中小零細企業では、
会社の株は経営者か
後継者がきちんと
押さえていることが
多いでしょう。
ただ、
時おり、
会社の株がそれ以外の
第三者に分散している
ことがあります。
そこで、
経営者や後継者以外の
第三者が株を持っている
場合のリスクについて
お話しします。
(今日の「棒人間」 株主が分散するリスク)
<毎日更新938日目>
中小零細企業の場合、
株式会社とはいえ、
会社の株式は、
通常経営者かその
同族が持っている
ことが多いでしょう。
その会社の経営者や
後継者候補の人が株の
大半を持っていれば、
特に問題となることは
少ないと思われます。
ところが、
世の中には、
そうした経営者や後継者以外の
第三者が一定の株式を
持っている場合があります。
具体的には、
経営者の親族や、
会社の社員、
会社の取引先などが
一定の株式を持って
いる場合などです。
なぜこのようなことに
なるかと言うと、
過去の法制度が
影響していたりします。
すなわち、
平成2年商法改正前は、
会社を設立する際に
必要な発起人
(会社設立後は株主となる出資者)
が7人以上必要と
されていました。
ですから、
この時代に株式会社を
設立しようと思った場合には、
株主を経営者だけに
限定することが
できませんでした。
親族や社員、
親しい取引先などに
名義上会社の株を持ってもらう、
ということが割と
よくあったのです。
また、
最近でも、
同族経営の企業などでは、
相続税対策として、
あえて第三者に株を持って
もらうということが
なされることがあります。
中小零細企業において、
このように会社の株式が
経営者や後継者以外の第三者に
まで分散していると、
どんなリスクがあるのでしょうか?
会社法の建前では、
会社運営の重要な事項は、
株主総会の決議を
経なければならない、
とされています。
たとえば、
取締役などの役員の選任・解任、
自己株式の取得、
資本金の増減、
定款変更などなどです。
通常は、
普通決議といって、
会社の株式の議決権の過半数を
持つ株主が出席し、
その出席した株主の過半数で
可決されます。
ですから、
会社の経営者や後継者で
過半数の株を持っていれば、
通常は問題ありません。
ところが、
一定の重要事項については、
株主総会の特別決議といって、
議決権の過半数を
有する株主が出席し、
その出席した株主の議決権の
3分の2以上の賛成が必要
となる決議があります。
たとえば、
定款の変更、
会社の合併や解散、
事業譲渡などは、
株主総会の特別決議を
経なければならない、
とされています。
もし会社の経営者と後継者で、
議決権の3分の2以上の
株式を持っていれば、
この場合も問題はありません。
しかし、
もし仮に、
経営者と後継者以外の
第三者が持っている株式が、
3分の1を超えている場合は、
この特別決議が成立
しなくなるリスクがあります。
もちろん、
こうした第三者が会社の
経営に協力的で、
特別決議に賛成して
くれればよいでしょう。
しかし、
たとえば、
株を持っている親族や社員、
取引先が協力してくれない
場合も十分にあり得ます。
すなわち、
その親族と相続争いで
もめているとか、
従業員がすでに
退職してしまっているとか、
取引先とはもう取引が
なくなってしまっている
ようなケースです。
場合によっては、
株を持っている人と
長年疎遠になっていて、
連絡がとれない、
行方がわからないなどと
いう場合もあります。
このようなケースでは、
会社の重要事項を
決定できなくなって、
会社の経営に重大な支障が
生じる可能性があります。
さらに、
経営者や後継者以外の第三者で、
会社経営にあまり協力的
でない人が株を持っている場合、
株主の権利を主張される、
というリスクがあります。
会社法上、
株主というのは、
実にさまざまな権利を
持っているものです。
たとえば、
1株でも株式を持っていれば、
株主総会で議案を提案したり、
決算書類等の閲覧や
謄本の交付請求をしたり、
株主総会の決議の取り消しを
求める訴えを起こすことが
できたりします。
さらに、
議決権の3%以上を
その株主が持っていれば、
会社の会計帳簿等の閲覧請求や、
株主総会の招集請求、
会社の役員を解任する
訴えを起こしたりも
できてしまいます。
また、
こうした第三者が
株を持っている場合、
この株をまた別の誰かに
譲渡されてしまう、
というリスクもあります。
この点、
多くの中小零細企業では、
株式の譲渡には取締役会
ないし株主総会の承認を
要するとされていることが
ほとんどです。
ただ、
その場合でも、
株主が誰かに株を譲渡した場合、
その譲渡自体は法的に
有効なものとして扱われます。
その上、
会社は、
その株式譲渡を承認しない場合には、
その株式の買取に応じなければ
ならない可能性もあります。
このように、
中小零細企業においては、
会社の経営者や後継者以外の
第三者が株を持っている場合には、
こういったいろいろなリスクが
あるものです。
それでは、
このように会社の株式が
第三者に分散している場合、
どうしたらよいのでしょうか?
その辺につきましては、
長くなりましたので、
また明日お話しします。
それでは、
また。
裁判しないで解決するノーリスクプロモーター・弁護士 吉田悌一郎のプロフィール
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。