「正社員はゼロ
スタッフは全員業務委託です」
そんな会社が
50人のスタッフを連れて
会社負担の「社員旅行」へ。
この話
法律の視点から見ると
なかなか見過ごせない
問題を含んでいます。

(今日の「棒人間」 お金をケチる人??)
<毎日更新1778日目>
某SNSで
「業務委託」というテーマが
一時的に話題になっていました。
これは
ある会社の社長の投稿が
きっかけでした。
この社長は
自身のSNSで
50人の「スタッフ」を連れて
海外に旅行したことを投稿。
「旅費はすべて会社負担です」
というコメントも。
ところが
この会社
普段から「正社員ゼロ」を公言していて
約600名のスタッフは
業務委託契約とのことです。
そして
実際に
この会社では社会保険に加入している
スタッフがたったの1名だったとか。
しかも
この会社では
スタッフの募集に「採用」
という言葉を使ったり
「福利厚生」が有利であるかの
ような記載がをしていたようです。
こうしたことから
この会社の約600名について
「業務委託」としていながら
実はこれが「雇用契約」の
脱法行為なのではないか
ということが話題になっています。
「雇用契約」を結んだ場合には
法律上解雇が厳しく
制限されていますので
一度雇うと簡単には辞めて
もらうことはできません。
さらに
「雇用契約」を結んで社員を雇うと
会社側には社会保険の
加入義務が生じたり
働かせる時間によっては
残業代の支払い義務が
生じたりします。
そこで
最近では
スタッフとの契約は
「雇用契約」にしないで
「業務委託契約」にした方が良い
こんな風に考えている経営者が
おられます。
「業務委託契約」というのは
あくまで対等な事業者同士の契約
という体裁をとりますので
社会保険の加入義務はありません。
そこで
言い方は悪いですが
いわば「雇用契約」にまつわる厳しい
法的な規制を免れるために
「業務委託契約」を利用しよう
とするケースもあります。
ところが
世の中はそう甘くはありません。
ここで
法律上「業務委託契約」と「雇用契約」の
法律的な違いについて確認しておきましょう。
雇用契約とは
労働者が使用者(会社)との間で
労働に従事することを約束し
使用者がそれに対して賃金を
支払うことを約束する契約です。
他方で
業務委託契約とは
企業や組織が行っている業務の一部を
外部の企業や個人に委託する際に
結ぶ契約の総称のことです。
問題は
「雇用契約」なのか
「業務委託契約」なのかは
形式的な契約の名前や契約書の
名称で決まるわけではない
という点です。
あくまで
会社との関係や働き方の
実態を見て判断される
ということです。
両者の違いを大まかに言うと
働く人が
会社などの使用者に対して「従属」しているか否か
というのがポイントになってきます。
従属性が強ければ「雇用契約」
弱ければ「業務委託契約」
ということになります。
具体的には
下記のような要素で判断されます。
| 比較項目 | 業務委託契約 | 雇用契約 |
|---|---|---|
| 基本的な立場関係 | 発注者に対して対等で自由な立場 | 事業主に対して従属的な立場 |
| 使用従属性 | 使用従属性が弱い | 使用従属性が強い |
| 仕事の依頼・指示に対する拒否権 | 断る自由がある | 断る自由がない(拒否しにくい) |
| 業務内容・仕事の仕方 | 自由度が高い | 依頼者が指揮命令権を持つ |
| 働く場所 | 自由に選択できる | 決まった場所で拘束される |
| 働く時間 | 自由に決められる | 決まった時間で拘束される |
| 報酬の基準 | 仕事の結果を基準 (成果報酬:1件いくら等) |
働いた時間を基準 (時給、月給等) |
冒頭で話題となった会社では
「社員旅行」と称して
スタッフを会社の費用で海外旅行に
連れて行った点が問題とされました。
すなわち
「業務委託契約」というのは
あくまで独立した
事業者同士の契約です。
ですから
会社負担で「社員旅行」
に行くなどというのが
そもそもおかしな話になる。
そして
この会社の過去のスタッフ募集要項には
「引越し代金負担」「社員旅行」
「家賃補助」などといった
福利厚生上のメリットなどが
記載されていたそうです。
しかし
「福利厚生」というのは社員
すなわち「雇用契約」が大前提であり
「業務委託契約」で「福利厚生」
などという概念は出てきません。
こうしたことから
形式上は「業務委託契約」としていながら
それと矛盾する言動が多々ありますので
実態は「雇用契約」と判断
される可能性があります。
このように
「業務委託契約」か「雇用契約」かは
形式的な契約の名称ではなく
実際の業務内容の実態を見て
判断されるということです。
それでは
もし後から「雇用契約」である
と認定された場合
どうなるのでしょうか?
まず
「業務委託」であれば
会計上「外注費」という名目で
お金が支払われていますが
「雇用」
すなわちこれらのお金が「給与」
であるとみなされると
消費税の控除が受けられなくなります。
そして
「給与」であれば本来所得税の源泉徴収
を行う必要がありますが
この源泉徴収漏れという
問題も生じます。
また
過去に遡って
スタッフの社会保険料の会社負担分を
支払わねばならなくなります。
スタッフの数によっては
これは大変な金額になる
ことが予想できます。
さらに
「業務委託」だと思っていたスタッフについて
「雇用契約」にまつわる様々な規制
(たとえば、解雇の規制など)が
課せられることになります。
このように
安易に「雇用」の代替手段として
「業務委託」を使うというのは
実は会社にとって大変な
リスクがあります。
冒頭の会社の経営者の方は
若くして事業を拡大した
「やり手」の方なのだと思います。
しかし
その言動からしても
経営者として法律を
知らなさすぎます。
押さえるべき法律を
押さえずに経営することは
非常に危ういことです。
豪華な「社員旅行」もいいですが
もっと法的なリスクにコストをかけた方
が良かったのかも知れませんね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。