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渋谷の弁護士吉田悌一郎

【残業代払わない契約?】法律と異なる合意は有効か?結論:有効な場合と無効な場合あり

不動産賃貸

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当事者間で、

法律の定めとは違った内容の合意(契約)

を結ぶことがあります。

 

 

そんな、

法律の規定に反した合意(契約)は、

果たして有効なのでしょうか?

 

 

それは、

その法律の規定の性質によって、

有効な場合と無効な場合があります。

 

 

 

(法律で決められたルールと異なる合意は有効なのか?)

 

<毎日更新661日目>

契約書の定めが法律に反している??

先日、

不動産賃貸会社を営むA社長

よりご相談を受けました。

 

 

この会社が賃貸しているマンションの

借主さんと、ちょっとトラブルに

なっているそうです。

 

 

なんのトラブルかというと、

貸している部屋のトイレの便座が

壊れたので、どちらが修理するか?

という問題。

 

 

実は、

賃貸物件の修理・修繕に関するもめ事は、

結構あるんですよね〜。

 

 

会話

具体的には、どんな風にもめているのでしょうか?

うちが借主さんと結んでいる賃貸借契約書では、部屋の中のものが壊れた場合、その修理は借主が自分の費用負担で行うものと定められているのです。

会話

なるほど。
いわゆる賃貸物件の修繕義務の定めですね。
しかし、それではなぜ借主さんともめているのですか?

それが、その借主が、民法606条1項という法律を持ち出してきまして、ここには、賃主が修繕義務を負うと書いてあるではないかと。

会話

そうですね。
たしかに民法606条1項では、賃貸人の修繕義務を定めていますね。

 

民法第606条1項

賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。

 

その借主が言うには、法律では貸主に修繕義務があると定められている。
なので、うちとの賃貸借契約書の定めはこの法律に違反している。
だから、賃貸人であるうちの会社で、壊れた便座を修理しろとしろと言ってきているのですよ。

会話

なるほど。
それは法律の読み方を誤解していますね。

と言いますと??

会話

貸主が修繕義務を負うとするこの民法606条1項は、任意規定と言って、当事者間の合意(契約)で、これとは違う内容を定めることができる性質の規定なのです。

法律の定めとは違う契約を当事者間でしても良いのですか?

会話

法律には、任意規定と強行規定というものがあって、任意規定の場合は、当事者間でそれとは違う合意をすれば、その合意の方が優先的に適用されるのです。

なるほど、そうなんですか。

会話

ですから、御社が借主さんと結んだ賃貸借契約書で、借主が修繕義務を負うと定められているのであれば、そちらが優先するということです。
なので、ご相談の件は、契約書通り、借主さんが自分の費用で便座を修繕すべき、ということになります。

とてもよくわかりました。
ありがとうございました!

 

法律と違う契約(合意)が有効な場合と無効な場合

民事の法律の世界では、

私的自治の原則といって、

私人どうしの取引などには、

できる限り国家権力が介入

すべきではない、

という建前があります。

 

 

そこで、

基本的には、

当事者はいろいろなことについて、

自由に合意(契約)を結ぶことが

できます。

 

 

これを、

 契約自由の原則

と言ったりします。

 

 

そして、

簡単に言えば、

法律の規定には、

任意規定と強行規定という2つの

性質のものがあります。

 

 

任意規定というのは、

あくまで当事者間でそのことについての

合意がなかった場合に、

それを補うための法律、

という位置付けです。

 

 

逆に、当事者間で、

任意規定とは別の合意(契約)を

した場合には、当事者間の合意(契約)が

任意規定(法律)よりも優先します。

 

 

上記の例で言えば、

賃貸借契約書に、

修繕義務に関する規定が

なかった場合。

 

 

この場合には、

任意規定である民法606条1項が

適用されて、賃貸人が修繕義務を

負うことになります。

 

 

しかし、当事者間で、

修繕義務は借主が負うという内容の

賃貸借契約を結んでいた場合には、

そちらが優先します。

 

 

つまり、

借主が修繕義務を負うわけです。

 

 

ただし、

当事者間の合意(契約)が、

いつでも法律に優先するわけでは

ありません。

 

 

たとえば、

ある会社の社員のBさんは、

とにかく会社の仕事が大好きで、

会社のために自分の人生を捧げたい

と考えていました。

(今どきそんな人いるかどうかは置いておいて)

 

 

とにかく自分はリゲイン飲んで24時間働く!

(コレ古いね)

 

 

しかも、

残業代は一切いりません、

と会社に申し出ました。

 

 

そこで、会社としては、

とてもありがたいということで、

Bさんとの間の雇用契約では、

Bさんが何時間残業しても、

残業代は支払わないという、

残業代不払い特約を定めました。

 

 

この残業代不払い特約は有効

でしょうか?

 

 

上記の契約自由の原則からすれば、

当事者間(不利益を受けるBさんも)

で納得して合意している以上、

その合意(契約)は有効であると

言えそうです。

 

 

しかし、

こういった残業代不払い特約は、

法律上無効

です。

 

 

労働基準法では、

労働時間が原則として1日8時間、

1週間で40時間と決められています。

 

 

もしその時間を超えて社員を

働かせる場合には、

法定の割増賃金(残業代)を

支払わなければならない、

と定められています。

 

 

この労働時間や残業代に関する

労働基準法の規定は、

強行規定といわれます。

 

 

強行規定というのは、

任意規定とは異なり、

当事者間で法律と異なる合意(契約)

をしても、その合意(契約)は無効

となってしまいます。

 

 

これは、

上記の契約自由の原則の修正で、

当事者間の合意(契約)よりも、

強行規定(法律)の方が優先する

わけです。

 

 

だから、

いくらBさんが、

24時間働くとか、

残業代はいらないと言っても、

残業代不払いの契約は法的には

無効です。

 

 

強行規定は、

たとえば、

私人間の合意と言っても、

当事者間の力関係に差があり、

それを野放しにしていては不正義や

不合理が生じるような場合に、

規定されています。

 

 

強行規定が定めれらている法律の

典型例としては、

先にあげた労働基準法や、

借地借家法、消費者契約法などが

あります。

 

 

いわば、

そのような例外的な場合に、

契約自由の原則を修正し、

例外的に私人どうしの契約に国家権力が

介入することを認めているわけです。

 

 

そんなわけで、

任意規定、強行規定、

当事者間の合意(契約)の

優先関係としては、

 強行規定(法律)
  ⏫ 優先

当事者間の合意(契約)
  ⏫ 優先

任意規定(法律)
というイメージになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

というわけで、

今日のポイントは

 

 法律とは違う合意(契約)が有効な場合と無効な場合がある!

ということです。

 

 

まあ、

残業代不払い特約がもし有効だったら、

新入社員が入社するときに、

入社の条件としてそのような特約を

結ばせる、ということを

やり出す会社が出かねません。

 

 

そうなると、

世の中があっという間に

ブラック企業だらけになってしまうかも。

 

 

そんな弊害が予想される場合に、

強行規定がそれを規制しているのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最新動画 

今回は、社長が社員を会社の飲み会に誘ったところ、あとでその社員から「残業代」を請求されたという、そんなテーマでお話しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

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名前吉田 悌一郎
住まい東京都

Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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