訪問介護事業では
ヘルパーが実際に利用者宅でサービスを
提供している時間だけを労働時間として
扱っているケースが少なくありません。
しかし
その考え方が思わぬ賃金トラブルに
つながることがあります。

(今日の「棒人間」 その移動時間は労働時間??)
<毎日更新1739日目>
訪問介護事業所を運営しているX株式会社。
Aさんは
X社で訪問介護職員(ヘルパー)
として働いています。
このX社の社長と
Aさんとのやり取りです。

社長、給料のことで話があります。

え、給料?何かな??

私の仕事は訪問介護ですが、私の給料計算において、実際に利用者のお宅での訪問介護の業務を行なっている時間だけが労働時間とされていますよね?

そうだけど、それが何か?

本当は、それだけではなく、事業所から利用者宅へ行く移動時間とか、利用者宅から別の利用者宅へ移動する時間も、労働時間に当たるんじゃないですか?

ええ?いや〜、そそれは・・・。

それと、もう1つあります。

え、まだあるの?

利用者からの利用の申し込みがあって、私がシフトに入ったときに、利用者からのキャンセルが出ることがありますよね。

そ、そうだね。

そういう場合って、私は急に休みになって、その分の手当も出ませんよね?

確かに、そうだね・・・。

そういうのって、違法なんじゃないんですか?

いや〜、どうだろ??

もう!社長なんだから、はっきりして下さい。労基署に行きますよ!
訪問介護事業というのは
業者側の職員(ヘルパー)が
個々の利用者宅を訪問してサービスを
提供するという特徴をもっています。
この訪問介護事業の特徴から
やはりこの業界特有の労務問題
というものが発生します。
よくありがちなのは
訪問介護の業務に直接従事する時間
つまり
ヘルパーが利用者宅でサービスを
提供する時間のみを労働時間として
扱うというケースがあります。
要するに
その時間分の給料しか払わず
それ以外の時間は「労働時間」とは
扱わないというものです。
しかし
実際問題として
ヘルパーさんの仕事は
何も上記の時間に限られる
わけではありません。
たとえば
ヘルパーが事業所から
利用者宅へ移動する時間
あるいは、利用者宅からまた別の
利用者宅へ移動する時間なども
労働時間にあたるのではないか
ということが問題となります。
この点
法律上「労働時間」に該当するかどうかは
「労働者の行為が、会社の指揮命令下に置かれたものと、客観的に評価できる時間」
か否かという基準で判断されます。
この点
においては、
とされています。
したがって
訪問介護事業を営む事業者としては
ヘルパーさんの移動時間なども含めて
正確な労働時間を把握する
必要があります。
もしそれを怠っていると
後々ヘルパーさんより未払い賃金の
請求を受ける危険がありますので
注意が必要です。
次に
もう1つの問題です。
すなわち
本来予定されていた利用者宅訪問で
ヘルパーさんにシフトに入って
もらっていたにも関わらず
利用者側から急なキャンセルが
出た場合の扱いです。
この場合
事業者の方でヘルパーさんを
休業させた場合
休業手当を支払っていない
ケースも見られます。
しかしながら
この点については
労働基準法において
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
と規定されています。
問題は
こうした突然の利用者からの
キャンセルによる休業の場合が
「使用者の責に帰すべき事由による休業」
と言えるかということです。
この点
このようなケースでは
事業者としては
他の利用者宅での勤務の可能性
についてしかるべき検討を
十分に行なったか。
すなわち
このヘルパーに代わりの業務を
行わせる可能性等を含めて判断し
使用者として最善の努力を尽くす
ことが必要であるとされています。
逆に
このような努力を尽くさずに
漫然と休業させた場合には
「使用者の責に帰すべき事由による休業」
に該当することになります。
そこで
そうした場合には
しかるべき休業手当をヘルパーさんに
支払わなければならない
ということになります。
介護業界は今
人手不足もあり
労務問題も比較的多いと
されています。
介護事業者がトラブルや
「裁判沙汰」を避けるためには
介護業界特有の労務問題というものを
きちんと理解しておく必要が
あるでしょうね。
後から慌てて対応するより
先に少し整えておく方がずっと楽です。
労務管理も
立派な経営の仕事ですね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。