
相手の行方がわからない場合に
どうやって裁判を起こしたらいいんですか
と質問されることがあります。
その場合には
一定の要件のもとに公示送達という手続きを
利用して裁判を起こすことが可能です。
ただし
この公示送達はあくまで
例外的に使える非常手段です。
(今日の「棒人間」 知らない間に判決??)
<毎日更新1532日目>
被告に1000万円を支払うことを命じます。
ええ?裁判を起こされたことを知らなかったんですけど。
・・・・・・・・。
元参議院議員のガーシー氏が公開した
動画により名誉を傷つけられたとして
元兵庫県警警察官の男性が
ガーシー氏に損害賠賞を求めて
裁判を起こしました。
一審の神戸地裁は
ガーシー氏に1000万円の支払いを
命じる判決を出しました。
ところが
控訴審である大阪高等裁判所は
この一審の神戸地裁判決を
取消したという報道がありました。
「DMで提訴伝えられた」ガーシー氏への公示送達は「違法」 大阪高裁が審理差し戻し
民事裁判では
訴状が被告に送られる
すなわち送達をするという
手続きが必要になります。
ところが
ガーシー氏は従来の住所から引っ越しており
裁判所から郵送しても訴状が
届かなかったそうです。
そこで裁判所の掲示板に一定期間
期日呼出場などを掲示する「公示送達」
という方法で訴状の送達が行われました。
ガーシー氏はこの間
自分が訴訟を起こされた
ことに気づいておらず
判決報道で初めて訴訟を
起こされていることを
知ったそうです。
大阪高裁の判決は
SNSのダイレクトメッセージなどで
訴訟のことを知らせることができたので
神戸地裁が行った「公示送達」や
その後の判決は違法だと判断しました。
上記のように民事裁判では
訴えを起こされた相手方
すなわち被告の住所や
居所が不明な場合
訴状を送達できないと裁判手続きを
進めることができません。
「公示送達」というのは
このように相手方の住所や
居所が不明な場合に
訴状などを法的に相手方に
送達したものとみなすための
手続きです。
まず
この公示送達を行う前提として
訴えようとする相手方の住所や
居所が不明であることを示すための
合理的な調査を行う必要があります。
具体的には
住民票を取得し
現地調査を行って
相手方がそこにいないことの
調査を行う必要があります。
そうした調査結果を踏まえて
裁判所に公示送達の申立てを行います。
裁判所が申立てを認めると
裁判所の掲示板に訴状などの
書類が保管されており
いつでも交付できる旨の
掲示が行われます。
そして
掲示が開始されてから原則として
2週間が経過すると
実際に相手方が書類を
受け取っていなくても
法的に送達が完了したものと
みなされるのです。
実際問題として
裁判所の掲示板なんて誰も見ませんし
相手方がそれを見る可能性は
限りなくゼロに近いでしょう。
しかし
相手方の居所がわからなければ
裁判手続きを進めることが
できなくなってしまいます。
公示送達は
そうした場合の非常手段として
裁判所の掲示板に貼り出すことで
法律上も相手方に届いたことに
してしまうという制度なのです。
ただし
この公示送達というのは
あくまで極めて例外的な制度です。
公示送達が濫用されると
訴えられる相手方としては
自分が知らない間に裁判を起こされ
判決まで取られてしまうという
非常に大きな不利益を被ります。
そうなると
相手方は必要な反論の機会も奪われ
憲法で定められた「裁判を受ける権利」を
侵害されることになってしまいます。
そこで
この公示送達は相手方の行方がわからず
通知ができないという例外的な場合に
限って使うことができるのです。
具体的には
民事訴訟法という法律で
公示送達ができる場合の一つとして
当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
と定められています。
あくまで「場所が知れない場合」
という要件がついています。
上記のガーシー氏の大阪高裁の判決では
公示送達は当事者の住所などが
手段を尽くして探索したが
わからない場合に限られる
と指摘しました。
その上で
SNSのダイレクトメールでの連絡は
通常期待される手段だといえ
これを行わずに行った公示送達や
その後の判決は違法だと
結論付けたようです。
私も普段よく
相手の行方がわからない場合に
どうやって裁判を起こしたら
いいんですかと質問されることが
あります。
そんなときはこの公示送達
という方法があるわけです。
ただ
この公示送達は上記のようにあくまで
例外的な非常手段であり
そう簡単に利用することはできない
ことは覚えておかれた方が
良いと思います。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
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中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。