
力のある大企業が、力の弱い中小零細企業に対して、無理難題を要求したり、不公正な取引を強要することがあります。
独占禁止法という法律や、公正取引委員会は、時に大企業の横暴に対する強い味方になることがあります。
(公正取引委員会前で撮影)
<毎日更新602日目>
先日、公正取引委員会が、コンビニ大手のセブンイレブン・ジャパンを任意調査していたとの報道がありました。
報道によると、セブンイレブンは、新商品(PB)などを発売する際に、商品の製造をエスアイシステムという会社に委託していたそうです。
そして、その商品についての電子カタログの作成代金を、この製造委託業社であるエスアイシステムに請求したとのことです。
さらに、このエスアイシステムは、セブンイレブンのPB商品の作成を下請に再委託していました。
その際に、なんとセブンから請求されたカタログ作成代金に相当する金額について、下請に商品製作代金の減額をさせたとのことです。
これらを図にすると次のようになります。
製造委託業社であるエスアイシステムが、下請に対して、電子カタログ作成代金に相当する金額の減額をさせたことは、下請法違反にあたります。
下請法では、元請が合理的な理由もなく、下請に対して代金を減額することを禁止しています。
さらに、エスアイシステムに対して、PB商品の電子カタログの作成代金を請求したセブンイレブンは、独禁法で禁止している「優越的地位の濫用」にあたる可能性があるとされたのです。
一般に,大手の企業というのは,中小零細企業に対して優位な地位にあります。
このような優越的地位にある大手企業が,取引相手である中小零細企業に対して,不当に不利益を与えるような要求をすることがあります。
先程のセブンイレブンの、PB商品のカタログ製作費を商品の委託業者に請求する行為などがその例です。
そうした要求をすることは,「優越的地位の濫用」として,独占禁止法で規制されています。
中小零細企業というのは,大企業との取引を切られると,事業が成り立たなくなることもあります。
そのため,取引先である大企業から無茶な要求をされても,これを承諾せざるを得ない立場に立たされます。
このような不公正な取引を防止して,企業間の公正な競争を確保する必要があります。
そのため、独占禁止法では,「優越的地位の濫用」を禁止する規定が設けられているのです。
大企業がこれに違反した場合には,公正取引委員会がそうした違反行為をやめさせるための排除措置命令というものを出すことができます。
さらに,違反事業者に対しては,
が課されることがあります。
この点,その取引相手が独占禁止法上の「優越的地位」に当たるかどうかは,次の4つの要素で判断されます。
1つ目は,取引依存度です。
大企業のA社と中小企業のB社が取引をする場合,B社の売上におけるA社との取引の割合です。
これが大きければ依存度が大きく,A社は優越的地位にあると判断されやすくなることになります。
2つ目の要素は,A社の市場における地位,市場における順位やシェアの大きさです。
これが大きければ,やはり優越的地位にあると判断されやすくなります。
3つ目の要素は,B社が取引を変更できる可能性,B社がA社以外の他の事業者と取引を開始できる可能性です。
これが低ければ,やはりA社にはB社とイヤイヤでも取引せざるを得なくなりますので、A社は優越的地位にあると判断されやすくなります。
そして4つめの要素は,その他,A社と取引をすることのB社における必要性を示す事実です。
たとえば,B社が大手で有名なA社と取引をすることで,自社の信用度が高まることがあります。
そのような場合、B社はA社との取引を事実上継続せざるを得ないような事情があるということになります。
こうした事情があれば,やはりA社は優越的地位にあると判断されやすくなります。
冒頭の例ですが、セブンイレブンはコンビニ国内最大手の超有名企業です。
セブンのPB商品の製造委託を受けたエスアイシステムとしては、セブンからカタログ作成費を請求されれば、事実上払わざるを得ない立場にあったと言えるでしょう。
このように、大企業が優越的地位の濫用と言えるような行為をしてきた場合、中小零細企業としては、独禁法違反で公正取引委員会を動かす、という方法があります。
先ほど述べたとおり、独禁法違反の場合には、公正取引委員会が排除措置命令を出すことができます。
ですから、公取に対して、排除措置命令を申し立てる、という対抗手段があるわけです。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
それにしても、セブンからカタログ代の請求をされた製造委託業社であるエスアイシステム。
それをさらに下請に払わせた、というのはいただけません。
強い者が弱い者をイジめ、やられた者がさらに弱い者をイジメる。
なんか社会の縮図のようで、嫌ですね。
法律を武器にして、こんな不公正な社会を少しでも良くしたいものですね!
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。