せっかく採用できた社員が
すぐ辞めてしまう。
そこで
社員との間で「3年間は会社を辞めない」
と合意することはできないか
と相談されることがあります。

(今日の「棒人間」 縛りをかけられる人??)
<毎日更新1672日目>
どの業界も
慢性的な人手不足が続いていますね。
会社の倒産の原因も
経済的な理由のみならず
「人手不足」を原因とする倒産件数が
上がっているようです。
また
せっかく社員を採用できても
何かあるとすぐ辞めてしまう。
これも
多くの経営者が嘆いているのを
見聞きします。
人材の確保は
どの会社にとっても頭の痛い問題ですね。
先日
ある経営者の方から

いっそのこと、契約書で「3年間は会社を辞めません」とか、そういった合意をすることはできないですかね?
というご相談を受けました。
たとえば
社員を新規で採用する際に
雇用契約書などで
社員との間で
という合意をする。
こうしたことは
法的に可能なのでしょうか?
この問題は
一応無期雇用(正社員)の場合と
有期雇用の社員の場合とで
分けて考える必要があります。
まず
無期雇用(正社員)の場合は
基本的に社員が会社を退職する自由
というものが保障されています。
すなわち
民法627条1項で
無期雇用の社員は
いつでも解約(退職)の申し出を
することができるとされています。
そして
その場合は
この申し出から2週間を
経過することによって
雇用契約は終了するとされています。
したがって
無期雇用(正社員)の場合に
たとえば「3年間は会社を辞めない」
という合意は
この民法の規定に反する
ことになります。
すなわち
こうした合意は
社員の退職の自由を奪うものであり
無効であるとされています。
それでは
有期雇用契約の場合はどうでしょうか?
たとえば
3年間の有期雇用契約で社員を
新たに採用するという場面を
考えてみましょう。
この場合は
無期雇用の場合と異なり
社員は3年間という決まった期間の
途中で解約(退職)をすることは
原則としてできないとされています。
ただし
「やむを得ない事由」がある場合に限り
例外的に期間の途中でも解約(退職)は
可能とされています。
この「やむを得ない事由」とは
病気や家族の介護など
社員にとって雇用契約を継続することが
困難な客観的な事情を指します。
逆に言えば
有期雇用契約の場合
こういった例外的な場合でない限り
期間の途中で辞めることはできない
というのが原則となります。
しかし
ここにも労働基準法による
特例が定められています。
すなわち
有期雇用契約で
その期間が1年を超える場合は
雇用契約の期間の初日から
1年が経過した日以降は
社員は会社に申し出ることにより
いつでも退職することができる
とされています。
ですから
結論的には
いずれの場合も契約で社員を
3年間辞めさせないという
縛りはかけることはできない
ということになります。
やはり
社員の退職の自由というものは
法律上もそれなりに重視されている
ということです。
人手不足の今の世の中
確かに短期間で社員に
辞められてしまうのは非常に痛い。
しかし
考えてみれば
辞めたいと思っている社員を
契約で縛るというのも
ナンセンスではあります。
ここは
法律や契約などの強制以外の方法で
社員の離職を防ぐ対策を考える
必要がありますね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。