「裁判しないで解決」する建設業・不動産業を多く扱う
渋谷の弁護士吉田悌一郎

会社に入ってからデスクに座るまでの時間は、「労働時間」なのか? 社員の遅刻扱いについて

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始業時刻である午前9時

から社内の朝礼を開始。

 

 

この朝礼に毎朝遅れて

くる社員がいます。

 

 

この社員いわく

「9時に会社のビルの中には

入っているので、

遅刻ではありません!」

 

 

皆さんは、

どう考えますか?

 

 

(今日の「棒人間」 会社の敷地に入っていればセーフ??)

 

<毎日更新954日目>

いつも朝礼の遅れてくる社員の話

先日、

都内でシステム開発の

会社を経営している

A社長からのご相談を

受けました。

実は、うちでちょっと困った社員がいましてね。

会話

なるほど、どんな風にお困りなのでしょうか?

うちは、午前9時が始業時刻なのですが、始業時刻である9時から毎朝必ず「朝礼」を行うことになっています。

会話

なるほど、朝9時から朝礼ですね。

ところが、この朝礼に毎朝遅れてくるある社員がいるのです。

会話

なるほど。その人はなぜ毎朝遅れるのでしょうね?

それが、その社員の言い分は、自分は毎朝9時までに、会社のビル1階の入り口には入っている。しかし、そこからエレベーターに乗って自分のデスクに着くまでに時間がかかってしまう、ということでした。

会話

なるほど、会社の1階の入り口からその社員の方のデスクまで、だいたい何分くらいかかるのですか?

だいたい、3〜5分程度かかりますね。ですから、いつも朝礼には3〜5分程度遅れてくるわけです。

会話

それで、会社としては、その社員の方に注意はしないのですか?

もう何度も注意しています。しかし、その社員は、自分は始業時刻である午前9時には会社のビルに入っているので、自分は遅刻していない、の一点張りで言うことを聞かないのです。

会話

なるほど、困りましたね〜。

さらにうちでは、週の半分くらいはテレワークにしているのですが、テレワークの始業時刻も午前9時にして、テレワークの社員にもオンラインで毎朝朝礼に参加してもらっています。

会話

で、その社員の方は、テレワークのときはちゃんと時間通り朝礼に参加するのですか?

いいえ、それがそうではないんです。一応9時までにテレワーク用のパソコンソフトを立ち上げて、通信できるようにはしていますが、家の中でなにか顔を洗ったり歯を磨いたりしているらしく、時間通り朝礼に参加したことはありません。

会話

なるほど。思うに、会社のビルに入ってから自分のデスクに座るまでの時間というのは、特に会社から管理されている時間ではなく、この部分は「労働時間」には含まれないでしょうね。

やはり、そうですか。

会話

まして、テレワークのときに、パソコンを立ち上げただけで、始業時刻に始まる朝礼に時間通り参加しないというのも論外でしょうね。

ですよね〜。

会話

社長、こういうことをズルズルと許していると全体の士気にもかかわります。きちんと注意をして、正式に「遅刻」という扱いをすべきでしょうね。

たしかに、つい社員とモメるのが嫌で、ズルズルそのままになっていました。
わかりました。きちんと対処するようにします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始業時刻と「労働時間」の関係

問題を整理すると、

たとえば会社の所定労働時間が、

始業時刻が午前9時、

終業時刻が午後6時で、

お昼休憩が1時間の合計

8時間勤務だったと

しましょう。

 

 

この場合、

社員は雇用契約上の義務として、

この所定労働時間である8時間は、

会社に対して労務を提供する

義務があるわけです。

 

 

問題は、

いつから社員が労務を

提供していたといえるか?

という問題で、

言い換えれば、

その時間が法的に「労働時間」

にあたるかどうかの問題と

なってきます。

 

 

この点、

法律上「労働時間」とは、

 労働者が、使用者の指揮命令下に置かれている時間

を言うとされています。

 

 

ですから、

たとえば午前9時が始業時刻と

定められていても、

その前の時間帯に、

着替えや現場までの移動などの

準備行為を社員が行わざるを

得ない場合。

 

 

この場合には、

午前9時よりも前に労務の提供が

始まっていると言える場合が

あります。

 

 

その結果、

1日の労働時間が所定労働時間の

8時間を超えれば、

割増賃金、

つまり残業代が発生します。

 

【着替え時間は労働時間?】賃金支払義務のある「労働時間」とは??

