
転職サイトに「パワハラ」の口コミ投稿。
それに対して
会社側は「名誉毀損」だと提訴。
「パワハラ」VS「名誉毀損」の
たたかいの行方は??
(今日の「棒人間」 「パワハラ」VS「名誉毀損」??)
<毎日更新1588日目>
東京都内のあるIT企業の社長は
転職サイトに書かれた自社に関する
口コミ投稿を見つけました。
その口コミは
この会社を過去に辞めた社員が書いたもので
在職中に自身が社長からパワハラを受けた
というものでした。
この社員は
約2年前まで在籍していた社員で
なんと入社から1ヶ月ほどで会社に
借金を申し込んだそうです。
その後も借金の申し込みがあったことから
社長はこの社員に対し
簡単な家計収支をメールで
送るように促したそうです。
さらに
この社員が
借金の理由として「医療費が高額」などと
説明したということです。
具体的には
この社員は首が短いことによる
睡眠時無呼吸症候群と医師から診断が
出る見通しだと説明したとのこと。
そこで
社長は
と発言し
痩せれば通院などの費用が
減ると言ったそうです。
元社員は
こうした社長の発言を
「パワハラ」であると主張し
転職サイトに上記のような
口コミを書き込みました。
これに対し
会社側は
この社員の
として
投稿の削除と500万円の損害賠償を
請求する裁判を起こしました。
会社側の主張は
この元社員の投稿が名誉毀損に当たるとし
「ブラック企業」であるかのような記載が
真実と受け止められれば
会社の採用や取引に悪影響が
出るとしました。
この件は
会社側は「名誉毀損」だと主張し
元社員側は「パワハラ」だと
主張して争われました。
そこで
それぞれの法律上の
要件を見てみましょう。
まず
職場における「パワハラ」は
をいうとされています。
上記の事例では
社長が元社員に対して行った発言が
「②業務上必要かつ相当な範囲」を
超えていたかどうかが問題となります。
他方で
名誉毀損とは
簡単に言えば
公の場に事実を示されることで
他人の社会的評価を低下
させる行為のことを言います。
「名誉毀損」は
刑法上の犯罪として罰則も
定められていますし
民事上も不法行為となって
損害賠償の対象になります。
上記の事例で言えば
元社員が書いた口コミによって
会社の「社会的評価」が低下したと
いえるかどうかが争点となります。
さてさて
気になるこの裁判の判決ですが
結論的には社長による
「パワハラ」を認めませんでした。
具体的には
家計の収支をメールで送る
ように指示した行為は
と判断しました。
さらに
体型をめぐる発言も
としました。
したがって
特に上記の②の要件である
「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」
ものではないということで
「パワハラ」には当たらないと
判断したものです。
他方で
元社員が行った転職サイトへの
書き込みは
として
名誉毀損を認めました。
ただ
と
元社員の主張にも一定の理解を示し
賠償額は36万円まで減額しました。
今の世の中
何かがあるとすぐに「パワハラ」を
主張される傾向があります。
それに経営者や管理職が萎縮してしまい
社員や部下との円滑なコミュニケーションや
必要な指導ができなくなっていることが
問題となっています。
もちろん
「パワハラ」は許される
べきではありませんが
他方で
当たり前ですが
何でもかんでも「パワハラ」に
なるわけではありません。
上記のとおり
法的に「パワハラ」になるかどうかは
きちんと要件が定められています。
何が「パワハラ」になり得る行為なのか
ここは冷静に判断する必要がありますね。
それでは
また。
*なお、上記事例は、日本経済新聞「揺れた天秤」シリーズから引用しました。
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中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
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私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。