賃貸借契約が終了して、
借主が建物を明け渡す際には、
借りた建物を原状に復して返す
という原状回復義務が発生します。
借主がどこまでの
原状回復義務を負うのか、
これは実際によく争いに
なるポイントです。
(観覧車の撤去作業 これも「原状回復」?@お台場)
<毎日更新618日目>
先日、
不動産の賃貸業を営む
会社の社長から
ご相談を受けました。
(守秘義務があるため、
ご相談内容は大幅に変えています)
今回は、我が社で管理している物件(賃貸マンション)についてご相談したいことがありまして。
どんなご相談でしょうか?
マンション1室の借主が、この度退去することになったのですが、退去にあたっての借主の原状回復義務について伺いたいのです。
なるほど、原状回復義務ですね。
具体的にはどんなご相談でしょうか?
実は、賃貸借契約書では、建物に生じた汚れなど一切の修復は借主の負担となっています。
そこで、今回ハウスクリーニングの代金を借主に請求したのですが、借主が、それは負担しないと言い出したのです。
なるほど。なぜ負担しないと言っているのですか?
今回の建物の汚れは、普通に建物を使っていれば当然生じるレベルの汚れであって、それを借主が負担しなければならないわれはない、と言っているのです。
なるほど。
確かにこの点は、最近民法が改正されまして、建物の通常の使用及び収益によって生じた損耗や、経年変化によるものは、借主の負担ではないとされているのです。
し、しかし、ちゃんと契約書には、本物件に生じた汚損はすべて借主が修復するとはっきり書かれているのですが・・・。
そのような通常の汚損などを借主の負担とする合意も有効とされてはいます。
ただし、裁判例がありまして、その場合は借主が修復する通常の汚損の範囲が契約書に具体的に明記されていること、などの要件があります。
そのような具体的な合意がない場合は、そうした特約は効力がないとされているのです。
なるほど、そうなんですね。
ですから、今後新たな賃貸借契約を結ぶ場合には、原状回復にあたって借主のなすべき義務を具体的に定めておいた方がいいでしょうね。
建物の賃貸借が終了して、
借主が貸主に建物を返す場合
(退去する場合)には、
借主は原状回復義務、
という義務を負います。
原状回復義務については、
民法621条で次のように定められています。
ですから、
基本的には、
借主は建物を借りた時の状態
(原状)に戻して貸主に返す
必要があるわけです。
ところが、
当然建物は使っていれば、
経年劣化で古くなっていきます。
長年使っていれば、
壁紙や床のカーペットが
汚れたり、
エアコンが汚れたり、
畳や襖が汚れたりとか、
いろいろあるわけです。
これらがすべて借主が
負担する原状回復義務の
範囲に含まれるのかどうかは、
裁判でも長い間争われてきました。
貸主が、
ハウスクリーニングと称して、
壁紙や畳などをすべて
新品に入れ替えてしまって、
その費用を借主に請求したり、
敷金から差し引いたり
する事例が相次ぎ、
問題となってきました。
そこで、
最近民法が改正されて、
上記のような経年劣化による
損傷や汚れなどは
借主の負担ではないことが
法律上明記されました。
すなわち、
上記で引用した民法621条
のかっこ書き(赤字の部分)には、
こう書かれています。
これを通常損耗(つうじょうそんもう)
と言ったりしますが、
通常損耗は原則として
借主の原状回復義務から
除かれることが明記されたわけです。
ただし、
貸主と借主との間で、
賃貸借契約の中で、
こうした通常損耗も
借主の負担とすることを
合意した場合には、
一定の要件のもとで
こうした合意も有効
であるとされています。
こうした合意のことを、
と言ったりします。
ただし、
裁判例で、
この通常損耗補修特約が
有効になるためには、
次の要件が必要だとされています。
すなわち、
少なくとも、借主が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、
仮に契約書で明らかでない場合には、貸主が口頭で説明し、借主がそれを明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、通常損耗補修特約が明確に合意されていることが必要
とされています。
これは、
例えば、
契約書で単に
などという記載がある
だけではダメだ、
ということを意味します。
借主のなすべき具体的な義務
の内容が書かれていない場合は、
通常損耗補修特約の効力が
認められない、
ということになるわけです。
そこで、
契約書に通常損耗補修特約を
定める場合には、
たとえば、
などと、
具体的に記載しておく
ことが必要です。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
建物賃貸借が終了する場面で、
借主が建物を退去する際に、
この原状回復義務はよく問題になり、
トラブルが起きやすい場面でもあります。
余計なトラブルを予防するためには、
やはりきちんとした不備のない
契約書を作っておくこと、
これが大切ですね。
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今回は、弁護士の仕事は社会貢献?社会貢献に利益を求めても良いのか?というテーマでお話しています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。