「裁判しないで解決」する建設業・不動産業を多く扱う
渋谷の弁護士吉田悌一郎

不祥事で懲戒解雇の社員、「退職金」を支払うべきかどうか?

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不祥事を起こして

懲戒処分にした社員。

 

 

この社員の「退職金」を

不支給にできるかどうか?

 

 

これは、

結構裁判例などでよく

問題となっている、

難しい問題です。

 

(今日の「棒人間」 退職金は渡さない??)

 

<毎日更新986日目>

不祥事を起こして懲戒解雇された社員、「退職金」を不支給とできるか?

不祥事を起こして、懲戒解雇した社員に、退職金を払うなんて、とんでもない!!むかっ (怒り)

このように考えておられる

経営者の方は、

少なくないと思います。

 

 

不祥事を起こして

懲戒解雇になった社員の

「退職金」を支払う

べきかどうか?

 

 

実は、

この問題は裁判例でも

判断がわかれる難しい

問題なのです。

 

 

少し前の裁判の

事例になりますが、

某大手都市銀行(みずほ銀行)

の社員が、

 

 

部外秘となっている

行内の情報を外部に

漏らしたとして、

懲戒解雇処分に

なりました。

 

 

具体的には、

この社員は、

業務上の端末を使って、

預金者の登録情報を調べる

「顧客取引残高照会」

を利用して、

 

 

同僚の職員の住所や

預金残高などが記載された

オペレーション票を印刷して

社外に持ち出しました。

 

 

さらに、

部外秘とされている

行内通達等を多数

社外に持ち出し、

出版社等に情報提供する

などしたとされています。

 

 

この銀行の退職金規定では、

懲戒処分を受けた社員の

退職金は減額または不支給

とすることがある、

と定められていました。

 

 

そこで、

銀行側は、

この社員を懲戒解雇

するとともに、

この退職金規定に基づいて、

この社員の「退職金」を

不支給としました。

 

 

これに対して、

この社員側が、

退職金を不支給とする

ことは許されないとして、

退職金の支払い等を求めて

銀行を提訴したのが

この事案です。

 

 

第一審である東京地裁は、

本件の諸事情を考慮すると、銀行員不祥事(漏洩行為)は、この銀行員の勤続の功を完全に抹消するものとはいえず、退職金・退職年金の不支給措置はそれぞれを7割不支給とする限度で合理性を有する

 

として、

退職金の3割を支払うように

銀行側に命じました。

 

 

つまり、

懲戒解雇になった

社員であっても、

社員はそれまで長年

会社に勤めて、

それなりに会社に功労を

もたらしているので、

 

 

それを完全に抹消する

ような不祥事でない限り、

「退職金」全額の不支給は

許されない、

としたわけです。

「退職金」を不支給とできるための基準とは?

これに対して、

第二審である東京高裁では、

「退職金」全額を不支給

とした銀行の措置は、

適法であると判断しました。

 

 

すなわち、

本件では、銀行の退職金規定で、懲戒処分を受けた社員の退職金を、減額または不支給とすることがあると定められていて、懲戒処分のうち懲戒解雇の処分を受けた者については、原則として、退職金を不支給とすることができる。

としました。

 

 

その上で、

ただし、懲戒解雇事由の具体的な内容や、労働者の雇用企業への貢献の度合いを考慮して退職金の全部又は一部の不支給が信義誠実の原則に照らして許されないと評価される場合には、全部又は一部を不支給とすることは、裁量権の濫用となり、許されない。

としています。

 

 

ですから、

原則として、

退職金規定に基づいて、

会社側(銀行側)には、

 

 

懲戒解雇になった社員の

「退職金」を支給するか

否かについて、

裁量権があると

しています。

 

 

その上で、

「退職金」全額の支給が、

社員の会社へのこれまでの

貢献度合いなどを考慮して、

信義誠実の原則に照らして

許されない場合には、

 

 

裁量権の濫用となって、

許されないとしています。

 

 

そして、

上記の事例では、

情報を漏らした銀行員の行為の悪質性が高く、この行員が長年銀行に勤務して貢献してきたことを考慮しても、退職金全額を不支給とすることが、信義誠実の原則に照らして許されないとは言えず、銀行に裁量権の濫用はない

として、

「退職金」全額の

不支給を適法である、

と判断したものです。

 

 

 

判断に迷ったとき、どうするか?

このように、

懲戒解雇になった社員

だからといって、

必ずしも常に「退職金」全額の

不支給が許されるわけではない、

というのは、

注意すべきポイントです。

 

 

簡単に言えば、

結局はケースバイケースで、

社員の起こした

不祥事の内容などにも

よるということに

なります。

 

 

ただ、

退職金の全額の不支給が

許されるかどうかは、

事案によってかなり微妙で

判断が難しい場合が

多いでしょう。

 

 

実際に、

上記の裁判例も

第一審と第二審で

結論が異なっています。

 

 

そんなこともありますので、

中小零細企業の実務としては、

やはり安易に全額の不支給として

しまうのは危険だろうと思われます。

 

 

不祥事を起こして

懲戒解雇した社員の

「退職金」を支給

すべきかどうか?

 

 

一般的に言えば、

よほど悪質な不祥事

のケースを除いて、

「退職金」全額の不支給は

違法とされる可能性も

高いでしょう。

 

 

会社としても、

不祥事を起こされて、

懲戒解雇にした社員に

「退職金」を支給

しなければならないのは、

納得がいかないことも

多いでしょう。

 

 

ただ、

上記のように、

その辺の判断は

かなり微妙ではあり、

具体的な不祥事の内容

などを冷静に見極めて

判断する必要があります。

 

 

もし判断に迷った場合は、

必ず専門家である弁護士に

相談するようにしてください。

 

 

社員の懲戒解雇と

「退職金」の不支給問題。

 

 

これは、

結構実務上裁判例などでも

問題となることが多いので、

今回取り上げてみました。

 

 

それでは、

また。

 

 

 

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名前吉田 悌一郎
住まい東京都

Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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