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渋谷の弁護士吉田悌一郎

オフィス退去の際に原状回復はどこまで必要? 経年劣化はどちらが負担?

不動産賃貸

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オフィスの退去時に

思わぬ高額な原状回復費を請求される。


実は

事業用物件では“経年劣化まで

「借主負担」になる特約がある

ことをご存じでしょうか。


今回は

オフィス退去時の原状回復義務の

ポイントを解説します。

 

 

 

(今日の「棒人間」原状回復義務、どこまで??)

 

<毎日更新1679日目>

オフィスの退去の原状回復義務

A社長の会社では

今のオフィスが手狭になったために

オフィスを移転を考えています。

 

 

そこで

オフィスの賃貸人に退去の

通知を出したところ

 

 

退去に伴う原状回復をめぐって

賃貸人との間でトラブルが

発生しました。

 

 

賃貸人は

退去にあたって、備え付けの設備や備品は全部撤去して、天井と壁の塗装、床のカーペットの張り替えなど全部やって下さい。

と主張。

 

 

この時点で

A社長は

 

 

慌ててオフィスの

賃貸借契約書を目にします。

 

 

そうすると

借主が退去する際の原状回復義務として

天井、壁の塗装、床のカーペットの張り替えなどは、経年劣化による損耗も含めて賃借人の負担とする

と規定されていました。

 

 

ただ

このA社長

少し法律を勉強されています。

確か、民法が改正されて、経年劣化による損耗などは、原状回復義務の範囲から外れたのではないですか?

 

確かに

民法621条で賃借人の

原状回復義務が規定されていますが

 

 

そこでは

通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く

とされています。

 

 

これは

主に賃貸住宅において

借主の原状回復の範囲が予想外に広がり

 

 

多額になり過ぎることを

防ぐという趣旨です。

 

 

つまり

通常の経年劣化は誰が使用しても

起こり得るのであり

 

 

その経年劣化の損耗まで

借主側に負わせるのはおかしい

という価値判断があるわけです。

 

 

通常損耗補修特約とは?

 

ところが

この原状回復義務の範囲に

関する民法の原則は

 

 

契約当事者の合意で

これとは異なる契約の定めをする

ことができるとされています。

 

 

すなわち

貸主と借主との合意で

 

 

こうした通常損耗も借主の負担

とすることを合意するというものです。

 

 

オフィスビルなどの事業用物件の

賃貸借契約では

民法の原則とは異なり

 

 

賃借人に通常損耗や経年変化

についても原状回復義務を負わせる

 

 

特約が定められることが

非常に多くなっています。

 

 

こうした特約のことを

 

通常損耗補修特約(つうじょうそんもうほしゅうとくやく)

と言ったりします。

 

 

 

ただし

裁判例で

 

 

この通常損耗補修特約が

有効になるためには

次の要件が必要だとされています。

 

 

すなわち

 

少なくとも、借主が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、

仮に契約書で明らかでない場合には、貸主が口頭で説明、借主がそれを明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、通常損耗補修特約が明確に合意されていることが必要

とされています。

 

 

これは、

例えば

契約書で単に

 

「原状回復義務を負う」
とか、
「現状に復旧する」

などという記載がある

だけではダメだ

ということを意味します。

 

 

借主のなすべき具体的な義務

の内容が書かれていない場合は

 

 

通常損耗補修特約の効力が

認められない

ということになるわけです。

 

 

 

 

 

 

 

原状回復義務は、契約時にきちんと確認すること

さて

冒頭のA社長の事例ですが

賃貸借契約書には

 

天井、壁の塗装、床のカーペットの張り替えなどは、経年劣化による損耗も含めて賃借人の負担とする

と具体的な記載がなされています。

 

 

 

ですから

この通常損耗補修特約は有効であり

A社長の会社としては

 

 

これらについても費用負担の上

原状回復に応じなければならない

ということになります。

 

 

このように

事業用物件の場合は

基本的に借主側に広い範囲で

 

 

原状回復義務を負わせる

通常損耗補修特約が定め

られていることが一般的です。

 

 

さらに

オフィスなど事業用物件の場合は

 

 

いわゆる「スケルトン渡し」が

合意されているケースもあります。

 

 

これは

スケルトン(建物の構造躯体のみ)状態に戻して明け渡す

と特約されるものです。

 

 

この場合は

内装や設備(天井、床、壁、照明

空調の一部など)をすべて

 

 

撤去する義務が生じ

費用が非常に高額になる

可能性があります。
 

 

事業用物件について

退去時の原状回復義務について

貸主側とトラブルに

なることがあります。

 

 

こうしたトラブルを予防するためには

何よりもまず

契約する際に賃貸借契約書の内容を

しっかりとチェックすることです。

 

 

入居する際にはつい

見落としがちになりますが

将来退去するときに

どのような原状回復義務を

負っているのか?

 

 

その際の費用の概算は

どの程度になりそうか?

 

 

ある程度予測した上で

物件を決める必要がありますね。

 

 

それでは

また。

 

 

 

 

 

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名前吉田 悌一郎
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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