「裁判しないで解決」する建設業・不動産業を多く扱う
渋谷の弁護士吉田悌一郎

【酒の席で資金援助の約束】請求されたら払わなければならない??

契約書

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「酒の席」は楽しいものです。

 

 

お酒が入って、

気が緩んで、

とんでもない「約束」を

してしまった!

 

 

こんなときの「約束」って、

法律的にはどうなんでしょうか?

 

 

 

(今日の「棒人間」 お酒の席での「約束」には気をつけましょう)

 

<毎日更新920日目>

酒の席で口をすべらせた??

先日、

お酒が大好きな

顧問先のA社長から、

ご相談がありました。

ちょっと困ったことがおきまして、ご相談したいのです。

会話

A社長、今日はどうされましたか?

先日、経営者仲間の飲み会で、ある若い女性の経営者と知り合いまして。

会話

なるほど、若い女性の経営者ですね。

はい。
飲み会でこの女性と盛り上がってしまい、つい口をすべらせてしまったのです。

会話

いったい、どうされたのですか?

この女性の経営者が、今度事業拡大がしたいというので、資金援助をしてくれる人を探している、という話だったんです。

会話

なるほど、事業拡大のための資金援助ですね。

はぁ〜。
それで、私も応援してあげたいという気持ちがあったのと、お酒が入って酔っていたので、つい、「100万円援助してあげる」、なんて言ってしまったんです。

会話

なるほど。A社長はお酒がお好きですからねぇ。

その飲み会が終わって、私もそんなことを言ったことはすっかり忘れていたのですが、後日この女性の経営者から連絡があったのです。

会話

どんな連絡ですか?

それが、私が100万円援助すると言ったことを覚えていて、いつ100万円を援助してくれるのか?という連絡だったんですよ。

会話

なるほど、酒の席での約束を覚えていて、後日、本当に請求してきた、というわけですね。

そうなんですよ〜。
最初は適当にあしらっていたのですが、結構しつこく連絡してきて、ちょっと参っているのです。
こういう場合って、法律的にはどうなんですかね?

会話

まあ、酒の席での約束も、一応、法的に契約が成立し得る場合があります。

そうなんですか〜。
それじゃあ、やっぱり100万円払わないといけないのですかね?

会話

ただ、仮に契約が成立していたとしても、酒の席でのものですので、強制的には請求できない、という特殊なものだと思います。

???
と言いますと?

会話

これは、「自然債務」というのですが、一応法的に契約として有効ではあありますが、相手方が裁判などで支払いを強制できるまでの強い効力はない、という特殊なものです。

ということは、今回は私は払わなくてもよい、ということでしょうか?

会話

結論的には、まぁそういうことになりますね。
それにしてもA社長、お酒の席であまり調子の良い約束はしない方がいいですよ。

わかりました!
これを機に反省します・・・。

 

いくつか考えられる場面

酒の席での約束が、

法的に契約として効力が

あるかどうか?

 

 

これは、

いくつか考えられる

パターンがあります。

 

 

泥酔した状態での約束

お酒にすごく酔っていて、

泥酔状態で前後不覚。

 

 

そんな状態で約束したことは、

さすがに法的な効力は

ありません。

 

 

泥酔状態や酩酊状態の場合、

「意思能力」がないと言われます。

 

 

「意思能力」というのは、

簡単に言えば、

有効に契約などを行うことが

できる能力のことを言います。

 

 

たとえば、

幼児とか、

重度の認知症にかかった人などは、

一般的には「意思能力」

がないと言われます。

 

 

「意思能力」がない人が

行った契約は、

法的に無効とされています。

 

 

ですから、

泥酔状態で行った約束は、

法的に契約としては

有効ではない、

ということになります。

 

 

お互いに本気にしていなかった約束

それでは、

そこまで酔っていなかった

場合の約束は、

どうなるのでしょうか?

