会社の借金が
苦しくなったので、
別会社を作ってそちらで
営業を続けたい。
もし、
借金を踏み倒す目的で
こういうことをやると、
思わぬ不利益を受ける
ことがありますので、
注意が必要です。
(今日の「棒人間」 新会社を作って借金を踏み倒す、はダメ)
<毎日更新日目>
先日、
建設業を営む社長さんより、
会社の負債(借金)問題に
関するご相談を受けました。
コロナ融資で借りた
お金の返済なども
始まっていて、
会社の財務状況は
かなり苦しい、
そんな会社も今は
多いかも知れません。
うちの会社も、金融機関からの借入が多く、毎月の支払いに追われてとても大変なんです。
なるほど、それは大変でしょう。負債はどのくらいあるのですか?
金融機関からコロナ融資で借りたものなど合わせて、2億円ほどあります。
それは返済も大変でしょうね。
そうなんです。会社の仕事はそれなりにあって回っているのですが、借金の返済が重くて、そのおかげで毎月の資金繰りが大変なんです。
そうなんですね。
そこで、今ちょっと1つ考えていることがありまして、ご相談したいのです。
それは、どんなご相談でしょうか?
いっそのこと、今の会社はあきらめて、別の会社を新たに設立して、そちらの新しい会社に今の会社の業務を移して営業したいと思いまして。
それはちょっとやめたほうがよいでしょうね。
なぜですか?
古い会社も、新しい会社も、法人格は別ものなので、古い会社の借金は、新しい会社には引き継がれない、と聞いたのですが。。。
確かに、原則は、法人格が別であれば、旧会社の借金は新会社には引き継がれません。
それではなぜ、吉田さんは、私のプランをやめた方がよいとおっしゃるんですか?
旧会社の借金を免れる目的で、新会社を作るなど、法人格を道具として濫用したと判断される場合には、例外的に新会社にも旧会社の債務が引き継がれる、という趣旨の裁判例があるのですよ。
そ、そうなんですね〜。。。
実は、借金を免れるために新しい会社を作りたい、というご相談は時々あるのですが、そう都合よくは行かないものですね。
例えば、
A株式会社という法人と、
B株式会社という法人は、
法律上別人格です。
ですから、
仮に両会社の社長が
同じCという人物で
あったとしても、
A社の負債が自動的に
B社に引き継がれる、
ということは原則として
ありません。
しかし、
世の中には、
この「法人格」
というものを悪用して、
会社の借金を踏み倒す
道具にしようとする人が
少なからず存在します。
例えば、
A株式会社は、
多額の借金があって
返済ができないものの、
会社の事業はそれなりに
利益が出て
いたとします。
この場合、
A株式会社のC社長が、
自ら新たに
B株式会社を設立して、
そこの代表取締役に
就任します。
その際、
A社の従業員全員を
いったん解雇して、
新たにB社で
雇い入れます。
A社の所有であった
工事に要する機械や
トラックなどの備品なども、
全てB社に譲渡して
しまいます。
それだけではなく、
A社の顧客層もすべて
B社に移してしまいます。
その上で、
新たにB社として、
A社の顧客層との間で、
A社と同じ営業を
開始します。
当然、
A社にお金を貸していた
金融機関などの債権者は
怒りますが、
この時点では、
A社の財産や従業員、
顧客層もすべてB社に
移してしまっており、
A社はいわば
も抜けのから。
債権者はA社に対する
借金を踏み倒されて、
泣き寝入り。
果たして、
こんなことが許されて
よいのでしょうか?
実は、
こうした事例が
相次いだために、
最高裁判所が1つの
判断を行っています。
それは、
旧会社の借金を免れる目的で、新会社を作るなど、法人格を道具として濫用したと判断される場合には、例外的に新会社にも旧会社の債務が引き継がれることがある
という判断です。
これは、
専門的には、
「法人格の否認」
と言われます。
いわば「法人格」という
法律で認められた
制度を悪用し、
借金を免れるための
道具として「法人格」を
濫用するケース。
このような場合には、
例外的に「法人格」を認めず、
旧会社の債権者は、
新会社に対して借金の
返済を請求できる、
と判断したのです。
この「法人格」が
否認される場合とは、
具体的には、
というようなケースです。
そして、
②の法人格を意のままに
道具として支配しているか
どうかの要素としては、
などといったもので
判断されます。
このように、
多額の借金を抱えた
会社の借金を
踏み倒す目的で、
新会社を設立して
そちらで営業を続ける。
このような
都合のよいことは、
法律上認められない、
ということです。
もちろん、
新しい会社を作って
営業すること自体は、
禁止されている
わけではありません。
この場合も、
やはりきちんと正規の
手続きを踏む必要が
あります。
すなわち、
上記の例で、
A株式会社として負債を
返済することが
大変であれば、
正規の債務整理手続き、
すなわち任意整理や
民事再生、破産といった
手続きをきちんと
行うことです。
そうした手続きを
きちんと行うことは、
いわば迷惑をかける
債権者に対する
一種の責任であり、
ケジメです。
もちろん、
破産手続きを行った
からといって、
その後新たな会社設立が
制限されるわけでは
ありません。
したがって、
そうした手続きを
きちんと終了させた後で、
新たな会社を設立して
営業を行うといっ手順を
きちんと踏む必要が
あるわけです
(ただし、代表者が破産していると、
その後しばらくの間は金融機関からの
借入等は制限されますが)。
コロナ融資の返済が
なかなか大変で、
会社をいったん整理したい、
という会社もあるでしょう。
そのこと自体は
仕方がないと思いますが、
借金だけ都合よく
踏み倒したい
などと考えると、
法的にも上記のような
ペナルティーを受ける
可能性があります。
やはり、
会社を整理する場面でも、
人としての誠意が求められる、
ということですね。
それでは、
また。
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今回は、アパートの困った借主、大家が責任を負う場合、というテーマでお話ししています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。