社員が会社を退職して独立。
うちの顧客を引き抜かれるのではないか
こういったトラブルが増えています。
トラブルを要望するためには
やはり事前の準備が必要です。
(今日の「棒人間」 引き抜かれる人?)
<毎日更新1266日目>
先日
美容室を経営するAさんより
ご相談を受けました。
こんにちは。今度、うちで新たに美容師を採用することになったのです。
新たな採用ですか。それはおめでとうございます!
ありがとうございます。
実は、1つ心配なことがありまして。
それは、どんなことでしょう?
美容師の業界は、人の動きも結構あるし、将来独立を目指している人もいます。
そうでしょうね。
今回採用する美容師が、もし将来うちを辞めて独立するようなときに、うちの顧客を引き抜かれることがあるのではないかと、心配なのです。
なるほど、それは心配ですね。
もちろん、うちの業界もお客様は個々の美容師につきますから、うちの美容師が独立して、自然にその美容師についていたお客様が離れていくのは仕方ないと思うのです。
確かに、それはそうでしょうね。
しかし、それを超えて、美容室のお客様に積極的に営業をかけまくって、美容室のお客様をごっそり引き抜いていく、なんてトラブルも見聞きするので、それで心配になってしまったのです。
そうですか。その場合には、その美容師さんが入社する際に、顧客の引き抜きを禁止する「誓約書」を書いてもらう、という方法があります。
なるほど、誓約書ですか。
たとえば、美容室の顧客名簿の持ち出しを禁止したり、美容室の顧客に営業をすることを禁止することを内容とする誓約書です。
なるほど。
こういう誓約書を書いてもらっておけば、後でその美容師さんが違反した場合には、損害賠償を請求できることになります。
「損害賠償」、なんか恐ろしいですね。
いや、それはあくまで相手が違反した場合です。そもそもこういう「誓約書」を書いてもらっておけば、その美容師さんも違反したらマズいと思うので、顧客引き抜きトラブルを予防することにつながるのです。
社員による顧客の引き抜きトラブルは
最近よく聞かれる問題です。
顧客の引き抜きは
たとえば社員が会社の
顧客名簿を持ち出してしまう。
あるいは
会社の顧客に積極的に営業をかけて
引き抜いてしまうなどの方法で
行われることが多いでしょう。
この場合
あらかじめそのような
行為を禁止しておく。
具体的には
社員さんに「誓約書」を書いて
もらうという方法があります。
まず
会社の顧客名簿などの
持ち出しを禁止する誓約書。
そして
もう1つが
顧客との取引を
禁止する誓約書です。
このような「誓約書」を書いてもらえば
その社員と会社との間の
1つの契約となりますので
違反すれば当然
ペナルティーが生じます。
具体的には
社員が違反した場合には
会社は社員に損害賠償請求を
行うことになります。
ただ
この顧客との取引を禁止する
誓約書については
1つ注意が必要です。
それは
社員も憲法で保証された
職業選択の自由を持っています。
この職業選択の自由には
誰とどんな取引をするかなどの
営業の自由も含まれます。
そこで
顧客との取引を禁止する誓約書でも
あまりに無制限なものは
法律上無効とされる危険があります。
そこで
誓約書の内容を一定の限度に
制約する必要があります。
具体的には
顧客との取引を禁止する期間を
退職後2年間というように
期間を限定するものです。
さらに
会社の全顧客との取引を
禁止するのは広すぎるので
たとえば
その社員が担当した顧客に
限定して禁止するなどです。
このように
顧客との取引を禁止する誓約書でも
期間や範囲などを一定程度に
制限したものであれば
法律上有効であるとされています。
ただ
美容師さんのように
お客様がその美容師さんにつく
という性質がある場合
顧客との取引を禁止してしまうのは
少しやりすぎということも
あるかも知れません。
上記のAさんのケースように
そういう自然な顧客の移動は
仕方ないとしても
それを超えて
積極的に店の顧客に営業を
かけることを防止したい場合。
そのような場合は
顧客との取引の禁止の誓約書ではなく
顧客に営業することを禁止する
誓約書の形にしておけば
良いと考えます。
いずれにしても
こうした誓約書は
もちろん事前に書いて
もらう必要があります。
できればその社員の入社時に
そうでなくても在職時に
書いてもらう必要があります。
よくありがちなのが
退職時にいきなりこういった
誓約書を持ち出して
トラブルになるケース。
社員が会社を辞めることになって
会社が慌てて制約させよう
とするケースです。
こうしたトラブルを予防するには
やはり事前にこうした誓約書を
きちんと書いてもらうことが大切ですね。
それでは
また。
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Profile
中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。