終業時刻後の3分とか、
5分とか、
そうした端数の時間を
切り捨てて、
労働時間としてカウント
しない運用をしている
会社があります。
しかし、
そうした運用は違法であり、
後々社員から多額の未払い賃金
として請求を受ける
リスクがあります。
この問題、
特に中小零細企業としては、
どのように対処したら
よいでしょうか?
(今日の「棒人間」 5分未満の端数切り捨てはあり??)
<毎日更新987日目>
回転ずしチェーンの大手の
「スシロー」を運営する
「あきんどスシロー」が、
労働基準監督署から勧告を
受けたという報道が
ありました。
なぜ今回、
労基署が「スシロー」に
入ったかというと、
同社では過去に社員の5分未満の
端数を切り捨てて
労働時間を計算しており、
その結果未払い賃金が
発生したため、
ということです。
会社側は、
2022年9月から、
労働時間を1分単位で計算する
運用に改めたそうですが、
労基署は、
それ以前の期間で、
3年の時効にかからない期間の
未払い分についても
支払うように、
今回勧告を行った、
とのことでした。
この問題では、
過去にも大手ファミレスチェーンの
「すかいらーく」でも、
やはり5分未満の労働時間の
端数の切り捨てが
行われていて、
問題となったことが
あります。
このとき「すかいらーく」は、
全国のパートやアルバイト
約9万人に未払い分の総額
16億から17億円の支払いを
余儀なくされたようです。
たかが「5分未満」とはいえ、
積もり積もるとすさまじい
金額になるものです。
今回の「スシロー」でも、
同様の対応、
すなわち過去分も含めた
巨額の未払い賃金の支払いを
求められる可能性があります。
こうした「5分未満」の
わずかな労働時間について、
端数として切り捨てて
労働時間を計算する、
という運用がなされている
ことがあります。
たとえば、
終業時刻が午後5時
だったとして、
後片付けなどが残っていて、
仕事が終わったのが
厳密には5時3分
だったような場合。
終業時刻後の3分間は、
端数として切り捨て、
労働時間としては
カウントしない、
ということを意味します。
言ってしまえば、
この3分間は「サービス残業」
という扱いになるわけです。
これは、もちろん、
法律的にはアウトです。
すなわち、
労働基準法では、
社員の給料、
すなわち賃金は、
社員に直接全額を
支払わなければならない、
と定められています。
1分だろうが、
3分だろうが、
5分未満だからといって、
端数として切り捨てて、
労働時間としてカウントしない、
などと言うことは
許されません。
もしこうした端数切り捨ての
運用が発覚した場合、
社員としては、
これまで端数として
切り捨てられていた
労働時間分の給料を、
未払い賃金ということで、
会社に対して請求する
ことができることに
なります。
未払い賃金請求権の時効は、
現在のところ3年(今後、5年に延長の予定)
となっていますので、
過去3年分にさかのぼって
請求することができる、
ということになります。
たかが端数分のわずかな
労働時間分の賃金、
とはいえ、
過去にさかのぼり、
しかも社員数が多い
大企業の場合は、
一気に多額の未払い賃金の
支払いを余儀なくされる、
ということになって
しまうわけです。
さて、
中小零細企業の実務においても、
こうした労働時間の
「端数切り捨て」の運用が
なされている場合があります。
その場合、
どのように対処したら
よいのでしょうか?
一番最悪な対応は、
「何もしないで放置する」
という対応です。
今は情報化社会、
社員の人も、
インターネットなどで、
労働法の知識を
身につけています。
そして、
今回の「スシロー」や
「すかいらーく」といった
大手企業の事件も報道で
知ることになります。
もし、
3分とか5分とかいった
「端数」の労働時間を
切り捨てる運用が
なされている場合、
早急に是正する
必要があります。
早急に是正する、
というのは、
少なくとも将来に向かっては、
端数の時間もきちんと
労働時間にカウントして
給料を計算して支払う、
ということです。
この点、
社員の数も少なく、
お互いに良くも悪くも
人間関係が濃密な
中小零細企業。
経営者の立場からすれば、
5分未満の時間くらい、
目をつぶってくれないかな?
という気持ちになるのも
わかります。
しかし、
チリも積もれば山となる、
という例えがあります。
こうした端数の
サービス残業が度重なると、
働かされている社員の
立場からすれば、
黙っていられないでしょう。
私は以前、
とある企業で働く人から、
こんな話を聞いたことが
あります。
それは、
本当に尊敬する社長のもとで、
自分が大好きな仕事を
している場合には、
5分未満の残業など
いちいち請求する気には
ならないそうです。
ところが、
尊敬できない社長のもとで、
大きな不満を抱えて
働いている場合には、
1分1秒のサービス残業も
許せない。
1円単位でも請求してやりたい!
そんな気持ちになると
言っていました。
働く人の気持ちというものは、
そういうものなのでしょうね。
そんな気持ちにさせてしまっては、
社員との間の「裁判沙汰」に
陥る危険があります。
この点、
私のミッションは、
「裁判沙汰」を避けるためには、
まずこうした違法な労働時間の「
端数切り捨て」の運用を
改善することです。
ただ、
それだけではなく、
やはり常日頃から経営者サイドと
社員さんとの信頼関係を
きちんと作っておくことが
何より重要ですよね。
「1分1秒の残業も許さない!」
少なくともそんな風に
思われる経営者に
ならないように、
私も気をつけたいものです。
それでは、
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。