事業を売却し
一区切りつけて引退。
ところが数年後
「趣味の延長」のつもりで
店を出したところ
トラブルに発展?
実は
事業譲渡には見落とされがちな
「競業避止義務」という
落とし穴があります。

(今日の「棒人間」 落とし穴にハマる??)
<毎日更新1738日目>
昨日のブログでは
会社のM&Aや事業譲渡において
取引先の会社の組織構成が
変わった場合には
契約を解除することができる
とするCOC条項がネックとなり得る
という話を書きました。
会社を売る前に必ず確認!「COC条項」がM&Aの足かせになる場面とは?
M&Aや事業譲渡の場面で
もう1つ気をつけておくべき
ことがあります。
それは
「競業避止義務」の問題です。
少し
具体的な事例で考えてみましょう。
カリスマの和食の料理人であるAさん。
自身が経営していた料理店の事業を
大手チェーンに事業譲渡しました。
Aさんは
そのまま引退する
つもりだったのですが
5年後
ある会社から求められて
隣町で自身がプロデュースする
料理店を開きました。
その後
5年前に事業譲渡した大手チェーンの
担当者から怒りの連絡が入ります。

Aさん、ひどいじゃないですか!また自分のお店をオープンするなんて。

え、なんか問題ありますか?

あのね、ウチはカリスマ和食料理人としての「Aさんの名前と味」というブランドを譲り受けるために、あなたに高い事業譲渡の代金を支払ったんですよ!

いやいや、私は何もオタクの事業の邪魔をするつもりはなくて、単に一介の料理人として働きたいだけですよ。

いやいや、あなたがやっているお店は、いわばあなたの事業を譲り受けたウチの会社の店とライバル関係に立ちます。つまり、あなたがやっているのは「競業取引」に当たるんですよ!

あの〜、それが何か問題あるんでしょうか?

あのね、法律でもって、事業譲渡した場合は、20年間は同一市町村や隣接市町村内で同じ事業を行なってはならないとされているんですよ!

え〜、そうなんですか。

え〜、じゃないですよ。うちは大損だ。許せません! 訴えてやる
意外に見落としがちなのですが
会社法21条1項というところで
次のように定められています。
事業を譲渡した会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。
この規定は
事業譲渡をした会社の
「競業避止義務」を定めたものです。
すなわち
「同一の市町村の区域内及び
これに隣接する市町村の区域内」で
「二十年間は
同一の事業を行ってはならない」
とされているのです。
「競業」という言葉はわかりにくいですが
ライバル関係に立つ事業と
考えていただいてよいでしょう。
この規定に違反して
事業を譲渡した会社が
20年以内に同一または隣接する
市町村内で競業を行なった場合です。
この場合は
事業を譲り受けた会社が
競業行為をされたことで
もし損害が発生していれば
違反企業に対して損害賠償請求を
行うことが可能になります。
上記の事例のように
事業譲渡には
その会社のブランド的な価値を
譲渡するという側面があります。
そして
その分が譲渡代金に上乗せされて
いるようなケースもあるわけです。
にもかかわらず
譲渡した会社が
譲渡後も自由に競業を行う
ことができるとすると
譲り受けた会社は
本来そのブランド価値から
得られた利益が得られなく
なってしまいます。
そうすると
高い譲渡代金を支払った譲り受け会社が
思わぬ損失を被ることになってしまいます。
上記の会社法における競業避止義務は
譲り受け会社がそうした不測の損害を
被ることを防止するための規定だと
考えることができます。
とはいえ
実際のM&Aや事業譲渡の場面では
事業を譲渡する会社が
20年にわたる長期間
一切競業行為ができなく
なってしまうのは困る
というケースもあります。
そこで
当事者間の合意(契約)において
上記の会社法で定められている
競業避止義務を免除したり
緩和したりすることが認められています。
上記の会社法21条1項の規定でも
「当事者の別段の意思表示がない限り」
という限定が付されています。
「当事者の別段の意思表示」
つまり当事者間の合意(契約)によって
別の定めをすることもできますよ
とこの法律は言っているわけです。
それでは
どのような合意(契約)を
行えばよいのでしょうか?
競業避止義務を一切免除して
しまう合意も可能ではありますが
それではあまりに譲渡会社に有利
すぎるという場合もあります。
そこで
一般的には
会社法で定められている競業避止義務の
内容を緩和する方法が用いられています。
1つのやり方としては
上記の会社法の競業避止義務の制限に比較して
期間を短くする代わりに
適用されるエリアを広げる
という方法があります。
具体的には
競業避止義務を負う期間を
「20年間」という長期間ではなく
3年から5年程度に短縮します。
その代わり
競業避止義務を負う地域について
「同一・隣接市町村」よりも広げて
「日本全国
あるいは特定の営業エリア」
とするなどです。
大切なことは
やはり事業譲渡を行う際に
どのような契約内容にするか
しっかりと詰めておくことです。
具体的には
事業譲渡契約書に
競業避止義務に関する
特約(合意)があるかどうか
その内容をどのようにするか
ということです。
こうしたチェックを怠っていると
冒頭のAさんのように
事業譲渡後に思わぬ不利益を
受けることがありますので
注意したいものです。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。