原材料費などのコストが上昇
しているのに、
元請けが価格転嫁に応じないで、
不当に価格を据え置く行為。
これは「買いたたき」として
下請法違反になる可能性があります。
今日は、
この辺のことを深堀してみたいと思います。
(最近値上げされたタイ料理ランチ)
<毎日更新616日目>
原材料費やエネルギー価格などの
コスト上昇が止まらないですね。
少し前になりますが、
公正取引委員会が、
下請け企業との取引価格に、
コスト上昇を適切に転嫁
しなかったということで、
13社の企業・団体名を公表しました。
今回社名を公表されたのは、
次の13社
公正取引委員会は、
昨年の6月から受注者側8万社と
発注者側3万社に対して、
書面や立ち入りでの調査を
進めてきました。
公取の調査によれば、
これらのうち、
価格転嫁の協議をしなかったり、
価格引き上げの要求に
応じなかったりした4030社
に対して、注意喚起の文書を
送付したそうです。
上記で社名を公表された13社は、
取引価格が据え置かれたとの
受注者側からの指摘が特に多かった、
とのことです。
公取が今回社名公表という
踏み込んだ対応を行った背景には、
原材料コスト等の上昇が、
中小企業の経営に影響を与えて
いるということがあります。
そうした中で、
立場が弱い下請け企業が望む
価格転嫁が進んでいないとのこと。
コスト上昇に見合った適正な
価格転嫁を促し、
中小企業の経営を改善して、
賃上げの環境を整備したい、
という狙いもあるようです。
この点、
元請け企業がこうしたコスト上昇に
見合った価格転嫁をせず、
不当に価格を据え置く行為は、
下請法に違反する可能性があります。
本来の法律の原則では、
たとえば売買契約などで一度製品の
価格を決めた以上は、
その後当事者の一方的な事情で
その価格を変更することはできません。
それが、
「契約」というものの持つ拘束力です。
そして、
たとえば下請け企業が製品を作って、
元請けに納入する契約の場合、
製品の価格自体は契約時に
決まっていることが多いでしょう。
ところが、
その後世界的な事情で、
原材料の価格が高騰し、
契約時に決めた価格では、
受注者側(下請け企業)の利益が
圧迫されてしまう、
ということがあります。
そこで、
元請け企業と下請け企業との一定の
取引については、
下請法という法律で、
上記の「契約」の原則が修正
されているのです。
具体的には、
下請法では、
元請け企業が下請け企業に対して、
類似品等の価格または市価に
比べて著しく低い下請代金を不当に
定めることを禁止しています。
これがいわゆる
と言われる行為です。
そして、
公正取引委員会の下請法の
運用基準では、
労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について,価格の交渉の場において明示的に協議することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと。
労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストが上昇したため,下請事業者が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず,価格転嫁をしない理由を書面,電子メール等で下請事業者に回答することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと。
などの行為が、
この「買いたたき」にあたることが
明記されています。
つまり、
コスト上昇を反映しない取引は、
「買いたたき」にあたり、
ということです。
なお、
必要があると認めた場合には、
公正取引委員会は事業者に対して
書面で報告を求めたり、
事業所への立ち入り調査なども
行うことができるとされています。
上記で企業名を公表された13社も、
こうした公取の調査で事実が発覚しています。
世界的なコスト上昇で原材料価格
などが高騰しているにもかかわらず、
元請けが値上げに応じてくれない、
というお話はあちこちでよく耳にします。
この点、
コスト上昇分を適正に価格に転嫁
させるために、
という方法があることも、
頭の片隅に置いておいて
いただければと思います。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
コスト上昇分を価格に転嫁しないで
下請け企業が苦しむ、という例は
今増えているようです。
公正取引委員会もこうした状況を
重く見ているようですので、
今後の動向を見守りたいですね。
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今回は、弁護士の仕事は社会貢献?社会貢献に利益を求めても良いのか?というテーマでお話しています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。