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渋谷の弁護士吉田悌一郎

【パワハラで懲戒免職】それでも、退職金全額の不支給はダメ??

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社員を懲戒解雇した場合、

当然退職金も出ない、

といった誤解が世間には

あります。

 

 

社員の懲戒解雇が有効かどうかと、

仮に有効な懲戒解雇だとして、

退職金を不支給にして

良いかどうかは、

また別問題ですので、

注意が必要です。

 

 

 

 

(今日の「棒人間」 不祥事で退職金不支給は困る??)

 

<毎日更新868日目>

パワハラ警部、退職金全額の不支給にNO

同僚への公務執行妨害や

パワハラ行為などを理由に、

神奈川県警を懲戒免職

となった元男性警部について、

退職金を全額不支給とする

処分が行われました。

 

 

これに対し、

この元男性警部補が、

これらの神奈川県警の処分の

取消を求めた訴訟の

判決がありました。

 

 

横浜地裁の判決では、

懲戒免職処分は有効としましたが、

退職金の支給を制限

した処分について、

元警部の非違行為について、貢献を抹消するに足るとまで評価することはできない

として、

この処分を

取り消しました。

 

 

退職手当不支給を取り消し 懲戒免職元警部、横浜地裁

 

 

判決では、

元警部の行為は警察への信頼を大きく傷つけ懲戒免職の理由になる

とした一方で、

 

 

24年間勤続し、公務への貢献が相応に大きいことを踏まえ、退職手当を一部にとどまらず全て支給しないのは「裁量権の逸脱または乱用というべきだ」

と判断しました。

 

 

民間企業でも、

不祥事などを起こして

懲戒解雇になった社員には、

当然退職金も出ない、

そんなイメージがあります。

 

 

しかし、

法的には、

懲戒解雇が有効だとしても、

必ずしも退職金全額を

不支給にできる、

というものではありません。

 

 

 

懲戒解雇と、退職金の不支給は別問題

一般に、

社員になんらかの不祥事

があった場合に、

退職金を不支給にしたり

減額したりする処分がなされる

ことがあります。

 

 

この点、

まずそのような処分を

行う大前提として、

就業規則にそうした定めを

おいておかなければ

なりません。

 

 

具体的には、

たとえば

 懲戒解雇になった者には、退職金を支給しない

といった定めをおく

必要があります。

 

 

そして、

次の段階、

就業規則にこうした定めがあって、

実際に不祥事を起こした社員に

懲戒解雇処分がなされたとします。

 

 

その上で、

さらに退職金の不支給ないし減額が

有効となるかどうかは、

また別問題ということに

なるわけです。

 

 

というのは、

退職金というものには、

次の2つの性質があると

言われています。

 

 

1つ目は、

 

功労褒賞的性質

 

です。

 

 

これは、

社員の長年の功労に対して、

退職金というお金で報いる

といった性質です。

 

 

そして、もう1つは、

 

賃金の後払い的性質

といわれるものです。

 

 

これは、

賃金の一部を後払いとすることで、

社員の定着を促す役割があると

言われています。

 

 

 

 

 

 

 

 

退職金全額不支給という処分は危険

たしかに、

不祥事を起こして懲戒解雇

になった社員については、

1つ目の功労褒賞としての側面

で考えれば、

退職金の不支給や減額は

認められやすいでしょう。

 

 

しかし、

もう1つの、

賃金の後払い的性質を考えれば、

いくら懲戒解雇になった

社員だからといって、

そう簡単に不支給や

減額はできない、

という結論になります。

 

 

なので、

懲戒解雇になった社員に対して、

退職金を不支給ないし減額が有効

となるためには、

社員のそれまでの勤続の功労を抹消ないしは減殺してしまう程度の、著しく信義に反する行為があった場合に限られる

とされています。

 

 

ですから、

結局はケースバイケースで、

社員の起こした不祥事の内容などにも

よるということになります。

 

 

退職金の一部の不支給は

許されても、

全額の不支給は許されない、

とされる場合もあります。

 

 

上記の横浜地裁の判決でも、

24年間勤続し、公務への貢献が相応に大きいこと

を考慮しています。

 

 

そして、

そうした貢献を抹消して

しまうほどの著しく信義に

反する行為があったとは

言えないということで、

全額の不支給処分を

取り消しています。

 

 

 

このように、

実際問題として

退職金の全額の不支給が

許されるのは、

相当限定的な場合

ということになろうかと

思います。

 

 

そんなこともありますので、

中小零細企業の実務としては、

やはり安易に全額の不支給として

しまうのは危険です。

 

 

判断に迷った場合は、

必ず弁護士などの専門家に

相談するようにして

ください。

 

 

それでは、また。

 

 

 

 

 

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連休最終日である昨日は、ほぼ1日自宅で大人しく過ごしていました。
夜は家族で近所の町中華へ。

 

 

 

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名前吉田 悌一郎
住まい東京都

Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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