
販売ノルマに追われ
プレッシャーから「自爆営業」の
不正に手を染めてしまった社員。
この社員を懲戒解雇にすることは
法律上認められるのでしょうか?
<毎日更新1394日目>
なぜこんなに大量の目薬を買う必要があったのですか?
そ、それはその、疲れ目がひどくて・・・
これは「自爆営業」だったのではないですか?
・・・・・。
あるドラッグストアーチェーンで
勤続20年超の店長が
販売コンクールの対象商品を自ら購入する
「自爆営業」を繰り返して
懲戒解雇になりました。
この会社では
一定の期間内に特定の商品の売り上げを
各店舗で競う「販売コンクール」が
行われていたそうです。
成績が良ければ
会社から評価され
昇給やボーナスにも影響したそうですね。
ただ
この店長はなかなか結果を出すことができず
「自爆営業」に手を染めたようです。
具体的には
自分で店の商品を大量に自腹で購入し
後で返品して返金を受けるという手法。
これが会社に発覚し
会社はこの店長を
懲戒解雇処分にしました。
そこで
この店長は
解雇は不当であるとして
解雇無効の裁判を起こしました。
店長は
あくまで「目標達成のための購入ではない」
と争っていましたが
裁判所は
目標達成のために商品を購入し、達成を理由に返品した
競い合いながら店舗の販売レベルを向上させるコンクールの目的に反する
と判断し
懲戒解雇処分は有効
であると判断しました。
まず
大前提として
会社が社員を解雇するためには
就業規則でその根拠となる
規定を定める必要があります。
さらに、その上で
実際に社員を解雇するためには
という2つの要件を
満たす必要があり
これを満たさない解雇は
「解雇権の濫用」として
解雇が法的に無効とされます。
社員の問題行動など
理由とする「解雇」の場合も
この2つの要件を満たしているのか
が問われます。
ところが
実際に裁判などで
この2つの要件を満たした解雇
であると判断されるためには
会社側のハードルが極めて
高いのが現実です。
この点
社員の問題行動を理由とする「解雇」が
法的に有効とされるためには
その不良の程度が著しい場合に限られる
とされています(上記①の要件)。
さらに
社員の問題行動の程度が
仮に「著しい」としても
それだけでいきなり「解雇」
とすると
やはり無効とされます。
すなわち
「解雇」というのは
労働者である社員の生活の糧を
奪う行為でもあるので
会社としてもなるべく「解雇」を
避ける努力をすることが
求められます(上記②の要件)。
そして
冒頭の事案は
こうした要件を満たしており
懲戒解雇は有効だと
裁判所が判断しています。
ただ
事案をよく見てみると
私は少し微妙な事案なのではないか
と思います。
というのは
社員の不正行為があったからと言って
即解雇が有効となるわけではありません。
冒頭のドラッグストアーのケースでは
店長には厳しいノルマが課せられていて
目標達成できていない店の方が
多いというのが実態だったようです。
この会社では
過去にもこうしたコンクール不正で
懲戒解雇された社員がいたようで
この店長も
厳しい目標達成のプレッシャーにさらされていた
という背景事情があります。
こうしたケースでは
もしかしたら
「②解雇の社会的相当性」の要件を
満たさないと判断される可能性も
十分にあるのではないか
と考えられます。
もちろん
社員の不正は許されませんが
そうした不正に社員を走らせる
ような社内環境がなかったかどうか。
いずれにしても
このブログでも時々書いているように
安易な解雇は社員との「裁判沙汰」
を招く可能性が高く
リスクがありますね。
この辺の判断は
慎重に考えたいところです。
さて
今日のダジャレを1つ。
自爆営業なんかしてると、人生が自爆してしまいます!
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。