「部長」などの社内の管理職には、
残業代を支払わなくても良い、と誤解している
経営者の方が今でも結構おられます。
残念ながら、それは大きな間違いですよ、
というお話しです(^ ^)
(夜遅くまでオフィスのネオンが輝く東京駅周辺)
<毎日更新534日目>
中小零細企業の経営者の方によくある誤解の1つに、
管理職社員の残業代の問題があります。
先日も、建設業を営むある社長との間で、こんな
やりとりがありました。
うちの会社は、今繁忙期でかなり忙しいのです。
なるほど、それは大変ですね。
でも、お仕事が繁盛していて結構ですね!
ただ、そうなるとどうしても社員の残業が多くなって困ります。
割増賃金(残業代)も馬鹿になりませんし。
確かにそれはそうでしょうね。
そこで、苦肉の策と言いますか、先日うちで長く働いてくれているベテランの社員に、「工事部長」に就任してもらうことにしました。
ん?
それはどういうことですか?
いや、社員を管理職に就任させれば、残業代の支払いはしなくてもよくなると聞いたものですから。
社長、それは大きな誤解です!
え、それはどういうことですか?
一応管理職手当は出してるんですけど。
それが、管理職手当と残業代は別物なんです。
会社の管理職に就任すれば、残業代の支払義務がなくなるというものではありません。
確かに、労働基準法では、「管理監督者」に当たる場合には、残業代の支払いは不要であるとされています。
しかし、「管理監督者」というのは、法律上かなり厳しい要件があって、単なる管理職が「管理監督者」に当たるわけではないのです。
ええ!そうだったんですか?
労働基準法の「管理監督者」に当たらなければ、いくら社内で「工事部長」というような肩書きを与えても、残業代の支払いは必要となるので、注意が必要です。
労働基準法では,「監督若しくは管理の地位にある者」については,
労働時間や休憩,休日に関する規制が適用されないと規定されています。
これをいわゆる「管理監督者」と言います。
管理監督者は,時間外労働や休日労働の有無などにかかわらず,
残業代の請求権はないものとされています。
問題は,係長や課長,部長といった会社の中間管理職の立場にある人が,
この労働基準法上の「管理監督者」に当たるかどうかということが,
裁判で争いになることがあります。
この点,管理監督者に当たるかどうかの判断基準としては,
とされています。
そして、具体的には,次の3つがその判断基準として重要であるとされています。
すなわち、
①経営者と一体的な立場で仕事をするために,経営者から管理監督,指揮命令などの一定の権限を与えられていること(権限)
②出社,退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないこと(勤怠の自由)
③地位,給料その他の待遇において一般社員と比較して相応の待遇がなされていること(待遇)
このように,労働基準法上の「管理監督者」に当たるかどうかは,
形式的な役職名や権限のみで簡単に認められるものではありません。
あくまでその対象者の具体的な労働実態がどうだったのかを
見て判断されるということです。
そして,実際上,裁判になった場合には,相当の権限や裁量を持っていないと
「管理監督者」であるとは認定されない傾向にあります。
「管理監督者」ではないとすると、仮に「管理職手当」を支払って
いたとしても、残業代の支払いは免れないということになります。
ですから、安易に従業員を管理職のポストにつけて,以降は残業代を支払わないということを
やってしまうのは大変に危険ですので,注意が必要です。
というわけで、
今日のポイントは
ということです。
もし後々になって、「管理監督者」に当たらないという
ことになると、過去の分までさかのぼって残業代を
支払わなければならないことになります。
それは、場合によっては数百万円のコストになる
可能性もあります。
管理職にすれば残業代は支払わなくて良い、という誤解は、
今でも結構中小零細企業の経営者の方にはあるようですので、
この点はぜひ正しい知識を押さえておいてください!
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今回は、工事現場の騒音が原因で、周辺住民からクレームが来た場合に、建設業者が法的な責任を負うのか、というテーマでお話しています。
活動ダイジェスト
昨日は、早朝から渋谷区倫理法人会の経営者モーニングセミナーに参加。
その後、午前中は事務所で仕事をして、午後は自宅に帰って仕事。
夕方は息子の保育園と習い事(美術教室)の送迎でした。
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Profile
中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。