会社の建物に設置した広告看板。
台風でこの看板が落下して通行人がケガをした、
という場合、誰がどんな責任を負うのか?
今日はこのテーマでまとめてみました(^ ^)
(巨大な広告看板が立ち並ぶ新宿駅東口)
<毎日更新542日目>
今回は、都内で不動産業を営む社長より、ご相談を
いただきました。
(守秘義務の関係上、ご相談内容は大幅に変えています)
実は、うちの会社のオフィスがあるビルの2階部分に、看板広告を設置していたのですが、先日の台風でその看板が外れて下に落下してしまったのです。
それは大変でしたね。
ケガをされた方などはおられなかったのですか?
それが、そのとき下に人がいて、落下した看板に当たってしまい、全治3ヶ月のケガをされたのです。
「全治3ヶ月」とは結構重いケガですね。
実はそれで、被害者の方からうちの会社に対して、損害賠償の請求をされたのです。
入院費や治療費、慰謝料や休業損害を支払えと言うのです。
なるほど、ケガをした被害者から損害賠償請求をされたということですね。
たしかに看板を設置していたのはうちですが、台風によるものなので・・・。
うちが被害者の方に損害賠償をしなければならない責任があるのでしょうか?
今回の台風が、まったく予想外の不可抗力というべき程度のもので、看板に腐朽や破損などの欠陥がなかったとしても、被害が生じたと言えるような例外的な場合出ない限り、御社の責任、ということになってしまいます。
そうなんですか・・・。
通常、そのような例外的なケースはまれです。
もし看板の接合部分に腐朽や破損があったというような場合には、看板の所有者ということで、御社が土地工作物責任という法的な責任を負うことになります。
このようなケースは、民法の「土地工作物責任」
と言われる問題になります。
民法では、この点次のように規定しています。
民法717条1項
ここで言う「土地の工作物」というのは、判例によれば、
と定義されます。
要するに、典型的には建物ですが、建物の屋根や窓など
建物に設置されたものも含まれます。
ですから、建物に設置された広告看板なども、ここで言う
「土地の工作物」に当たることになります。
次に、「設置又は保存に瑕疵(かし)」がある場合とは、
を言うとされています。
たとえば、建物に設置された広告看板の場合、看板の接合部分に
腐朽や破損などが存在したような場合には、「瑕疵」があったと
判断されるでしょう。
ただ、たとえば今回の台風が、まったく予想外の不可抗力というべき程度のものであって、
看板に腐朽や破損などの「瑕疵」がなかったとしても被害が発生した、
という場合には、「設置又は保存に瑕疵」がなかったものとして、
責任を負わないことになります。
しかし、こうした例外的なケースは通常まれでしょう。
毎年来る通常程度の台風で看板が外れてしまった、というような
場合には、「設置又は保存に瑕疵」があると判断されるでしょう。
そんなわけで、広告看板を設置している会社では、
もし事故が起これば、被害者から工作物責任を追及
されるリスクがあります。
そうなると、被害者から損害賠償を請求する裁判を
起こされる可能性もあります。
私の弁護士としての使命は、中小零細企業のトラブルを
「裁判沙汰」を避けるためには、日頃から看板の状況について
きちんと管理しておくことが大切です。
具体的には、定期的に看板に腐朽や破損が生じていないかどうかを
チェックしましょう。
そして、その際には、看板の状態を確認した時期、そのときの看板の状態、
依頼したメンテナンスの内容や結果などについて記録に
残しておくことをお勧めします。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
設置した看板が落下した、ということになると、
人に重いケガをさせてしまう危険もあります。
常日頃から看板のメンテナンスを含めて、
危険物の安全確認はしっかりと行いたいですね!
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。