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渋谷の弁護士吉田悌一郎

【株主総会】開いてないのに、書類上やったことにしてしまったら?

会社法関係

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小規模な会社では、

実際には株主総会が

開催されていないのに、

書類上で開催したことにしてしまう、

という運用がなされることがあります。

 

果たして、

こうしたことは法的に

許されるのでしょうか?

 

 

(今日の「棒人間」 株主総会を書類上開いたことにしてしまったらどうなるか?)

 

<毎日更新821日目>

株主総会、書類上でやったことにしてしまえ??

株主総会、毎年面倒だなぁ〜。
うちは小さな会社だし、総会の議事録だけ作って書類だけやったことにしてしまおう。

株主総会が実際には

開催されていないのに、

役員の選任の決議が

なされたということで、

ある株主がこの会社を相手取って、

株主総会決議が存在しない

ことの確認を求めて、

提訴したという事

件があります。

 

 

今日は、

小規模な会社において、

本当は株主総会を開催

していないのに、

開いたことにしてしまう

というのは違法であり、

リスクがあるという

お話をします。

 

 

この記事を読んでいただくことで、

株主総会はなぜ必要で、

開催しないとどんなリスクが

あるかを理解することができ、

将来起こり得るトラブルや

「裁判沙汰」を避けることが

できます。

 

 

実際に、

株式を上場している大企業

ではあり得ませんが、

株式非公開の小規模な会社で、

株主も少ない会社では、

毎年の株主総会を開催

するのが面倒だ、

という声をよく聞きます。

 

 

実際に、

こうした小規模な会社では、

株主総会が開催されていないのに、

総会の議事録だけ作って、

書類上で開催したことにしてしまう、

という運用がなされることがあります。

 

 

たしかに、

こうした小規模な会社で、

一々毎年株主に対して

総会の招集通知を送り、

時間と場所をとって株主総会を

わざわざ開催する、

というのは面倒だと思います。

 

 

さらに、

一部で現在の会社役員と

仲が悪かったり、

批判的な株主がいると、

さらに面倒だ、

という問題があります。

 

 

すなわち、

こうした反対派株主にも

招集通知を送り、

こうした株主が総会に参加すると、

議案に反対されたりして面倒だ、

というわけです。

 

 

そうしたお気持ちは

よくわかります。

 

 

しかし、

結論としては、

株主総会を開いていない

にも関わらず、

書類上のみで開いたことに

するというのは大変な

リスクがあります。

 

 

 

 

株主総会の開催は、なぜ必要なのか?

上記でご紹介した事例は、

鳥取市で都市ガス供給事業を営む

「鳥取ガス」の関連会社

「鳥取ガス産業」という会社で

実際に起こった事件です。

 

 

つまり、

株主総会が開催されてないのに、

役員選任の決議がなされたとして、

男性の株主が同社を相手取って、

決議が存在しないことの確認を

求めて鳥取地裁に提訴

したわけです。

 

 

報道によれば、

この男性は、

鳥取市在住の同社の元従業員で、

父親から引き継いだ同社の株式

4200株を持つ株主だそうです。

 

 

今年の5月19日付で株主総会の

招集通知を受け取り、

その通知に開催日として

書かれていた5月29日の

午前10時に同社を訪れた

そうです。

 

 

ところが、

会社の会議室には会社側の

株主や関係者はおらず、

顔見知りの幹部社員に会うと、

社長は不在

何も準備していない

 などと説明を受けたそうです。

 

 

結局この日、

株主総会は開かれず、

男性はそのまま帰宅したそうです。

 

 

ところが、

その後、

この男性の元には、

株主総会で役員が選任された

との通知が届きました。

 

 

 

この男性が不審に思って

確認したところ、

この会社では、

上記の5月29日に株主総会で

決議されたことを前提として、

役員の登記がなされていた

ことが発覚しました。

 

 

要するに、

実際には5月29日に株主総会は

開かれていないし、

役員選任の決議も

なされていません。

 

 

それにもかかわらず、

会社側で勝手に株主総会の

議事録を作り、

それを元に役員登記を

してしまっていた、

ということです。

 

 

怒り心頭となった

この男性株主。

会社法で定められた株主総会の開催を無視するなど、コンプライアンス軽視が甚だしい!

公益事業を営む会社として、到底許容できない!

として、

今回「裁判」に踏み切った、

ということです。

 

 

そもそも、

会社法という法律で、

毎事業年度の終了後の

一定の時期に株主総会を

開かなければならないと

されています。

 

 

これを定時株主総会

と言ったりします。

 

 

この株主総会は、

株式会社の出資者である

株主の総意によって会社の

意思を決定する手続きです。

 

 

株式会社の日常の業務執行は、

代表取締役などの執行機関が

行うこととされています。

 

 

他方で、

会社の基本的事項に関わるような

一定の重要事項に関しては、

株主総会を開催して

そこで決定するように

法律上要求されているわけです。

 

 

会社法上、

株主総会の決議事項

としては次のような

ものがあります。

取締役などの役員の選任・解任
会社の定款変更

解散

合併や会社分割

事業の譲渡

会計書類の承認

役員報酬の決定

 

要するに、

会社法の建前では、

通常の業務執行は代表取締役

などの役員に任せている。

 

 

他方で、

一定の重要事項については、

その会社の出資者である株主の

意思を確認しなければならない

とされているのです。

 

 

 

株主総会をきちんと開かないと、どんなリスクがある?

