
会社が運転免許取得の費用を
補助して社員が免許を取得。
ところが
その後すぐに社員に会社を
辞められてしまいます。
そこで
辞めた場合にその免許取得にかかる費用を
全額返還させることはできるのでしょうか?
(今日の「棒人間」 返せと迫る人)
<毎日更新1424日目>
社長、すみませんが、今月いっぱいで会社辞めます。
何ぃー、会社辞めるだ???
辞めます!
お前、会社が金出して免許取らせてやっただろうが???
辞めます!
そ、それなら、免許のために会社が出してやった金を返せ!!
建設業を営むA社長の会社では
社員が運転免許を取得する際に
会社がその費用を補助する
という制度があるそうです。
なにしろ
A社長の会社では
通常の業務に運転免許は必須。
なので
免許を持っている人を優先的に
社員として採用してきました。
ところが
ここ数年の人手不足に
悩まされています。
こうなったら
免許がなくてもとりあえず入社に
応募してくれるだけでもありがたい。
そこで
免許がない人には
会社が入社後に運転免許取得の費用を
補助する制度と設けることにしたのです。
ところが
こういう制度を設けると
往々にして会社の補助で免許を取得して
程なく会社を辞めるという
社員が出てきます。
会社としても
ずっと働き続けてほしいからこそ
お金を出して社員の免許の取得を
応援しているわけです。
それなのに
免許を取得してすぐに辞められては
会社としても損失は大きいわけです。
そこで
A社長としては
会社の就業規則に
もし社員が定年退職前に
会社を辞めた場合
免許取得のために会社が援助した
全額を返還するという規定を
設けたいと考えています。
このような規定を設けることは
法律上問題はないのでしょうか?
もし社員が定年退職前に辞めたら
運転免許取得のために会社が
補助したお金を全額返還させる合意。
実は
このような取り決めをすることは
労働基準法によって禁止されています。
具体的には
労働基準法16条では
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
と規定されています。
「使用者」というのは会社のことだと
考えていただいて構いません。
会社を辞めたら免許取得の費用を返せ
というのは
いわば
「労働契約の不履行について違約金」
ないし
「損害賠償額を予定する契約」
に当たると考えられるのです。
そこで
1つの方法としては
免許取得の際に会社が援助するお金は
会社の社員に対する貸付金
であるとしておく。
ただし
たとえばその後何年以上その
社員が勤続して働いた場合は
会社は社員に対して
その貸付金の返還を免除する
というやり方があります。
これであれば
あくまで貸付金なので
上記の労働基準法16条が禁止する
「違約金」とか「損害賠償額」
ではないということになります。
それでは
A社長が言うように
その社員が定年退職前に
会社を辞めた場合に
そのお金を返してもらう
という点はどうでしょうか?
実は
「定年退職まで」というのはあまりに長すぎ
社員の退職の自由を侵害する
ものと考えられます。
憲法では
奴隷的拘束の禁止や
職業選択の自由というものを
ものを保障しています。
そこから
社員の退職の自由
というものも導かれます。
もし
定年退職前に会社を辞めたら
資格取得のお金を返さなければ
ならないとすれば
社員は会社を辞めたくても
辞められない状態となり
退職の自由が侵害される
ということになります。
そこで
上記の返還を免除するための期間としては
2年から3年程度が妥当であると考えます。
具体的には
会社としては
資格取得の段階で
社員との間で貸金契約を結びます。
その際
例えば
という内容の誓約書を社員に書いて
もらうというのも1つの方法です。
資格取得の費用を会社が出して
その後社員に辞められるという
トラブルは最近よく見聞きします。
社員とのトラブルを予防するためにも
その辺の対策はしっかりして
おきたいところですね。
それでは
今日のダジャレを1つ。
会社が運転免許の費用を出してアクセル踏んだのに、社員はブレーキ踏んで退社しちゃった??
それでは
また。
◾️裁判しないで解決するノーリスクプロモーター・弁護士 吉田悌一郎のプロフィール
◾️あなたの会社のトラブルを予防します〜あんしん法務ガード(顧問契約)
◼️「裁判沙汰」を予防する、契約書作成・リーガルチェックサービス
◾️【無料】セルフマガジン『裁判しないで解決する方法』の無料送付
◾️YouTube(渋谷の弁護士・吉田悌一郎の中小企業ビジネス法務チャンネル)
活動ダイジェスト
ご提供中のメニュー
住所 | 150-0031 東京都渋谷区桜丘町4番23号渋谷桜丘ビル8階 マップを見る |
---|---|
受付時間 | 【平日】9:30〜18:00 【土曜日】9:30〜12:00 |
Profile
中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。