この時期に問題になりがちなのが、
新入社員の採用の「内定取消し」
実は、
「内定」を出した段階で、
契約が成立していますので、
「内定取消し」はそれほど簡単ではありません、
というお話です。
(頼んだお酒はキャンセル不可・@bar.shoten )
<毎日更新674日目>
今年も3月に入り、
春の陽気でずいぶんと暖かく
なりましたね。
同時に花粉もすごいですけどね。
春がきて、
新入社員の入社の季節も近づいていますが、
この時期になると、
経営者の方からあるご相談を
受けることがあります。
それは、
に関するご相談。
先日も、
不動産業を営むある社長から
ご相談を受けました。
実は、うちが内定を出した入社予定者のことについて、ご相談したいのです。
御社の入社予定者の方ですね。
どんなご相談でしょうか?
うちでは、内定を出した学生について、入社前から研修ということで、週に2日ほどうちでアルバイトをしてもらっているのです。
なるほど。
OJT(オンザジョブトレーニング)の一環ですね。
ところが、その内定を出してアルバイトに来てもらっている学生が、どうも協調性がないようで、周囲のアルバイトや社員とうまくやれないようで、困っているのです。
なるほど、それは困りましたねぇ〜。
それで、うちとしては、この学生について、内定を取り消したいと考えているんですが、法律的に問題ないでしょうか?
すでに内定を出してしまっているということですが、内定というのは、内定取消し事由が生じた場合に解約できるという留保権のついた労働契約です。
ですから、内定取消しというのは、労働契約の一方的解約、つまり一種の解雇ということになります。
そうなんですか。
まだ内定に過ぎないので、簡単に内定取消しできると思っていました。
通常の社員の解雇ほどではないのですが、やはり内定取消しにはそれなりの理由が必要です。
単に、アルバイトをさせてみて「協調性がない」という理由だけでは、ちょっと法的に内定取り消しを行うのは厳しいと考えます。
いったん「内定」を出したけれども、
ちょっとこの人問題がありそうだな〜、
というとき、
会社が内定取り消しをできないかどうか、
ということを考えます。
そこで、
この「内定」というものを、
法律的に分析してみます。
そもそも、
「契約」というものは、
一定の例外を除いて、
「申し込み」の意思表示と、
「承諾」の意思表示が合致
したときに成立します。
この点、
新規で社員を雇うとき、
会社は新規採用者の募集を
出したりします。
この募集に対して、
入社希望者がこれに「応募」する行為は、
法律的には労働契約(雇用契約)締結
の「申し込み」にあたります。
この「応募」に対して、
会社が社内の選考を得た上で、
内定の通知を行うことは、
上記の「申し込み」に対する
「承諾」となります。
そして、
会社が「内定通知」を行うことで、
入社予定日までに採用内定取消事由が
生じた場合には、解約できる旨の
留保権がついた労働契約(雇用契約)
が成立したことになります。
この点、
多くの会社では、
採用内定の取消事由は、
採用内定通知書などに
書かれています。
しかし、
そこに書かれている取消事由があれば、
当然に会社が内定を一方的に取り消す
ことができる、
ということにはなりません。
というのは、
上記のように、
「内定」の通知によって、
すでに労働契約(雇用契約)が
成立してしまっています。
ですから、
会社がその「内定」を取り消す行為は、
労働契約の一方的解約、
つまり一種の「解雇」
となってしまうからです。
ただ、
まだ「内定」の段階ですので、
通常の社員の「解雇」ほど厳しい
ハードルがあるわけではありません。
この点、
裁判例では、
採用内定の取消しが認められるのは、
「採用内定当時知ることができず,また知ることが期待できない」事実が後に判明し,しかも,それにより採用内定を取り消すことが「客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できる」
場合に限られる、
とされています。
実際に、
内定取消し事由として認められるのは、
たとえば、
などがあるでしょう。
逆に言えば、
こうした事情がなく、
単に「協調性がない」という理由だけでは、
やはり内定取消しは難しいものと考えます。
旅行の「キャンセル」のように、
簡単に「内定取消し」ができる
と思っている経営者の方もおられますが、
それは誤解です。
上記のご相談事例でも、
もし強引に「内定取消し」をしてしまうと、
後々応募者から、
契約違反ということで、
損害賠償請求などの「裁判」を
起こされるリスクもあります。
私の弁護士としての使命は、
中小零細企業のトラブルを
「裁判沙汰」を避けるためにも、
「内定取消し」ができる場合とできない場合
については、
ある程度押さえておきたいものです。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
そんなわけで、
一度「内定」を出してしまうと、
会社側には一定の「しばり」が
かかります。
やはり安易な「内定」を避けて、
社員の「採用」は慎重に行うことが
大切ですね。
それにしても、
今年の花粉はすご過ぎますね。
なんとかならんですかね〜(泣)
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今回は、社員の副業について、会社の業務と競業するような副業を行うことを制限できるか、そんなテーマでお話しています。
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中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。