この株主総会を

きちんと開催しないと、

主に次の3つのリスクが

あります。

 

 

1つ目は、

もし実際には株主総会を

開催していないのに、

株主総会を開いたことに

してしまうと、

後々株主から、

株主総会決議不存在確認の

訴えを起こされるリスクが

あります。

 

 

これはまさに、

上記の「鳥取ガス産業」

の事例がそれですね。

 

 

そして、

2つ目は、

もし後で有効な株主総会の決議が

なされていなかった、

ということが明らかになると、

その決議で選任された

現社長などの役員も、

実は法的には役員としての

資格がなかった、

ということになってしまいます。

 

 

そうすると

それまで取締役など会社役員の

資格で行っていた

さまざまな業務執行に

影響が出てきます。

 

 

そして、

3つ目は、

「公正証書原本不実記載」という

犯罪になってしまうリスクが

あります。

 

 

たとえば、

株主総会は開いていないのに、

新しい取締役が

総会で選任された

との議事録を作成した場合。

 

 

この場合、

取締役の登記を

行う際に、

この株主総会議事録を

添付することに

なります。

 

 

そうすると、

実態としては

株主総会の取締役選任

の決議がないにも

かかわらず、

それがあったという

虚偽の登記申請を

行うことになります。

 

 

実はこれが、

公正証書原本不実記載

という刑法上の犯罪で、

5年以下の懲役又は50万円以下の罰金

という刑罰が

定められています。

 

 

このように、

小規模企業にとっては、

たかが株主総会かも

知れませんが、

意外といろいろな

法的リスクが潜んで

いるものです。

 

 

このリスクを甘く見ていると、

上記の「鳥取ガス産業」

の事例のように、

「裁判沙汰」の泥沼に

陥る危険性があるわけです。

 

 

 

株主総会の対策はどうするか?

この点、

私のミッションは、

というものです。

 

 

上記で見たとおり、

株主総会を開いていないにも関わらず、

書類上だけで開いたことに

するというのは、

「裁判沙汰」に巻き込まれる

大きなリスクがあります。

 

 

やはり、

面倒でも、

法の要求する手続きを

きちんと行うことです。

 

 

この点、

面倒とは言っても、

小規模企業の場合は、

この株主総会の手続きを

簡略化することも

認められています。

 

 

すなわち、

まず、

株主が少ない中小企業においては、

株主総会における議決権を持つ

株主全員が、

株主総会の目的事項に対して

書面または電磁的方法で

同意を得た場合には、

株主総会の開催を省略できます。

 

 

さらに、

株主が1人の場合などは

書面決議により株主総会を

簡略化できます。

 

 

また、

会社法において株主全員の同意

を得られれば、

株主総会の招集手続は、

省略できることになっています。

 

 

ただ、

これらの場合でも、

同意書面や書面決議、

総会議事録などの書面は

備なくきちんと作る

必要があります。

 

 

また、

小規模な会社に限られませんが、

オンラインやハイブリッド型による

株主総会の開催も認められています。

 

 

さらに、

反対派の株主がいて心配だ、

というケースもあるでしょう。

 

 

しかし、

いくら反対派株主がいても、

現役員などの会社の執行部が

多数派株主になっていれば、

株主総会の決議は基本的に

多数決で決まります。

 

 

ですから、

役員選任などの重要事項について

決議ができず、

株主総会が紛糾する

といったことも、

工夫次第では避ける

ことができるでしょう。

 

 

そのほか、

株主総会対策としては、

常日頃から極力反対派との対立を

解消する努力をすること、

また、

行方不明株主などが生じないように、

株主の管理をきちんと

行っておくことなどが

求められます。

 

 

そんなわけで、

一定の例外を除き、

法で要求する株主総会を

勝手に省略してしまうことは、

法的に大きなリスクがあることは、

お分かりいただけたかと思います。

 

 

こうした株主総会の

対策のことなどで、

ご相談をご希望の方は、

下記よりお申し込みください。

 

 

法律相談のお申し込み

 

 

それでは、また。

 

 

 

 

 

 

 

最新動画 

今回は、家賃を滞納する借主に対して、すぐに出ていってくれといえるかどうかか、こうした借主に出ていってもらう手順などについてお話しています。

 

 

 

 

 

 

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昨日は、私のキャッシュフローコーチ仲間が主催するオンラインセミナーに自宅から参加しました。
文章作成術に関する深いセミナーで、日々文章を書いている私としては、大変に勉強になりました。

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名前吉田 悌一郎
住まい東京都

Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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