「裁判しないで解決」する建設業・不動産業を多く扱う
渋谷の弁護士吉田悌一郎

【社長の暴走】取締役会にはからないで海外進出を決めちゃった?

会社法関係

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中小零細企業では、

あらゆることで社長の独断専行に

なりがち。

 

 

しかし、

取締役会の設置会社では、

重要なことは取締役会を開いて

きちんと議論しなければならない、

ということがあります。

 

 

この手続を怠ると、

後々会社から損害賠償を請求される

ことがありますので、

注意が必要です。

 

 

 

(昔行ったベトナム・ニャチャンの街並み)

 

<毎日更新645日目>

裁判例の研究も仕事のうち?

弁護士の仕事をしていると、

法律の勉強も大切ですが、

日々全国の裁判所で出される

裁判例を研究することも必要です。

 

 

全国の裁判例といっても、

そんなものをくまなく調べて

いるヒマはありません。

 

 

そこで、ありがたいことに、

全国の裁判所で出された裁判例で

重要なものを、タイムリーに

まとめてくれている雑誌があります。

 

 

 

うちの事務所でも、

この「判例時報」は

定期購読しています。

 

 

といっても、

これを毎回全部読むとか、

そういうことではありません。

 

 

毎回雑誌の目次を見て、

自分の関心のある案件の裁判例で

おもしろいものがないかを

調べています。

 

 

今回、

ちょっとこのブログの読者さんに

参考になるかな、と思われる

裁判例がありましたので、

ご紹介します。

 

 

X株式会社は、

自動車の警報器(ホーン)等の

製造・販売などを手がける

会社でした。

 

 

X社の社長(代表取締役)

であるYは、

ベトナムに子会社を設立して

ホーン製品を製造することを

計画しました。

 

 

そこで、Y社長は、

その準備ということで、

ベトナムでホーン製品を製造

するための機械設備を合計

5279万円で購入しました。

 

 

ところが、この購入前に、

X社の大口取引先から、

X社の技術レベルや財務上の課題を

指摘され、ベトナムの進出は慎重に

検討すべきとの意見が

示されていました。

 

 

その後、

X社のベトナム進出計画は

頓挫(とんざ)してしまい、

上記でX社が購入した機械は、

一度も使われることなく、

未使用のままビニールで包装された

ままになっており、

今後も使われる見込みはない、

とのことです。

 

 

 

 

社長の注意義務違反による経営責任

その後、Y社長はX社から、

損害賠償を求める裁判を

起こされます。

 

 

裁判では、

Y社長がベトナム進出のための

機械設備を購入するにあたり、

取締役会を開催してきちんと

議論をしないで決めてしまった

ことが問題とされました。

 

 

裁判所の判決では、

・X社の大口取引先から技術上、財務上の課題を指摘され、ベトナム進出について消極的な意見を示されていた。

・ そうした状況からして、Yとしては、取締役会を開催して十分な議論をすべきであり、その結論が出るまでは、ベトナム進出に関する具体的な準備作業を一時中止すべき注意義務を負っていた。

・しかし、Yはそれを怠って、取締役を開催しての議論を行わず、今回の機械設備を購入した点に注意義務違反が認められる

として、Yに、

機械設備の購入代金に相当する

損害賠償を命じました。

 

 

取締役会というのは、

取締役で構成され、

株式会社の業務執行に関する

意思決定をしたり、取締役相互の

職務執行を監督する機関です。

 

 

取締役会を設置するかどうかは、

会社の任意ですが、

一定規模以上の会社では、

取締役が複数おり、

取締役会を設置していることが

多いです。

 

 

他方で、

取締役や代表取締役というのは、

株主から会社の経営を任されている

という立場であり、

いわば経営者として、

会社の経営に際して一定の

注意義務を負っています。

 

 

すなわち、

簡単に言えば、

経営上の不注意で会社に損害を

与えるようなことがあっては

ならない、それが注意義務の

中身です。

 

 

今回のY社長は、

ベトナム進出を計画したわけですが、

そのときの客観的な状況として、

大口取引先からX社の技術上・

財務上の課題を指摘され、

ベトナム進出についての消極的な

意見を言われていたわけです。

 

 

それにも関わらず、

多額の会社のお金を使って

機械設備を買ってしまった。

 

 

しかも、

それについて取締役会を開いて、

他の取締役ときちんと協議を尽くす

こともしないで、

勝手に進めてしまった。

 

 

そして、

結果的にはベトナム進出が

うまく行かず、購入した機械設備が

無駄になって、会社にその分の損害を

発生させてしまったわけです。

 

 

裁判例では、このYの行為が、

注意義務違反であると

認定されました。

 

 

中小企業などでは、

社長が業務執行を独断専行で

決めてしまうことがあります。

 

 

しかし、法律的に見ると、

重要な経営判断が絡むような事項は、

きちんと取締役会で議論し、

決議することが要求されています。

 

 

社長が独断専行で決めてしまって、

後々会社が損害を被ったような

場合は、Y社長のように後々会社から

訴えられるという事態も考えられます。

 

 

私の弁護士としての使命は、

中小零細企業のトラブルを

 「裁判しないで解決」すること

 

「裁判沙汰」を避けるためにも、

取締役会設置会社においては、

重要な事項についてはきちんと

取締役会を開いて、

そこで議論を尽くして決定

することが大切です。

 

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

というわけで、

今日のポイントは

 

 社長の独断専行での経営はときに危険!

ということです。

 

 

ところで、

ベトナムというのは私自身も

結構思い入れの深い国です。

 

 

子どもが生まれる前に、

2度ほど訪れて、

大好きになってしまった国です。

 

 

食べ物もおいしいし、

なんとなく街の雰囲気も

気に入っていました。

 

 

この裁判例を見ながら、

あ〜、またベトナムに行きたいな〜

とか、

余計なことを考えてしまいました(笑)

 

 

(2013年頃、ベトナム・ホーチミン市で)

 

 

 

 

 

 

 

 

最新動画 

今回は、建物の賃貸借契約が終了する場面で、借主が建物を貸主に明け渡す際に、どの程度、建物の原状回復をしなければならないのか、こんなテーマでお話しています。

 

 

 

 

 

 

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名前吉田 悌一郎
住まい東京都

Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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