
会社の「役員」と「従業員」は
法的にどう違うのか?
それぞれの立場や役割の違いによって
身分その他の条件に違いがあります。
今回はこの辺のことについて
まとめてみました。
(今日の「棒人間」 どちらか迷う??)
<毎日更新1574日目>
株式会社には
さまざまな登場人物がいますが
その中で、会社の「役員」と
「従業員」はどう違うのか。
これは結構関心のあるテーマのようで
ときどきご質問もいただきます。
「役員」というのは
会社の取締役や監査役
会計参与といった人々のことを指します。
「役員」は
会社の所有者である株主から
会社の経営を委託された立場の人たちです。
なお
一般的に「代表取締役」のことを
「社長」と呼んだりしますが
「社長」という言葉は厳密には
法律用語ではありません。
「代表取締役」は
会社を代表すべき取締役を意味します。
他方で
従業員というのは
会社との間で「雇用契約」を結び
会社に雇われて労働力を
提供する立場の人たちです。
「役員」と「従業員」は
こうした法的な立場の違いから
具体的にいろいろな違いがあります。
まず、「役員」は
上記のように株主から
経営を委託されていて
会社との間は「委任契約」
を結んでいます。
「委任契約」というのは
委任を受けた方にある程度の
自由裁量が認められる種類の契約です。
「役員」は
いわば会社の経営者ですから
会社からあまり細かい
指揮監督を受けることなく
ある程度自らの裁量で日々の
業務を行う必要があるわけです。
そんなある程度「自由」な
立場にある「役員」ですが
「自由」には大抵重い責任が伴います。
会社の役員は
会社に対して善管注意義務といって
経営者としての高度な注意義務を
負って仕事をしています。
もし役員がこの善管注意義務に違反して
会社に損害を発生させた場合には
多額の賠償責任を負う可能性もあります。
また
「自由」な立場にある対価として
役員の法的な身分はそれほど
安定しているとは言えません。
なぜかと言えば
「役員」は会社の株主総会で
いつでも解任することができる
とされているからです。
また
役員の報酬も株主総会で決められますが
会社の業績が悪くなれば
報酬額を一方的に減額される
こともあり得ます。
他方で
上記のとおり
「従業員」は
会社との間で「雇用契約」を
結んでいます。
雇用契約に基づいて
会社に自らの労働力を提供
するのが「従業員」ですから
「役員」のような広い業務上の
裁量権はありません。
「従業員」は
会社からある程度厳しく
勤怠管理を受け
会社の業務命令に従って
働く義務があります。
その代わり
「役員」とは違い
身分や給料は安定しています。
すなわち
会社が「従業員」を解雇するためには
法的にかなり厳しいハードルがあり
実際上解雇が認められるのは
容易ではありません。
また
「従業員」に支払われている給料の額は
労働条件の一部なので
基本的に会社が一方的に
減額したりすることは許されません。
会社の業績が悪いからといって
「従業員」の給料を減らすというのは
簡単にはできないのです。
また
「従業員」が業務上何らかのミスをして
会社に損害を与えた場合
「従業員」は会社に対して
損害賠償責任が発生します。
しかし
実際の賠償額は
合理的な範囲内に
制限されるとされています。
ですから
基本的に「役員」のように会社に対して
多額の賠償責任を負わされる
可能性は低いと言えます。
以上の
会社の「役員」と「従業員」の
法的な違いをまとめると
下記のようになります。
<法的な会社の役員と従業員の違いのまとめ>
役員 | 従業員 | |
会社との契約形態 | 委任契約 | 雇用契約 |
雇用保険、労災保険 | 適用なし | 適用あり |
残業代請求の可否 | 請求不可 | 請求可 |
解雇(解任)の規制 | 緩い | 厳しい |
会社に対する賠償責任 | 多額になり得る | 合理的な範囲に制限 |
会社の業務についての裁量 | 広い | 狭い |
報酬に対する規制 | 緩い(役員報酬) | 厳しい(給料) |
というわけで
今回は
結構関心は高いけれども意外に
わかりにくい会社の「役員」と
「従業員」の違いについてまとめてみました。
それぞれの立場や役割の違いによって
身分やその他の条件に
違いが出るということですね。
この点は一度押さえておいて
いただければと思います。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
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また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。