いろいろな方からご相談を受けていると
会社の取引で
契約書も作らず
金額の合意もなしに仕事に着手して
しまったというケースがあります。
その結果
後々仕事の報酬の支払いをめぐって
トラブルになることがあります。
金額の合意もしなかったときに
報酬を請求できるのでしょうか?
(今日の「棒人間」 合意がないから払わない??)
<毎日更新1357日目>
プロとして仕事をしている以上
仕事の対価
すなわち代金や報酬の
具体的な金額は重要です。
金額の合意もしないで
仕事を始めてしまうなんて
ことがあるのでしょうか?
しかし
実際にはこういうことは
結構あり得ることなのです。
先日
建設会社を営むA社長より
ご相談を受けました。
とある施主から建物の工事の依頼を受けたのですが、材料や仕様など細かい部分が定まっていなかったのですが、施主がとにかく急ぐ、ということで、着工を早くしてくれということたったのです。
なるほど、それで、どうなりました?
仕方がないので、細かい仕様などは後で決めることにして、とりあえず工事を始めたのです。
契約書は作りました?
いえ、お恥ずかしい話ですが、作ってません。それどころか、材料や仕様などが決まらないと工事代金の総額も決められず・・・。
なるほど、金額を決めずに工事を始めたわけですね。
そうなんですよ。ところが、案の定、後でトラブルになりましてね。
どうされたんですか?
工事が完成した後で、かかった経費などを計算して、相手方に代金を請求したんです。そうしたら、そんな高くなるなんて聞いていないと。
なるほど、ありがちなトラブルですね。
しかも、悪質な相手で、今回金額の合意をしていないことをいいことに、工事の報酬を払おうとしないんです。
なるほど。
で、どうなんですか?最初に金額の合意をしていないと、こちらは工事の報酬を請求できないんでしょうか?
いや、そんなことはありません。商法512条という法律があり、金額の明確な合意がない場合でも、「相当な報酬」を請求できる場合があります。
なるほど、少し安心しました。
それにしてもA社長、やはり契約書も作らず、金額の合意もしないままに着工してしまうのは、後々トラブルになる危険が大きいですので、やめた方がいいですよ。
そうですね、反省します。
このように
現実問題としては
さまざまな事情で
金額の合意をせずに
仕事に着手してしまう。
そして
後々になって「払う、払わない」の
トラブルになるケースは
少なくありません。
そもそも
建物の工事は
法的に言うと請負契約になります。
つまり
上記の例で言えば
施主とA社長との間で
建物の建築請負契約を
締結することになります。
報酬の支払いというのは
請負契約の本質的な要素ですので
金額を決めない約束は
法的にみると請負契約が成立していない
と考えられるかも知れません。
契約がない以上
施主にも報酬の支払い義務
が発生しないのではないか
とも考えられます。
しかし
この点に関して
上記のとおり商法512条
という法律があります。
この商法512条では
会社や事業者などが
その営業の範囲内において
他人のために行為をしたときは
「相当な報酬」を請求することが
できると規定されています。
これは
会社や事業者などが
営業の範囲内で他人のために
行為をするというのは
まさにビジネスとしてやって
いることが大前提になります。
そこで
契約が成立していないケースや
金額が明確に定められていなくても
仕事をしたことの対価として
「相当な報酬」が請求できる
とされているのです。
そして
この「相当な報酬」というのは
冒頭の例で言えば
建築工事の期間や
建物の規模(工事予算)等に応じて
取引の常識的に想定される
金額とされています。
ただし
そうは言っても
具体的な「相当な報酬」が
いくらになるのかは
そう明確ではありません。
今度は「相当な報酬」の金額を
めぐって第2ラウンドの争いになり
「裁判沙汰」に突入する危険もあります。
この点
私のミッションは
ということ。
トラブルや「裁判沙汰」を
予防するためには
やはり大きな取引の場合は事前に
きちんと契約書を作ることが
欠かせません。
金額を決めずに工事を
始めるということは
工事を行う会社にとっては
後でトラブルになって代金を
回収できなくなるリスクが高い
と言わざるを得ないでしょう。
この点で
上記の商法512条は
あくまでどうしても金額を決める
ことができなかった場合の
最後の救済規定と考えた方が
良いでしょうね。
自社で契約書の作成が難しい
という場合は
弁護士に相談や依頼をすることを
検討した方が良いでしょう。
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いずれにしても
費用と時間をかけて工事を
したにもかかわらず
代金を回収できなかったら
シャレになりません。
その辺はしっかり
リスクを考えた上で「自衛」する
必要があるでしょうね。
それでは
また。
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Profile
中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。