世の中の経営者の方の中には
社員の「懲戒解雇なら
退職金はすべて支払わなくていい」
と考えている人がいます。
しかし
これは完全なる誤解です。
法律上
懲戒解雇が有効かどうかという問題と
その場合に退職金の全額を
不支給とできるかどうかは
全く別問題ですので
注意が必要です。
(今日の「棒人間」 退職金不支給と言えるか?)
<毎日更新1162日目>
たとえば
社員が何か不祥事などを行い
会社がその社員を懲戒解雇
にする場合があります。
その場合
会社の就業規則に
という規定が置かれて
いることがあります。
社員を懲戒解雇する際に
こうした就業規則の規定を根拠に
退職金全額を支給しない
ということが許されるでしょうか?
そもそも
このブログでもよく
お話ししているとおり
会社が社員を懲戒解雇するには
法律上極めて高いハードルがあります。
まず
社員を懲戒解雇するためには
会社の就業規則において
その根拠となる規定が必要です。
すなわち
懲戒の種類や
どのような行為がどの種類の
懲戒処分にあたるのか
などが就業規則であらかじめ
定められていなければなりません。
さらに
その上で
仮にその社員に就業規則で定めた
懲戒解雇にあたる事由があったとしても
実際に社員を解雇するためには
という2つの要件を
満たす必要があります。
これを満たさない解雇は
「解雇権の濫用」として
解雇が法的に無効とされます。
よく世の中にある「不当解雇」
の裁判というのは
会社の解雇がこの
「解雇権の濫用」であり
解雇が無効であると
訴えているのです。
さて
こうした高いハードルをくぐり抜けて
仮に懲戒解雇が有効であったとしても
それと退職金の支給はまた別問題です。
まぁ
懲戒解雇が有効になるというケースは
社員がかなり悪質な犯罪行為を
行ったような場合が考えられます。
たとえば
会社の多額の金銭を横領したとか
飲酒運転で事故を起こしたとかいうケース
(ただし、一般にこうしたケースで
解雇が必ず有効になるというわけでは
ないのでその点も注意が必要です)。
実は
少なくない経営者の方が
と考えておられるようですが
実はこれは大きな誤解なのです。
というのは
退職金というものには
次の2つの性質があると
言われています。
1つ目は
です。
これは、
社員の長年の功労に対して
退職金というお金で報いる
といった性質です。
そして
もう1つは
といわれるものです。
これは
賃金の一部を後払いとすることで
社員の定着を促す役割があると
言われています。
たしかに
不祥事を起こして懲戒解雇
になった社員については
1つ目の功労褒賞としての側面
で考えれば
退職金の不支給や減額は
認められやすいでしょう。
しかし
もう1つの
賃金の後払い的性質を考えれば
いくら懲戒解雇になった
社員だからといって
そう簡単に不支給や減額はできない
という結論になります。
なので
懲戒解雇になった社員に対して
退職金を不支給ないし減額が有効
となるためには、
社員のそれまでの勤続の功労を抹消ないしは減殺してしまう程度の、著しく信義に反する行為があった場合に限られる
とされています。
ですから
結局はケースバイケースで
社員の起こした不祥事
の内容などにもよる
ということになります。
ただ
退職金の全額の不支給が許されるのは
相当限定的な場合ということになろうかと
思います。
そんなこともありますので
中小零細企業の実務としては
やはり安易に全額の不支給として
しまうのは危険だろうと思われます。
いずれにしても
というのは
大きな誤解ですので
注意が必要です。
それでは
また。
<サービスメニュー>
◾️裁判しないで解決するノーリスクプロモーター・弁護士 吉田悌一郎のプロフィール
◾️【無料】セルフマガジン『裁判しないで解決する方法』の無料送付
◾️YouTube(渋谷の弁護士・吉田悌一郎の中小企業ビジネス法務チャンネル)
最新動画
今回は「YouTubeを続けるメリットとコツ」というテーマでお話ししています。
活動ダイジェスト
住所 | 150-0031 東京都渋谷区桜丘町4番23号渋谷桜丘ビル8階 マップを見る |
---|---|
受付時間 | 【平日】9:30〜18:00 【土曜日】9:30〜12:00 |
Profile
中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。