会社の事業の都合などにより、一定の期間だけ社員を雇いたいという場合、期間の定めのある有期雇用契約が結ばれることがあります。
しかし、期間が満了したからといって、会社が常に契約の更新拒絶(雇い止め)ができるとは限りませんので、この点は注意が必要です。
(「ここまでで終了」ということは許されるか?)
<毎日更新575日目>
先日、建設業を営むある社長さんからご相談をいただきました。
この会社では、公共事業としてある大きなプロジェクトを請け負ったとのことでした。
こんにちは。
実は弊社では、ある自治体から依頼を受けて、公共工事として大きなプロジェクトの依頼を受けたのです。
そうですか。
それは良かったですね!
はい、おかげさまで。
で、そうなるとちょっと人手が足りないので、うちも社員を増やしたいところなのです。
なるほど、社員さんの新規採用ということですね。
ただ、このプロジェクトそのものは1年か2年ほどで完了する予定で、その後は継続的に仕事があるかどうかまだよくわからないのです。
そこで、正社員ではなく、1年か2年の有期の契約社員という形で社員を雇いたいと考えています。
なるほど、有期雇用契約、というものですね。
はい。有期の契約であれば、プロジェクト終了後に、もし継続的な仕事がなかった場合は、契約期間の満了で辞めてもらえるので、弊社にとってもリスクは少ないかと思いまして。
なるほど。
ただし、有期雇用契約であっても、契約期間が満了すれば常に契約更新の拒絶、つまり雇い止めができる、というわけではありません。
え、そうなんですか?
はい。
たとえばその社員さんが契約が更新されると期待することについて合理的な理由があるような場合など、一定の場合には、例外的に雇い止めが認められなくなることもありますので、注意が必要です。
社員を雇う場合でも、雇用契約の期間の定めがない場合(通常の正社員はこれ)には、社員を解雇するためには高いハードルがあります。
すなわち、労働契約法という法律で、社員を解雇するには
という要件が必要であるとされています。
これに対して、雇用契約の期間の定めがある有期雇用契約の場合には、雇い止め(契約更新の拒絶)が法的に認められる限り、期間の満了によって雇用契約は終了します。
ですから、1年とか2年とか、一定の期間のみ社員を雇いたい、という場合にはこの有期雇用契約が用いられることがあります。
しかし、この有期雇用契約の雇い止めも、まったく会社の自由にできる、というわけではありません。
すなわち、労働契約法19条という法律では、
には、上記の通常の正社員の場合の解雇の規制が適用される、としています。
つまり、こうした事情がある場合には、期間満了で雇い止めをするときにも、
という要件が必要になってくる、ということです。
具体的に、
というのは、たとえば、会社が、社員の契約更新の手続きをルーズにやっていて、実質的に見て正社員の雇用契約と同視できるというような場合です。
具体的には、更新する際に雇用契約書をきちんと作っていないとか、更新した後に雇用契約書を作ったりしていると、これに該当する可能性があります。
逆に、ちゃんと期間満了前に新しい契約の手続きをとっていて、契約の内容もその都度きちんと協議をして決めている、というような場合は、「期間の定めのない雇用契約と同視できる」とは判断されにくいでしょう。
次の要件、すなわち
については、社員が雇用契約の更新を期待することについて無理もない、と言えるような事情がある場合がこれにあたります。
具体的には、契約社員の仕事の内容が正社員のそれと変わらないような場合や、契約社員について長年雇い止めをしない運用が社内でされているような場合。
採用担当者や上司などから、長期間の雇用を約束するような発言があった場合も、これに当たる可能性があります。
したがって、契約社員を雇い止めするにあたっては、これらの①及び②の要件に該当しないかどうか、ということを確認する必要があります。
さらに、有期雇用契約が繰り返し更新されて、通算で5年を超えた場合には、社員からの申込みがあった場合には、有期雇用契約から無期雇用契約に転換される、という制度があります。
これを俗に
などと呼ばれることがあります。
ですから、有期雇用契約を結ぶ際には、この点の注意も必要となります。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
有期雇用契約は、雇用の調整弁として便利な側面がありますが、他方で社員の立場からすると、自分の地位がどうなるか不安定という部分があります。
そこで、雇い止めをする際にも、法律で会社側に一定の歯止めをかけている、というわけです。
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中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。