社内で社長と社員がトラブルになり
社長がつい感情的な
発言をしてしまいます。
社員はそれで
「自分はクビにされた」と思い
それ以降出社しなくなります。
さてさて
これは解雇か
社員の自主退職か
この問題は実際に結構
争いになるポイントです。
(今日の「棒人間」 これって解雇?それとも自主退職?)
<毎日更新1155日目>
事件は2021年の年末
ある運送会社で起こりました。
この会社の社員である男性運転手が
トラックで資材を運搬する業務中に
取引先の現場で不手際があり
なんとこの会社は
この取引先を「出入り禁止」に
されてしましました。
社長は激昂し
この男性社員に対して
お前のせいで取引先を出入り禁止になった、謝れ!謝れ!
他方で
この男性社員にも
取引先の誤解があるなど
言い分があったようですが
得意先から「出禁」を喰らい
怒り心頭に達した社長は
聞く耳を持ちません。
社長側の主張によれば
そのときこの社員は
「もう勤まらない」と
言い捨てたとのことです。
そこで
社長が
といったところ
この男性社員は
会社貸与の携帯電話と保険証を
置いて立ち去り
二度と職場に姿を
見せなかったとのことです。
数ヶ月後
この事件の舞台は
「裁判所」に移されました。
この裁判では
この男性社員は会社から
「解雇」されたと主張します。
他方で
会社側は
この社員が自ら「自主退職」したのだとして
両者の主張は真っ向から
対立することになりました。
このブログでもよくお話ししているように
日本の法律では
社員の解雇はそう簡単には認められず
非常にハードルが高いのです。
もしこの社長の
のひと言が
この社員に対する「解雇」の
意思表示だとすれば
社員から「不当解雇」だと争われ
会社は極めて厳しい立場に
立たされます。
他方で
その社長のひと言の後で
社員が会社貸与の携帯電話と保険証を
置いて立ち去った行為が
社員の「自主退職」であった
としたらどうでしょうか?
「自主退職」というのは
あくまで社員の側から自由な意思で
会社を退職することを意味しますので
後になって会社に解雇されたと
主張することは許されなくなります。
このように
「解雇」か「自主退職」かで
法的な意味合いはまったく違ってきますし
会社の置かれる立場も異なってきます。
実は、このように
「解雇」か「自主退職」かで
争われるケースは少なくありません。
この点
裁判所はどのように
判断したのでしょうか?
東京地裁の判決では
この社員の「もう勤まらない」という
発言があったとは認定しませんでした。
ただ
仮にこの発言があったとしても
それは社長から叱責
されたことに憤慨し
自暴自棄になって発言
したものだと認定しました。
他方で
社長の「私物を片付けて」
という発言については
社会通念上、男性の退職を求める発言とみるのが自然
という認定をしました。
その上で
この男性が
社長の「私物を片付けて」という発言を
「解雇通告」ととらえたため
携帯電話や保険証を置いて
出勤しなかったのであり
この男性の行為は不自然ではない
と認定しました。
その結果
この男性社員が自ら退職する
「自主退職」は認められず
その結果「雇用関係は現在も続いている」として
会社に対して未払い賃金などの
支払いを命じました。
さてさて
こうしたトラブルを予防するためには
会社としてはどんなことを
心がけたら良いのでしょうか?
まずもって
どんなに社員に腹が立ったとしても
その感情のまま現場で
社長が「解雇」を通告するなどと
いうことは絶対にやってはいけません。
そこまで行かなくても
社長と社員で言い争いになり
売り言葉に買い言葉で社長が
社員に感情的なひと言を
言ってしまうことがあります。
そして
社長のそうした感情的な
発言を一部とらえられて
「不当に解雇した」と
争われるケースは少なくありません。
こうしたケースでは
現場での争いが終わった後
社員が出社しなくなったことを
放置してはいけません。
社長としては
「自分から退職してくれた」と
安心しているのですが
後で弁護士から「不当解雇」という
内容証明が届くことになります。
ですから
こうしたケースでは
まずその社員に対して
会社を退職する意思があるかどうかを
きちんと確認することです。
その上で
退職の意思が明らかであれば
きちんと「退職合意書」に
サインしてもらうことです。
こうしておけば
後で「不当解雇」だと争われる
リスクを減らすことができます。
そして
もし社員に退職の意思がない場合には
会社は解雇をしていない
という事実を明確に伝えるべきです。
社内でなんらかのトラブルがあり
「解雇」か「自主退職」かの問題というのは
非常にナーバスになりがちです。
しかし
この点を曖昧なままにしておくと
後々「不当解雇」を争われ
「裁判沙汰」の泥沼に
陥ってしまいます。
「裁判沙汰」を避けるためにも
社員の退職という「終わり」の部分を
曖昧にすべきではありません。
ところで
冒頭の事例は
その後会社側が控訴したものの
高等裁判所で和解が
成立して終わったそうです。
和解の内容としては
この男性が「もう勤まらない」と発言した
とされる日に会社を退職した
こととする代わりに
会社側が一定の解決金を支払う
ことで決着したそうです。
いずれにしても
社員との「裁判沙汰」に陥ると
会社にとってお金、時間
そして社長の貴重な
エネルギーを奪われます。
気をつけたいものですね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。