 

 

まず、

「酒の席」ということを考えると、

あまり高額のお金のやり取り

などをその場で本気で

約束することは、

あまり考えにくいですね。

 

 

お互い冗談半分で、

本気にしていなかった

ような場合が考えられます。

 

 

このように、

酒の席で冗談半分に

 100万円あげるよ!

などと言っても、

言っている本人も

真意ではないし、

言われた相手もそれを

本気にしていない、

ということはよくあります。

 

 

このようなケースは、

法律的には心裡留保(しんりりゅうほ)

と言われるものです。

 

 

要するに、

冗談半分で真意でない約束をして、

相手方もそれが真意でない

ことがわかっていたような場合は、

やはり法的に有効な

契約とは認められない、

ということです。

 

 

契約は成立しても、法的に強制できない場合

それでは、

「あげる」と言っている方は、

酒の席で本心ではなかったとしても、

言われた相手がそれに気づかず、

本気にしてしまった、

という場合はどうなるのでしょうか?

 

 

その場合、

一応法的には有効な100万円の

「贈与契約」が成立している、

と考えることができます。

 

 

しかし、

そもそもお酒の席での

約束というのは、

気が緩んでいますし、

必ずしも確定的な意思に

基づく約束とは言えない

場合も多いわけです。

 

 

そのような状況でなされた契約は、

契約としては有効でも、

裁判などによって強制できない

性質のものであるとされています。

 

 

これを、

専門用語で「自然債務」

と言います。

 

 

この「自然債務」の特徴をまとめると、

次のようなものです。

・法的には一応有効(上記のような意思能力のない人が行った契約とは違う)

・約束した本人が、約束どおりに支払えば、それは法的に有効な支払いとなる(後から返してとは言えない)

・ただし、もし約束した本人が、約束に反して支払わなかったとしても、相手方は裁判などによって支払いを強制することはできない。

大昔の裁判例で、

「カフェー丸玉女給事件」

という事件がありました。

 

 

これは

昭和10年(1935年)の裁判例です。

 

 

ある男性が、

「カフェー丸玉」というお店

(今でいう「クラブ」のようなもの?)

で働いていた女性に対して、

この女性に気に入られる目的で、

将来の独立資金として

「400円」をあげる、

という約束をした

というケースです。

 

 

この女性が、

この男性に対して、

約束どおり「400円」の

支払いを求めて

裁判を起こした、

というのがこの事件です。

 

 

この事件で、

当時の大審院

(今の最高裁判所のようなもの)は、

女性に気に入られる目的で多額のお金をあげるという約束をしても、これが裁判上の請求権を与える趣旨とは考えられない。
約束した男性が自ら進んで支払うときは、債務の弁済にあたるが、この男性に支払いを強制することはできない特殊な債務

という趣旨の判断を

行いました。

 

 

ちなみに、

昭和10(1935)年

の400円というのは、

今の貨幣価値に直すと

150万円〜200万円

くらいだそうです。

 

 

そんなわけで、

上記のA社長が酒の席で

行った約束も、

「自然債務」と考えられるので、

まぁ支払わなくても

問題はないと考えます。

 

 

 

「酒」は災いのもと??

とはいえ、

後になって、

酒の席でのこんな約束を

持ち出されて請求されたら

イヤですよね。

 

 

いい格好をしたくて

「お金を出す」とか言ったのに、

後で「あれは酒の席でのことだから」

などと言うのも、

あまり格好よくないですね。

 

 

私もお酒は大好きで、

人生にお酒は必要だと

思っていますが、

他方でお酒は災いのもと

にもなります。

 

 

これから忘年会シーズン

になりますし、

気をつけたいものですね。

 

 

それでは、

また。

 

 

 

 

 

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今回は、弁護士の法律相談に行く時に、どんな格好をして行けばいいのか、そんなテーマでお話ししています。

 

 

 

 

 

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昨日は、午前中から事務所。
新規のお客様との打ち合わせなどでした。
夕方は、息子の習い事(空手)の送迎の合間に、自宅で仕事でした。

 

 

 

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名前吉田 悌一郎
住まい東京都

Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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