取引で相手に落ち度があった場合、
感情的になって相手に
「損害賠償」を請求したい、
という方がおられます。
気持ちはわかりますが、
「損害賠償」というのも
そう簡単ではありません。
裁判などで認められる
「損害」とは何なのか?
まずこれをキチンと
理解する必要があります。
(今日の「棒人間」 受けた精神的苦痛という損害をお金にかえるのが「慰謝料」)
<毎日更新758日目>
こんなひどい目に遭わされた!
許せない!
損害賠償を請求してください!
よくこのようなご相談をいただくことがあります。
法律的に言いますと、相手に何らかの落ち度があって、それが原因でこちらが「損害」を被った場合、相手に対して損害賠償を請求することができます。
損害賠償というのは、受けた「損害」を具体的にお金に計算して、そのお金の支払いを請求するというものです。
こんなにひどい目に遭わされたんだから、損害賠償でお金をたくさんふんだくってやりたい!
そのようなお気持ちは
よくわかります。
ただ、
損害賠償を請求する、
と言ってもそれほど
簡単ではありません。
相手方の落ち度によって、
具体的にどんな
「損害」が発生したのか?
その「損害」は、
お金に計算できるものなのか?
などなど、
いろいろと難しい問題が
あるわけです。
難しいのは、
もし「裁判」で相手に
損害賠償を請求しよう、
という場合、
こちらが受けた「損害」は、
請求する側で「証明」
しなければならない、
ということです。
たとえば、
バブルの頃によくあったのですが、
不動産売買で、
売主の落ち度で契約の
期限に遅れた、
という場合。
買主は、
買った不動産をさらに別の人に
転売して利益を得ようと
考えていたわけです。
たとえば、
不動産の売買代金が
5000万円だった場合に、
もし契約の期限どおり買主が
買えていれば、
1ヶ月後にこの不動産が
6000万円まで
値上がりしたとします。
買主は、
この不動産を別の人に
6000万円で転売すれば、
1000万円の利益を
得られたわけです。
ところが、
売主の落ち度で、
契約の期限よりも2ヶ月も
遅れてしまった。
その間、
この不動産が4000万円に
値下がりしてしまったとします。
そうすると、
買主としては、
この不動産をさらに高く
転売するということが
できなくなります。
すなわち、
買主は、
1000万円の転売利益を
得ることができなくなり、
これが買主に発生した「損害」
ということになります。
こうしたわかりやすい例
だったら良いのですが、
世の中のトラブルは、
損害が目に見える形で
わかりやすい事例
ばかりではありません。
たとえば、
住宅の建築を依頼したが、
請負人である工務店の落ち度で
住宅の完成が契約上の期限よりも
1ヶ月遅れてしまった。
この場合、
施主が1ヶ月間住むところがなく、
ホテル暮らしなどを強いられた
という場合には、
かかったホテル代などが
「損害」となります。
しかし、
施主がもともと住んでいた
家を持っており、
そこから新しく建てる住宅に
引っ越すというような場合。
この場合には、
賃貸住宅でなければ、
施主の側には、
引っ越しが1ヶ月
遅れたからといって、
別段何か損害が発生している
とは言いにくいでしょう。
しかし、
こうしたケースでは、
すでに施主と工務店との間で
何らかのトラブルに
なっている可能性が高い。
そうすると、
工務店の落ち度で期限に
遅れたという事実自体が、
施主からすると我慢ならない
ということになります。
特に、
目に見えてお金で「損害」
がないというケースでは、
損害賠償の請求が難しくなります。
それなら、「慰謝料」を請求してやる!
あいつのせいでこんなに嫌な思いをさせられたんだ!
「慰謝料」をたっぷりふんだくってやる!
「慰謝料」というのは、
受けた精神的な苦痛を
お金で計算して、
損害賠償として請求する
というものです。
ところが、
この「慰謝料」というのが、
これまたそう簡単では
ありません。
というのは、
日本の裁判所では、
あまり高額の「慰謝料」は
認められにくい傾向が
あります。
さらに、
慰謝料が認められやすいのは、
交通事故などの身体的被害
がある場合、
あるいは不貞行為や名誉毀損
といった財産的な被害ではない
ケースが多いのです。
逆に、
取引上の相手の契約違反
があった場合など、
財産的被害の場合には、
慰謝料は認められにくい
傾向があります。
全体的にいって、
日本の裁判所は、
アメリカなどに比べて、
と考えて間違い無いでしょう。
要するに、
相手の落ち度によって
嫌な思いをしたとか、
悲しい思いをしたという
感情的な側面は、
取引がらみの民事裁判では
あまり重視されない
ということです。
あくまで、
クールに、
具体的にどんな
(つまりいくらくらいの)
損害を被ったのか、
これがシビアに問われる
ということなんですね。
そんなわけで、
相手に落ち度があれば、
必ず「損害賠償」が請求できる、
とは限りませんので、
注意が必要です。
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今回は、お店の前に工事車両が止まっていて、営業妨害になっているときに、店舗の大家さんに対して文句が言えるか、こんなテーマでお話しています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。