注文を受けて納品のために
発送した機械が、
運送業者のミスで途中で破損。
「それ、運送業者のせいなので、
うちには責任はありません」
というのは通用するのでしょうか?
(今日の「棒人間」 すべて運送業者のせい?)
<毎日更新778日目>
それ、うちが壊したのと違うんです。
運送会社のミスで壊れたの。
だからうちに責任ありません。
文句なら運送会社に言って!
誰も、
自分が責任を負いたくない、
これはある意味共通しています。
先日、
工場を経営するA社長から
ご相談を受けました。
先日、うちの工場で使う機械を、機械メーカーであるB社に注文したのです。
ところが、届いた機械を見ると、破損しているのです。
なるほど。
それはB社に伝えましたか?
はい。すぐにB社に連絡して、破損の原因などを調査してもらいました。
調査の結果はどうでしたか?
それが、どうもB社から機械をうちに納品する途中で、B社が依頼した運送業者のミスで、運搬中に交通事故を起こして、そこで機械が壊されてしまったそうなです。
なるほど、運送業者のミスですか。
で、B社はなんと言っているのですか?
それが、B社としては、機械が壊れた原因はあくまで運送業者のミスであって、自分たちには責任はない、の一点ばりなんです。
それはおかしな話ですね。
と言いますと?
本来、機械の売買契約に基づいて、B社には約束した機械を引き渡す義務があるわけです。
それはそうでしょうね。
もし仮に、B社自身のミスで、機械を壊してしまった場合には、B社が契約違反、すなわち債務不履行の責任を負うことになるわけです。
なるほど。
そして、B社が自分の債務を履行するために、外部の運送業者を利用した場合には、この運送業者のミスも、契約者であるB社自身のミスと同視されることになるのです。
それじゃあ、いくら運送業者のミスとはいえ、今回の件は、B社に対して契約違反の責任を問える、ということですね。
そういうことになります。
上記の例の場合、
A社長の会社はB社から
工場で使用する機械を購入する
という売買契約を結んでいます。
売主であるB社は、
約束どおりの機械を
A社長の会社に引き渡す、
すなわち納品する義務を
負っています。
納品のために、
機械の運搬を外部の運送業者に
依頼したところ、
この運送業者のミスで
交通事故を起こし、
運搬中の機械が破損して
しまったとします。
そのため、
B社としては、
契約どおりにA社長の会社に
機械を納入できなくなって
しまったわけです。
そこで、
A社長の会社としては、
B社に対して、
契約違反の責任(損害賠償等)
を追及することが
できるのでしょうか?
この事案、
一見すると、
あくまで独立した外部の
運送業者のミスなので、
B社に落ち度はなく、
B社の責任はないようにも
思えます。
この点、
自分の契約上の義務を
履行するために使用した者
のことを、
専門用語で「履行補助者」
と言います。
上記の例で、
B社がA社長の会社に注文された
機械を納品するために、
外部の運送業者を使った場合、
この運送業者がまさに
「履行補助者」ということに
なります。
そして、
履行補助者に過失などが
あった場合には、
その過失は債務者自身の過失と
同視されるという理屈が
あります。
ですから、
B社としては、
たとえ運送業者のミスで機械が
破損したとしても、
自らの契約違反の責任を
免れることができない、
という結論になります。
これは結局、
取引社会においては、
多かれ少なかれ「履行補助者」を
利用して利益を上げています。
ですから、
この「履行補助者」のミスで
契約違反が生じた場合も、
債務者の契約違反と
同視すべきである、
という考え方が背景にあります。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
この点、
もしA社長の会社から契約違反
による賠償請求をされて、
支払ったB社としては、
もちろん後で運送業者に対して
損害賠償請求をすることが
できます。
B社としては、
この運送業者との間で機械の
運送契約を結んでおり、
運送業者がこの契約に違反して
運搬中の機械を破損したことに
なるからです。
ただ、
B社がいきなりA社長の
会社に対して、
と開き直ることは、
許されませんよ、
ということですね。
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今回は、賃貸オフィスで雨漏りが生じた時に、大家さんに直してと請求できるか?そんなテーマでお話しています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
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私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。