ビジネスをする上で
「お客様の声」は貴重です。
しかし
だからと言って
お客様の写真や氏名などを無断で利用すると
肖像権侵害やプライバシー侵害で
不法行為となってしまう危険があります。
(今日の「棒人間」 肖像権を侵害された??)
<毎日更新1297日目>
先日
都内で工務店を営むA社長
よりご相談を受けました。
実は、今度うちの会社の住宅展示会でチラシを配るのですが、そのチラシに、「お客様の声」を載せたいのです。
お客様の声ですね、なるほど。
そこには、できればお客様の氏名やお写真、それから新築したお家の写真も掲載したいのですが、何か法的に気をつけるべきことはありますか?
そうですね、まずご本人やご家族の顔写真については、その方の「肖像権」の問題がありますので、必ずその方の同意は必要です。
それはそうでしょうね。
それから、お名前やお家の写真ということになると、もう1つプライバシー権の問題があります。
なるほど、プライバシー権ですね。
氏名はもちろんですが、お家の写真なども、今はGoogleのstreet viewなどで容易に特定できてしまう場合があります。
確かに、そうでしょうね。
ですから、この場合も必ずご本人の同意はとってください。
はい。
それから、どこまでの同意をとっているかも重要です。
と言いますと?
例えば、チラシで使った写真などをそのままインターネットのホームページに掲載する場合があります。
あ、それちょっと考えてました。
しかし、一回的なチラシに掲載することの「同意」と、インターネットで不特定多数に公開することの「同意」はそもそも質が異なります。
確かに、そうですね。
ですから、ネットに掲載するなら、改めてその旨の同意が必要で、しかもどの程度の期間掲載するかについても説明が必要でしょうね。
なるほど、よくわかりました。
他人の「顔写真」をチラシや
ネット広告に勝手に利用することは
法的にどんな問題があるのでしょうか?
これは
「肖像権」侵害の問題があります。
「肖像」とは聞きなれない
言葉ですが
人物の容貌、
姿態などを
うつしとった絵
写真、彫刻などの
ことを言うとされています。
そして
「肖像権」というのは
個人が自身の肖像をコントロールし
他者が無断で利用することを
制限する権利のことを言います。
人は
みだりに他人から写真を撮られたり
まして撮られた写真を世間に公表されたり、
利用されたりしない
権利を持っているわけです。
ですから
勝手に他人の「顔写真」をチラシや
ネット広告に利用することは
肖像権侵害となり
その人に対する不法行為
となる可能性があります。
さらに
他人の氏名や自宅の写真などを
チラシやネット広告に使うことについては
「プライバシー権」侵害の問題が
生じる可能性があります。
「プライバシー権」とは
自分の私生活をみだりに
公開されない権利とか
自己に関する情報を
コントロールする権利
と言われます。
人の「氏名」は
まさにプライバシーそのものです。
さらに
自宅の写真も
氏名と併記されることで
まさにその人がどこのどんな家に
住んでいるのかということが
明らかになってしまいます。
今では
Googleのstreet viewなどを使えば
自宅の特定が容易になってしまいます。
それだけではなく
チラシや広告で家を購入した
建築したという内容が
含まれているのであれば
大きな買い物をすることが
できるような経済力
財産状態であること等も
公開されてしまうことになります。
ですから
本人に無断で氏名や家の写真を
チラシやネット広告に利用することは
プライバシー権侵害となり
やはり不法行為になります。
このように
本人に無断で本人の顔写真
氏名、家の写真などを
チラシやネット広告に載せて
宣伝するなどしてしまうと
その人に対する肖像権侵害
プライバシー権侵害となる
可能性があります。
そうなると
最悪の場合
その人から不法行為に基づく
損害賠償請求をされ
「裁判沙汰」に陥ってしまう
危険もあります。
ですから
やはり掲載にあたっては
ご本人に上記の点を
きちんと説明した上で
明確な「同意」を得て
おく必要があります。
ここで
「同意」を得る際に
注意すべきことがあります。
仮に、顔写真や氏名
自宅の写真をチラシに掲載することに
ついて「同意」をいただいたとします。
しかし
それについて
チラシのみならず
例えばネット上の自社のホームページ
などに勝手に掲載してしまうことは
問題があります。
この人は
「同意」をしている以上
少なくともこの会社の「チラシ」に
掲載される限りにおいては
その肖像権やプライバシー権は
放棄していると言えます。
ところが
限られた範囲にしか拡散しない「チラシ」と
全世界に拡散されるインターネットでは
「公開」の性質がまったく異なります。
あくまで「チラシ」に掲載
することに同意しただけで
ネット上のホームページにまで
掲載することには同意していない
というケースも往々にしてあります。
ですから
ネット上に掲載するならば
やはり同様にきちんと説明した上で
改めてその旨の「同意」を
得ることが必要となります。
さらに
ネットでは
下手をすると半永久的に掲載が残る
ことにもなりかねませんので
ある程度「掲載期間」
を明確にした上で
その点についての同意も
得ておく必要があるでしょう。
ビジネスをしていれば
やはり生の「お客様の声」
というものは大変に貴重です。
それも
なるべく顔写真や氏名などを
明らかにしていただいた方が
信用性も高くなります。
しかし
掲載される方にとっては
上記のような肖像権侵害や
プライバシー権侵害を不可避的に
伴うものです。
この点は
会社として
お客様に丁寧に説明し
納得して「同意」いただいた上で掲載する
こうした丁寧なプロセスが
欠かせないでしょうね。
それでは
また。
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Profile
中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。