社員のミスで
会社の高価な機械を壊されて
買い替えを余儀なくされました。
会社としては
ミスをした社員に機械の買い替え代金の
全額を賠償請求できるのでしょうか?
(今日の「棒人間」 機械を壊しちゃった)
<毎日更新1318日目>
建設業を営むA社長の会社。
先日
この会社の社員が現場で仕事中に
この社員の操作ミスで会社の
工事用の機械を壊してしまいました。
急いでこの機械を修理に
出そうとしましたが
残念ながら修理ができず
全損、つまり新しく買い替える
必要があるとのことです。
機械を買い替えるとなると
会社としても少なくない
経済的負担が生じます。
そこで
A社長としても
そもそもこの社員のミスで
機械が壊れたのだから
この社員に機械の買い替え代金を
賠償させたいと考えています。
このようなケースでは
果たして法律上社員に賠償させる
ことはできるのでしょうか?
この点について明文で
定めた法律はありません。
しかし
この問題については
有名な最高裁判例があり
それが実務上の
「ルール化」しています。
この最高裁判例によると
こうしたケースで会社は社員に対して
その被った損害のすべてを
賠償請求できるわけではない
とされています。
つまり
賠償請求できるとしても
その範囲が制限される
というわけです。
それはなぜかと言うと
会社というものは
社員を雇うことによって
利益を得ています。
ですから
仮に社員のミスで会社に
損害が発生したとしても
その損害をすべて社員に
負担させるのは公平ではない
という考え方が背景にあります。
この考え方のことを
専門的に
報償責任(ほうしょうせきにん)
の原理と言います。
つまり
上記のA社長の会社の例でも
会社は社員に対して
機械の買い替え代金の全額を
賠償させることはできない
ということになります。
さて
それでは
全額の賠償請求はできないとしても
会社はどの程度の範囲で請求
することができるのでしょうか?
この点に関しては
上記の最高裁判例が
判断基準を示しています。
具体的には
使用者(会社)は,その事業の性格,規模,施設の状況,被用者(社員)の業務内容,労働条件,勤務態度,
加害行為の予防又はそ損失の分担についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見知から信義則上相当と認められる限度において,被用者(社員)に請求することができる
とされています。
ゴチャゴチャわかりにくいですが
上記のようないろいろな要素を考慮して
事例ごとにケースバイケースで
金額は決まってくる
ということです。
ただ
一般的に認められている数字としては
だいたい
会社が受けた損害の2割から3割程度
が限度とされることが多いようです。
そんなわけで
こうしたケースでは会社が
泣かなければならない割合が多い
という結論になります。
まぁ
こうした事態に備えて
実際には機械などは保険をかけて
いることが多いでしょうけどね。
それはともかく
2割ないし3割を社員に賠償請求できるとして
具体的にどうやって払ってもらうか。
通常は
社員に一括で払ってもらうことは
経済的にも困難なことが多いでしょう。
明日は
このようなケースで社員にどのように
払ってもらうかなどについて
お話ししたいと思います。
それでは、また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
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私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。