有給休暇は、
一定の要件を満たした社員の権利
として認められるものです。
ですから、会社としては、
原則として、
法律上の要件を満たした社員の
有給取得の請求を断ることはできません。
ただ、
もし社員の有給取得によって、
「事業の正常な運営を妨げる場合」には、
「時季変更権」というものを使うことが
できる場合があります。
(夜間も「繁忙期」?@六本木から見える東京タワー)
<毎日更新675日目>
建設業界では、
とにかく人手不足、
「人手が足りない」という声を
よく耳にします。
私の顧問先の建設会社では、
人材を確保するために、
他の会社とのM&Aを考えている社長までいます。
慢性的な人手不足、
ということで、
とにかく忙しそう。
ところで、社員は、
一定の要件を満たした場合には、
年次有給休暇というものを取得できます。
有給休暇というのは、
一定期間勤続した社員に対して与えられる
「休暇」のことで、
「有給」で休むことができる、
すなわち取得しても賃金が
減額されない休暇のことです。
有給休暇は、
①雇い入れ(入社)の日から6ヶ月経過しており、
②その期間の全労働日(全出勤日)の8割以上
出勤した労働者に、
10日与えられます。
そして、
その後も1年ごとに要件を満たすことにより、
順次取得できる有給休暇の日数が
増えていきます。
なお、
有給休暇は、
正規社員だけではなく、
派遣労働者などの非正規社員も
取得できます。
さらに、
労働日数が少ないパートやアルバイトでも、
取得できる有給休暇の日数などは異なりますが、
取得することができます
(ただし、年間の労働日数が48日未満の人は例外)。
この有給休暇の取得は、
社員の権利であり、
社員の側からいついつ休みたいという
時季を指定してなされることになります。
その場合、
会社は原則として、
社員からの有給休暇の請求を断ることは
できません。
しかし、
中小零細企業においては、
実際問題として、
社員の好きな時期に自由に有給を
とられては、
困る場合もありますね。
多くの社長さんから
と悲鳴が聞こえてきそうです。
こんなとき、
一定の要件のもとに、
社員の有給取得の請求に対して、
別の日を指定する「時季変更権」
というものがあります。
これは、
社員に有給休暇を認めることで、
には、
会社は社員の請求した時期の有給休暇を
認めないことができる、
という制度です。
会社が、
この「時季変更権」を行使すると、
社員が指定してきた時季に有給休暇を
取ることを認めず、
改めて別の時季に指定をするように
求めることができます。
ただし、
会社がこの「時季変更権」を行使
できるのは、
あくまで会社の
「事業の正常な運営を妨げる場合」
に限られます。
「時季変更権」と称して、
正当な理由なく年次有給休暇の取得を
認めないときは、
という罰則も定められています。
ですから、
単に「繁忙期で忙しいから」という
理由だけでは、
この「時季変更権」を行使することは
できません。
それでは、
どんな場合に「時季変更権」の行使が
認められるのか?
社員の有給取得によって、
「事業の正常な運営を妨げる場合」
の具体的な場面は、
次のような場合です。
などなど。
このような場合は、
会社は「時季変更権」を行使して、
社員が指定してきた時季の有給休暇を認めず、
改めて別の時季に指定をするように
求めることができるわけです。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
ただし、
有給休暇の取得は、
あくまで社員の権利であることを考えると、
やむなく会社が「時季変更権」を
行使する場合も、
一定の配慮が必要でしょう。
すなわち、
会社が「時季変更権」を行使する際には、
きちんとその理由を明示すべきです。
その上で、
社員の心情やモチベーションにも配慮し、
なぜ変更の必要があるのか、
丁寧な説明が必要でしょうね。
そして、
社員の有給休暇取得にあたって、
余計なトラブルを避けるためには、
やはり常日頃からの社員との信頼関係の構築、
という側面も重要だと思います。
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今回は、社員の副業について、会社の業務と競業するような副業を行うことを制限できるか、そんなテーマでお話しています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。