転職した元社員が
前の会社についてあれこれ語る。
こうした発言が
会社の評判をめぐるトラブルに
発展することがあります。
今回は
元社員の発言と「名誉毀損」の
境界線について見てみましょう。

(今日の「棒人間」 その悪口は「名誉毀損」??)
<毎日更新1774日目>
ある50代の男性が
約30年勤めた大手製薬会社から
同業他社に転職。
この男性は
趣味で草野球のチームに所属しており
このチームには
前職の元部下らも所属していました。
男性は
転職した後もこのチームで
草野球をやっていました。
そうした中で
この男性は
チームメイトでもある前職の
元部下らに対して
などと
転職先の待遇面や職場環境の
良さを口にしました。
それだけではなく
前職の会社について
などとも述べたようです。
その後
この男性の元に
前職の会社より
「抗議文書兼お願い書」と
題する書面が届きました。
その内容は
この男性が野球チームに所属する
前職の社員に対して
前職の会社を誹謗中傷する発言を
繰り返した行為が名誉毀損や
業務妨害にあたるとして
発言の「即時停止」を
求めるものでした。
そしてその後
なんと前職の会社がこの男性に対して
約550万円の損害賠償の支払いを
求める訴訟を起こしたのです。
裁判の中で
この会社は
男性が草野球の際に
元部下などに対して
周囲のメンバーに聞こえる声量で
会社の社会的評価を低下させる
発言をしたとして
「名誉毀損」を主張しました。
名誉毀損とは
簡単に言えば
公の場に事実を示されることで
他人の社会的評価を低下
させる行為のことを言います。
「名誉毀損」は
刑法上の犯罪として罰則も
定められていますし
民事上も不法行為となって、
損害賠償の対象になります。
一番典型的なのは
ネットなどで
会社名を表示した上で
「あの会社は暴力団と取引がある」
などという書き込みをした場合。
その書き込みによって
その会社の社会的評価を低下
させることになりますので
それは「名誉毀損」に
当たり得るわけです。
ただし
ここが難しいのですが
それが「事実」を示すことではなく
「意見」や「評価」だった
場合です。
たとえば
感想として
あの会社の待遇が自分にとって
不満だったなどということを
述べる場合です。
というのは
名誉毀損が対象としているのは、
あくまで「事実」の書き込みです。
ご承知のとおり
憲法では表現や言論の自由が
保障されています。
そこで
こういった「意見」や「評価」は
いわゆる誹謗中傷に当たるような
例外的な場合を除けば
書き込みは言論の自由の
範疇(はんちゅう)ということに
なるのです。
ということで
「名誉毀損」が成立するためには
あくまで「事実」を示すということが
要件として求められています。
実際に
冒頭の事例でも
裁判所の判決は
男性の発言について
一対一の雑談で発した内容にすぎない
と指摘した上で
男性が発言した内容について
転職先の仕事に対する意見や感想、転職を通じて得られた考え方を述べている
と判断し
前職の会社の社会的評価を低下させる
「事実」が示されているとは認められず
「名誉毀損」は成立しないと判断しました。
そして
結果的に会社側は敗訴
してしまいました。
さてさて
この冒頭の事例ですが
なぜ「裁判沙汰」にまで発展
するようなことになったのか?
実は
この男性は
やはり前職での自身の待遇
などに不満があったようです。
この男性は
前職の会社で
上司から身に覚えのないことで
叱責される機会が増え
次第に仕事を与えられなくなり
「ただデスクに座っているだけだった」
と述べているそうです。
そうした不満が
ついつい草野球チーム仲間
に対する愚痴となり
それが元で「裁判沙汰」に
発展してしまったようです。
同業他社に転職する社員との
コミュニケーションの難しさを
教えられる事例と言えるでしょうね。
「裁判沙汰」になるかどうかは
実はこうした小さな「火種」が
きっかけになることもよくあります。
気をつけたいものですね。
それでは
また。
*なお、冒頭の事例は、日本経済新聞電子版「揺れた天秤」シリーズより引用しました。
「こっちは働きやすいぞ」同業に転職した部長のささやき、古巣が提訴
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。