「裁判しないで解決」する建設業・不動産業を多く扱う
渋谷の弁護士吉田悌一郎

【雨漏りの被害】どこまで大家に責任を追及できるか?

不動産賃貸

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一方の落ち度によって、

他方が被害を受けた、

というケースでも、

被害者の側も、

それ以上被害が大きく

ならないように

努力する義務、

というものがあります。

 

 

これを「損害軽減義務」

と言ったりします。

 

 

被害者が

「損害軽減義務」に違反して、

漫然と被害の拡大防止の措置を

とらなかった場合、

損害の賠償が一部

認められなくなることが

あります。

 

 

 

(今日の「棒人間」 家の中で雨宿り?)

 

<毎日更新773日目>

実は1年前から雨漏りが、というクレーム

連日雨模様という、

うっとうしい天気が

続きますね。

 

 

梅雨どきというのは、

なんとなく気分も

どんよりしてくるものです。

 

 

そんなとき、

どんよりするような

ご相談をいただくことが

あります。

 

 

不動産賃貸業を営んでいる

A社長からのご相談です。

 

実は、うちが貸している戸建ての賃貸物件の借主からクレームが入っていまして。

会話

なるほど、どんなクレームでしょう?

建物の雨漏りがしていて、それによって家電やら家具やらダメになってしまったので、損害を賠償してほしい、というものです。

会話

なるほど、雨漏りの被害ですね。今のような梅雨の時期は多いですね。

それが、どうも1年前から雨漏りがあったようなんです。
それで、室内の湿気がひどくなり、カビやらダニが大量発生して、アレルギーで喘息になったとか言われているんです。

会話

1年も前からですか?

そうらしいんですが、こちらには最近までまったく連絡もなかったので、対処のしようがありませんでした。
それでも、こちらの責任なんでしょうかね?

会話

たしかに、雨漏りについての第一次的な責任は大家さんにあります。

それはわかりますが、しかし、1年前から雨漏りがあったのに知らせてもらえず、今さらすべての損害を賠償しろと言われても・・・。

会話

ごもっともです。
実は、「損害軽減義務」という概念がありまして、被害を受けた方も、それ以上の被害の拡大を防止できるならそれに努めるべきだ、という考え方があります。

「損害軽減義務」ですか。

会話

たとえば、1年前から雨漏りが発生しているのであれば、迅速の大家さんに連絡して、修理を依頼するなどして、被害の拡大を防止する義務が、借主の側にもある、ということです。

なるほど。

会話

借主の「損害軽減義務」が認められれば、すべての損害を賠償しろ、という要求は通らず、賠償すべき損害も一定の範囲に限定される、ということになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨漏りが発生した場合の賃貸人の義務

建物賃貸借の貸主(大家)には、

賃貸の目的物である建物を

使用収益に適した状態で

貸すという義務を

負っています。

 

 

簡単に言えば、

賃貸物件を「まともな状態」で

借主に貸さなければいけない、

という義務です。

 

 

賃貸建物に「雨漏り」が

発生している場合、

それは建物として

「まともな状態」

ではありません。

 

 

したがって

雨漏りによって、

借主に被害が発生した場合には、

貸主の契約違反(債務不履行)となり、

貸主は損害賠償義務が生じる

ことになります。

 

 

ですから、

貸主としては、

借主から賃貸建物に雨漏りが

生じているという連絡を

受けたならば、

直ちに建物の状態を調査し、

雨漏りがあれば早急に

修繕を行う義務があります。

 

 

ところが、

賃貸建物を普段使っているのは

借主ですから、

そもそも借主から

「雨漏りがあります」という連絡を

受けなければ、

貸主には「雨漏り」の事実が

わかりません。

 

 

建物に「雨漏り」がある状態で

長期間放置すれば、

家具や家電が破損したり、

室内の湿気がひどくなり、

カビやダニが発生するといった

被害が生じることが考えられます。

 

 

場合によっては、

それが原因で、

住人がアレルギーや喘息に

かかる可能性もあります。

 

 

このような場合にまで、

すべての損害を貸主が

賠償しなければならない、

というのは、

ちょっとおかしな気がしますね。

 

 

 

 

 

 

 

損害軽減義務とは?

この点、

「損害軽減義務」という考え方が

あります。

 

 

これは、

たとえ一方の落ち度によって

被害が発生したとしても、

被害者の側でも、

その被害の拡大を防ぐために、

合理的な措置をとる義務がある、

という考え方です。

 

 

最高裁の判例でも、

(被害者が)損害の回避または減少させる措置を何らとることなく、損害が発生するにまかせて、その損害のすべてについての賠償を請求することは、条理上認められないというべきである。

(被害者が被害の拡大を防ぐための合理的な)措置をとることができた時期以降における損害のすべてについて、賠償を請求することはできない。

などと述べて、

この「損害軽減義務」の考え方が

採用されています。

 

 

今回ご相談のケースでも、

借主は1年も前から建物に「雨漏り」が

生じていたことを知っていたわけです。

 

 

そうであれば、

借主としても、

それ以上に被害が拡大することを

防ぐために、

直ちにその事実を貸主に連絡して、

雨漏りの修繕を依頼する義務が

あったというべきです。

 

 

ですから、

この借主は、

「損害軽減義務」に違反している

ということになりますので、

発生したすべての損害の賠償を

貸主に請求することはできない、

という結論になります。

 

 

やはり、

取引社会というものは、

お互いの「信頼関係」というもので

成り立っている部分があります。

 

 

いくら貸主に落ち度があって、

自分が被害を受けたからといって、

被害の拡大を防ぐ努力をなにもせずに、

 オレは被害者なんだから、全部賠償しろ!

というのは認められない、

ということですね。

 

 

 

このように、

借主側の「損害軽減義務」によって、

貸主の責任が軽減される場合も

少なくありません。

 

 

ですから、

漫然と借主の要求に従うのではなく、

こうしたケースではまずは

弁護士にご相談することを

お勧めします。

 

 

法律相談のご案内

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最新動画 

今回は、社員が行方不明になってしまった場合、無断欠勤を理由に解雇する手順についてお話しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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名前吉田 悌一郎
住まい東京都

Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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