場合は、新しい契約書の内容に問題がないか、リーガルチェックをしてもらいたいのですが。
貸主が交代しても、法的には今までの賃貸借契約がそのまま生きていますので、特に契約書を作り直さなければならない、ということはありません。
もし契約書を作り直す場合、こちらにとって不利な条項を入れられていないか、よくチェックしてから調印する必要がありますね。
建物の賃貸借契約において、建物の所有者(貸主)が建物を別の人に売却し、その建物の所有者(貸主)が変わることがあります。
この場合、建物の賃貸借契約は、新しい貸主にそのまま引き継がれます。
すなわち、建物を買った新所有者が、建物の貸主としての地位(権利義務)も当然に引き継ぐことになります。
ですから、借主としての権利には特に変更はなく、従前の賃貸借契約どおりにその建物を利用し続けることができます。
従来の契約がそのまま引き継がれるので、法的には特に貸主が変わったからといって、契約書を作り直さなければならない、ということはありません。
借主としては、従来どおり家賃を支払っていれば、その建物を使い続けることができます。
ただ、貸主という当事者が変わっているので、その段階で契約書を新しく作り直したい、という要望が出てくることもあります。
通常は、新しい貸主から契約書のドラフトが示されて、ここに調印してほしいと言ってきます。
この場合に注意しなければならないことがあります。
それは、新しい貸主が持ってくる契約書が、従前の契約書と比較して内容を変えられていることがあります。
特に、借主にとって不利な条項を新たに入れられていることがありますので、注意が必要です。
たとえば、旧貸主との間の契約書では、賃貸借の期間が満了して、契約を更新するという際に、特に更新料についての定めが入っていなかった。
この場合は、契約更新に際しても、借主は特に更新料を支払う必要はありません。
ところが、貸主が交代して、新しい貸主が作った契約書には、しれっと更新料を支払う条項が入れられていることがあります。
借主が中身をよくチェックしないで調印してしまった場合、更新料の支払いについて合意してしまったことになります。
そうなると、いくら
と言っても後の祭りです。
確かに、悪質な貸主ではありますが、借主も新しい契約書に調印してしまっているのですから、文句が言えなくなってしまいます。
ですから、新しい契約書は内容をきちんと確認して、もし借主に不利に変えられてしまっている部分があったら、新しい貸主に対して訂正を求めるべきです。
そして、もし貸主が訂正に応じない場合は、無理して調印に応じないことです。
先ほど述べたとおり、貸主が交代しても、新しい契約書を作ることは別に法的な義務ではないからです。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
こういうことがありますので、新しい契約書を示された時は、安易に調印しないで内容をよく確認するようにしてください。
できれば、冒頭のご相談事例のように、専門家のリーガルチェックを受けるように依頼したほうが安全でしょうね。
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今回は、解雇予告手当を1ヶ月分支払えば社員を解雇できる、というのは大きな間違いですというテーマでお話ししています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
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中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。