「裁判しないで解決」する建設業・不動産業を多く扱う
渋谷の弁護士吉田悌一郎

【給料からの天引きOK?】工場の機械を壊した社員への賠償請求

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社員のミスで工場の機械を

壊されたという場合、

その社員に機械の弁償を

求めることができるか?

 

 

また、

給料から天引きして

弁償させても良いのか?

 

 

今日はこの辺のこと

について詳しくお話しします(^ ^)

 

 

<毎日更新518日目>

工場の機械を社員に壊された?

 

先日、

都内である会社の社長から

ご相談を受けました。

(守秘義務がありますので、

ご相談内容は大幅に変えています)

 

 

実は、うちの会社の社員が、工場でフォークリフトを運転中に、

ミスでフォークリフトを壊してしまったのです。

会話

なるほど、それは大変でしたね。

怪我はなかったのですか?

はい。

幸い怪我はなかったのですが、

壊れたフォークリフトは修理もできず、

全損になってしまったので、買い替えなければ

ならなくなってしまいました。

会話

そうなんですか。

それはなかなか大ごとですね。

それで、これはその社員のミスが原因

ですから、フォークリフトの買い替え

代金をその社員に払わせたいと

考えているのです。

会話

なるほど。

お気持ちはわかりますが、現実問題として

その社員に買い替えの代金を払うことは

できないのではないですか?

確かにそうなんです。

そこで、その社員の毎月の給料から

少しずつ天引きして返してもらおうかと

考えているのです。

会話

う〜ん、実は労働基準法で、給料は社員に

直接全額を支払わなければならないと

定められているので、そのやり方はちょっと

注意が必要ですね。

なるほど、給料からの天引きは問題がある

というわけですね。

会話

そうなんです。

それと、弁償をさせる金額についても、

フォークリフトの買い替え費用全額を支払わせる

ことは難しく、一定の金額に制限されることになる

のが通常です。

会社が社員に賠償請求できる範囲について

 

上記のような事例で、

まず考えられることとしては,

壊れた機械の修理代金(あるいは交換費用)

について,その社員の毎月の給料から

天引きするという方法です。

 

 

ただ、労働基準法24条1項では、

金は,通貨で,直接労働者に,その全額を支払わなければならない。

と定められています。

 

 

給料というものは,社員(やその家族)の生活を

支えるものであり,給料が全額きちんと

支払われるかどうかは社員にとっては死活問題です。

 

 

そこで、

社員に対する損害賠償金などを

社員の給料から天引きして

支払わせることは、原則として

禁止されているのです。

 

 

この点、その社員が給料からの天引き

同意しているときはどうでしょうか?

 

 

これについては、

最高裁の判例があり、

その同意が労働者の自由な意思に基づいてなされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき

には天引きをすることも

例外的に許されるとしています。

 

 

ですから、

もし給料からの天引きを行うには、

その社員の真摯な同意があることが前提で、

きちんとした同意書を作成して

おくことが大切です。

 

 

さらに、

賠償の範囲についても、

フォークリフトの買い替え代金

のすべてを社員に弁償させられる

わけではありません。

 

 

これは、

会社は社員を雇うことによって

利益を得ています。

 

 

ですから、

仮に社員のミスで会社に

損害が発生したとしても、

その損害をすべて社員に

負担させるのは公平ではない、

という考え方があります。

 

 

この考え方のことを、専門的に

報償責任(ほうしょうせきにん)の原理

と言います。

 

 

それでは、

全額の弁償は請求できないとしても、

会社はどの程度の範囲で請求

できるのでしょうか?

 

 

この点に関しては、

最高裁判所が判断基準を

示しています。

 

 

具体的には、

使用者(会社)は,その事業の性格,規模,施設の状況,被用者(社員)の業務内容,労働条件,勤務態度,加害行為の予防又はそ損失の分担についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見知から信義則上相当と認められる限度において,被用者(社員)に請求することができる

とされています。

 

 

数字的にどの程度か?

はあくまでケースバイケースですが、

一般的には会社が受けた損害の

2割から3割程度が妥当

されているようです。

 

 

まとめ

というわけで、

 

今日のポイントは

 

 社員のミスで会社が損害を受けても、賠償請求は制限される!

 

ということです。

 

 

実際問題としても、どの程度

社員に負担させるかは、

その社員の資力や会社の財務状況

にもよるでしょうね。

 

 

重要なことは,このようなケースでは

感情的になることなく,会社と社員が

お互いに冷静かつ誠実に話し合い,

妥当な解決策を考えることだと思います。

 

 

感情的な対立になってしまうと、

社員との間でトラブルや「裁判沙汰」

に発展してしまう危険もあります。

 

 

私の弁護士としての使命は、

中小零細企業のトラブルを

「裁判しないで解決」すること。

 

 

「裁判沙汰」を避けるためにも

冷静な話し合いが大切でしょう。

 

 

具体的には,会社が工場内で社員が

できる限り仕事をしやすい環境

(ミスが起こりにくい環境)を

整える努力をしていたか?

 

 

社員のミスの程度がどのようなものか

(起こりうるミスか,通常あり得ないような

重大なミスか)?

 

 

などの具体的な事情を考慮しながら,

話し合いをしていくことに

なろうかと思われます。

 

 

 

 

最新動画 

今回は、労働基準監督署から呼び出しが来た場合に、それを無視するとどうなるか?こんなテーマでお話ししています。

 

 

 

 

 

活動ダイジェスト

昨日は午前中は自宅で仕事、午後は事務所に出勤。
夕方からは、キャッシュフローコーチ仲間と勉強会でした。

 

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ノーリスクプロモーター

                               
名前吉田 悌一郎
住まい東京都

Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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