 

それでは、

今回のケースでは、

その社員が会社のビル1階の

入り口に入ってから、

エレベーターなどを使って移動して、

自分のデスクに座るまでの時間は、

果たして「労働時間」と

言えるのでしょうか?

 

 

この点、

たとえば、

ビル1階の入り口に入ったときに、

社員がタイムカードを

押さなければならず、

その後の移動時間も会社の

管理下に置かれているのであれば、

「労働時間」にあたる

可能性はあります。

 

 

しかし、

そのようなことはなく、

エレベーターを待っている

時間などにその社員が

スマートフォンを見たり、

イヤホンを耳に突っ込んだ

状態で移動したりできるという

通常の場合はどうか?

 

 

その場合は、

さすがにその時間は

「使用者の指揮命令下に

置かれた時間」とは

言えないケースが

多いでしょう。

 

 

ですから、

その場合には、

社員は、

始業時刻を過ぎている

にもかかわらず、

自分のデスクに到着する

までの間は、

会社に対して契約上の

「労務」を提供していない、

ということになります。

 

 

つまり、

午前9時の始業時刻とともに

開始される朝礼に遅れた場合は、

「遅刻」として扱われるべき

ことになるわけです。

 

「遅刻」する社員に対する対応

さて、

このように始業時刻に

「遅刻」する社員に対して、

会社はどのように対処したら

良いのでしょうか?

 

 

まず、

朝礼に「遅刻」していた

3〜5分の時間は、

労務の提供がない時間です。

 

 

ですから、

いわゆる「ノーワーク・ノーペイ」

の原則にしたがって、

この時間は会社の賃金支払い

義務がなくなるわけです。

 

 

わずか3〜5分ではありますが、

毎日のことになると、

結構な金額になりますし、

何より時間を守って朝礼に

参加している他の社員との間で

不公平が生じます。

 

 

さらに、

そうした自分の勝手な解釈で

「遅刻」を繰り返す社員について、

そのまま放置しないことです。

 

 

会社によっては、

その社員とのトラブルを恐れて、

ついついわずかな時間でもあるし、

そのまま放置してしまっている

ケースもあります。

 

 

しかし、

そうなると、

その社員が常習的に

「遅刻」していることを、

いわば会社が「黙認」

してしまっていることに

なります。

 

 

特定の社員だけが、

毎朝決められた

朝礼に遅れてくる、

しかも会社がそれを

黙認していたら、

時間を守っている他の

社員はどう思うでしょうか?

 

 

こういう会社は、

まともな社員の

モチベーションが下がり、

会社全体の士気や生産性に

必ず影響してきます。

 

 

そこで、

やはり会社としては、

こうした社員には

きちんと注意をして、

朝礼に遅れないように指導を

行うべきです。

 

 

そして、

指導をした際には、

なるべくそれを証拠に残す、

つまり、

指導書のような書面を渡すなり、

メールを送るなりする

べきでしょう。

 

 

それにもかかわらず、

その社員が改まらない場合には、

次の段階に行かざるを得ません。

 

 

次の段階というのは、

いわゆる懲戒処分というもので、

戒告や減給、

ひどい場合には出勤停止

などの処分があり得る

でしょう。

 

 

ただ、

この社員に対して

懲戒処分を行うためには、

会社の就業規則上で、

こうした社員の懲戒処分

についてきちんと定められて

いなければなりません。

 

 

いざという時に、

効果的な懲戒処分を行えるのかどうか、

一度自社の就業規則をきちんと

見直してみることも必要

だと思います。

 

 

それでは、

また。

 

 

 

 

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昨日は、早朝から渋谷区倫理法人会の経営者モーニングセミナーに参加。その後は昼過ぎまで事務所で仕事、新規のお客様との打ち合わせなどでした。
夕方は自宅に帰って、息子の習い事(美術教室)の送迎、合間に自宅で仕事などでした。

 

 

 

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名前吉田 悌一郎
住まい東京都

Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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