「期待した成果が出ないなら
取締役を辞めてもらいたい。」
そう考えて任期途中で解任した結果
会社が多額の損害賠償を請求され
「裁判沙汰」に発展するケースがあります。
今回は
その法的リスクについて解説します。

(今日の「棒人間」 その解任は大丈夫??)
<毎日更新1919日目>
Webマーケティングの会社であるA社は
事業拡大のため
SNS集客で実績があるとされていたX氏を
任期を2年間として取締役に招へいしました。
その際
X氏の月額報酬は60万円とされました。
ところが
いざフタを開けてみると
X氏が主導した集客のために行った
SNS運用やWeb広告などの成果が出ず
新規顧客の獲得数は期待値を
大きく下回る結果に。
そこで
X氏の取締役就任の1年後
A社の社長は
X氏について「集客力がない以上
取締役にふさわしくない」
と判断しました。
社長はX氏にその旨を告げて
取締役辞任を打診してみたものの
X氏としては
「集客施策の効果が出るには
時間がかかる」として辞任を拒否。
そのため
A社は
株主総会の決議によってX氏を任期の
途中(残りの任期が1年)で解任しました。
ところが
納得の行かないX氏は
この解任は「正当な理由」
のない解任であるとして
A社に対して損害賠償を求める
裁判を起こしてきたのです。

ここで
ちょっとX氏の「取締役」
という立場について
法的に整理してみましょう。
会社と取締役との関係は
「委任契約」を結んでいるとされます。
そして
会社法上
取締役はいつでも株主総会の決議で
解任することができると
定められています。
ですから
基本的に解任される取締役の同意や
不祥事などの解任事由が特に存在しなくても
解任自体はできるということになります。
ただし
会社法では
次のように定められています。
(解任された取締役は)
その解任について正当の事由がある場合を除き、
株式会社に対し、
解任によって生じた損害の賠償を
請求することができる
<会社法339条2項>
そこで
株主総会で解任された取締役が
会社に対して損害賠償請求をしてくる
という冒頭のような事案が
発生するわけです。
損害賠償ということですが
これは具体的にはどの程度の
賠償が求められるのでしょうか?
この点
上記のとおり「解任によって
生じた損害」ということになります。
これは
たとえば任期の途中で解任された場合は
残りの期間の報酬が「解任によって
生じた損害」と考えることができます。
冒頭の例で言えば
X氏の取締役としての報酬は
月額60万円ですから
残りの期間(1年)の報酬の
合計は720万円ということになります。
このように
会社としては取締役をある程度
自由に解任することは可能ですが
その場合
残りの任期の長さによっては
賠償額が高額となってしまう
リスクがあるわけです。
ところで
上記では
「その解任について正当の事由が
ある場合を除き」とされています。
この点
どのような場合が
「正当の事由」が
あると言えるのでしょうか?
基本的には
次のような場合
とされています。
①その取締役が職務執行上の法令・定款違反の行為をした場合
→ 簡単に言えば不祥事
②その取締役の心身の故障のため職務執行に支障がある場合
→ 健康問題などで仕事ができない場合
③その取締役の職務への著しい不適任
→ 経営能力が著しく低い場合など
冒頭の事例の場合
「③その取締役の職務への著しい不適任」
に当たるかどうかが問題となりそうです。
この点
X氏の解任理由は
「集客力がなく
取締役としてふさわしくない」
ということでした。
しかしながら
結論的には
単に「期待していたほど集客できなかった」
「営業成果が出なかった」という程度では
法的な「正当な理由」としては
認められない可能性が高いと考えます。
というのは
取締役というのは社員とは異なり
会社と委任契約に基づいて
経営を行う立場です。
言い換えれば
会社から細かい業務指示を受けるのではなく
ある程度自らの判断と裁量で仕事をする
立場だからです。
もし仮に
「③その取締役の職務への著しい不適任」
に当たるとして
「正当の事由」の要件を満たすためには
次のような事情が必要でしょう。
たとえば
取締役選任時に
「具体的に●●の数値(集客数)を達成する」
という明確な合意や契約があったかどうか。
また
取締役としての著しい
職務怠慢があったかどうか。
これらが証明できない場合は
「正当の事由」がないと判断される
可能性が高いと考えます。
そのようなわけで
取締役であっても
安易に任期途中での解任を行うと
後々賠償請求などのトラブルや
「裁判沙汰」に発展する
リスクがあります。
それを避けるためには
やはり当の取締役にある程度
納得の上で自ら辞任してもらう
という方法がベストでしょう。
その際には
必要に応じて
一定の退職慰労金や
残りの任期の報酬の一部に相当する解決金を
支払うというのも一つの方法でしょう。
その辺は気をつけて
おきたいものですね。
それでは
また。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。