退職した社員から突然
「ホームページの写真を削除してください」
という内容証明が届いたら?
会社はどこまで応じる
義務があるのでしょうか。
ホームページだけでなく
パンフレットや配布済み資料の
扱いについては?
今回は
この辺のところを詳しくお話しします。

(今日の「棒人間」 「肖像」を守る??)
<毎日更新1886日目>
顧問先の会社のA社長より
先日ご相談がありました。
数年前
この会社ではPR用のパンフレットを作成。
そこに
当時A社長の会社に在籍していた
社員であるX氏の顔写真を
自社紹介ページに掲載しました。
もちろん
X氏の承諾は得ています。
さらに
A社長の会社のホームページの
自社紹介ページにも
同じく承諾を得た上で
X氏の顔写真を掲載。
ところがその後
このX氏はA社長と折り合いが悪くなり
会社を退職してしまいました。
そして
それからしばらく経ったあと
A社長の会社に
このX氏より内容証明が届きます。
A社長は何かと思って
ビックリして内容を見てみると
どうも上記の会社のパンフとホームページに
X氏の顔写真が載っていることについての
クレームのようでした。
X氏の要求はなかなかに強硬で
まずホームページに載っている
自分の写真の早急な削除を要求。
さらに
パンフレットについては
今後在庫で残っているものを
配布しないこと。
それだけではなく
すでに配布したパンフレットの回収と
廃棄も要求してきたのです。
A社長の会社としては
果たしてどうすれば良いのかということで
ご相談にお見えになりました。
この問題を法的に整理しますと
元社員X氏の「肖像権」と
「プライバシー権」が問題となっています。
「肖像権」とは
つまり個人が自分の顔や姿かたち
といった「肖像」をコントロールし
他者が無断で利用することを
制限する権利のことを言います。
また、「プライバシー権」というのは
自分の私生活をみだりに
公開されない権利とか
自己に関する情報を
コントロールする権利
と言われます。
他人の容貌などを動画で
勝手に撮影したりすれば
この人の肖像権やプライバシー権を
侵害する可能性があるわけです。
この点
もちろん
その人が動画で撮影される
ことに同意している場合には
これらの権利侵害にはなりません。
ただし
この「肖像権」や「プライバシー権」は
いわゆる人格権という権利であり
自己決定に関わる重要な権利です。
人格権は
生命や身体と同様に
自分の意思でコントロールできる権利です。
そして
「自分の顔写真をどこでどう使われるか」
という決定権を本人は持っています。
そこで
たとえ一度承諾したとしても
事情の変更や心境の変化などで
その承諾を撤回できるという
性質を持っています。
いわば
「今後は自分の顔を会社の
ために利用されたくない」という
個人の自由を重んじる権利なわけです。
そこで
もし仮にA社長の会社が
この元社員X氏の要求を無視し
何らの対応もしなかった場合には
上記の「肖像権」や「プライバシー権」
侵害となり得ます。
その場合
会社は不法行為に基づく損害賠償責任が
発生するおそれがあります。
それでは
X氏の要求を無視すべきではないとして
A社長の会社は具体的に何を
すべきなのでしょうか?
実は
「肖像権」や「プライバシー権」
侵害になるかどうかは
その写真を使うことによる会社の利益
それによって被る本人の不利益や被害の大きさ
などの要素を考慮した上で判断する
とされています。
この点
まずホームページの顔写真の削除については
会社としてなるべく早急に行うべき
と言えるでしょう。
自分の顔写真が意図しない形で
インターネット上に公開され続けるという
元社員X氏の不利益は大きく
他方でネットから顔写真を削除すること自体は
それほど手間暇がかかるものではないからです。
次に
X氏の顔写真が掲載された
パンフレットの在庫について
これを新たに配布せず
廃棄してほしいという要求です。
これも
やはり今後も自分の顔写真入りの
パンフレットが世の中に配布され続ける
ことに対するX氏の不利益は大きいと
言えるでしょう。
A社長の会社としても
たしかにパンフレットの制作コスト
が無駄になってしまうし
廃棄に費用もかかります。
ですが
それは会社にとって通常はそれほど
大きな困難を生じさせるものでも
ないでしょう(制作部数にもよりますが)。
そこで
この場合も
X氏の人格権の要素が優先され
やはり会社としては要求に応じる
べきという結論になると考えられます。
最後に
すでに配布したパンフの回収と
廃棄についてはどうでしょうか?
すでに配ってしまったものについては
現実問題として回収できない場合が
多いでしょう。
この場合
回収を強制することは
会社にいわば大きな困難を
強いることにもなり
いわば過大な要求と考えることが
できるでしょう。
したがって
この部分
つまり回収とそれの廃棄については
X氏の要求を拒否したとしても
必ずしも人格権侵害とは
評価できないと考えます。
いずれにしても
今の時代は「肖像」や
「プライバシー」といった
いわば人格的な権利
についての人々の意識は
非常に高くなっています。
中小企業の経営者としては
無用なトラブルを招かないためにも
この辺の意識はしっかり持って
おいた方がよいと思われます。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。