新たに社員を雇い入れて、
「試用期間」経過後に、
「本採用」を拒否する
ことがあります。
しかし、
これは法的には「解雇」
の一種になります。
安易にやってしまうと、
後々「不当解雇」で争われる
危険性がありますので、
注意が必要です。
(今日の「棒人間」 本採用はお断り??)
<毎日更新766日目>
「試用期間」ってのは、「お試し期間」みたいなもので、その間ちょっと雇ってみて、ダメそうだったら自由に解雇できると思っていました。
これもまぁ、
経営者の方に割とよくある
誤解だったりします。
社員の数が少ない中小零細企業って、
人の採用はとても大切、
というか、
時に組織の死活問題
にまで発展します。
私の事務所も、
弁護士10人、
事務スタッフ6人という
零細組織なので、
それはよくわかります。
「おかしな人」やその組織の風土に
まったく合わない人が1人でも
入ってくると、
組織内の雰囲気は一変します。
そのたった1人のために、
社内の人間関係がギスギスして
疑心暗鬼になったりします。
挙句の果てには、
社員の不満は社長の方に
向かっていきます。
社長、なんとかしてください!
あの人のせいで、みんな大変迷惑しているんです💢
あの人には会社を辞めてもらいたいです!
先日ご相談いただいたケースでは、
新入社員を雇ったのですが、
試用期間中の仕事ぶりをみていて、
どうにも協調性がなく、
まわりの社員とうまくいかない。
そこで、
社長としては、
試用期間が終わってから、
本採用をしないという形で、
その新入社員にやめて
もらうことにしました。
ところが、
数週間後、
この会社に裁判所から
封書が届きました。
慌てて中を開けてみると、
「労働審判申立書」と書かれた
書類が入っています。
なんと、
「不当解雇」ということで、
そのやめてもらった社員から
裁判所に「労働審判」を
申し立てられたのです。
結局、
この会社では、
この社員に多額の解決金を
支払わざるを得ない、
という結果になってしまいました。
多くの会社では、
新たに社員を雇う際に、
いきなり「本採用」ではなく、
いわゆる「試用期間」を
設けることが多いですね。
この「試用期間」とは、
たとえば3ヶ月とか、
6ヶ月とか期間を決めて、
お試しで採用する
という制度です。
そして、
その「試用期間中」に、
この会社の社員として適格で
あるかどうかを判定する
ことになります。
問題は、
もしこの「試用期間」を経て、
どうも、この社員は、このままうちで働いてもらうのは厳しい
と判断した場合です。
この場合に、
その社員の「本採用」を拒否
することができるかどうか、
ということです。
法律的に見ますと、
「試用期間」というのは、
もしこの社員が不適格
だった場合に、
解約できる権利が
ついた雇用契約、
ということになります。
これは、
専門的には
と言ったりします。
すなわち、
試用期間の終了時に、
会社が解約権を
行使することは、
法的には解雇の一種、
ということになります。
つまり、
本採用拒否は、
ということに
なるのです。
ご承知のとおり、
日本の労働法では、
解雇は厳しく
規制されています。
ただ、
本採用拒否の場合は、
通常の解雇よりは緩やかに
認められる
傾向にはあります。
具体的には、
採用の決定後、
試用期間中に当初会社側が
知ることができなような
事情が発覚した場合です。
この点、
裁判例などで、
本採用拒否が認められた
事例として、
次のようなものがあります。
逆に言えば、
この程度の事情がないと、
なかなか本採用拒否は難しい、
ということになります。
ですから、
単に「うちの会社には合わない」
とか、
「協調性がない」などという理由で、
会社の一存で本採用拒否ができる、
というわけではない、
ということですね。
そんなわけで、
いくら「試用期間」とはいえ、
いったん雇い入れた社員に
辞めてもらうのは、
そう簡単ではない、
ということです。
なので、
やっぱりどんな人を
採用するか、
これは中小零細企業にとって、
本当に死活問題ですね。
大切なことは、
「うちの会社には合わない」
「辞めてもらいたい」と思っても、
安易に「本採用拒否」や「解雇」を
行ってはならない、
ということです。
上記の例のように、
安易にやってしまうと、
後々裁判や労働審判などで、
「不当解雇」を争われる
危険性があります。
私の弁護士としての使命は、
中小零細企業のトラブルを
たとえば、
「本採用拒否」や「解雇」
は難しくても、
自ら会社を辞めて
もらうように説得する
「退職勧奨(たいしょくかんしょう)」
という方法もあったりします。
「裁判沙汰」を避けるためにも、
判断に迷ったときは、
必ず弁護士に相談する
ようにしてください。
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今回は、なくならない弁護士の横領事件、「弁護士は金持ち」は幻想です、というテーマでお話しています。
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Profile
中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。