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渋谷の弁護士吉田悌一郎

【使用者責任】社員の不祥事の責任を会社が負わされる理由とは?

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社員が勝手なことをして、

取引先に損害を与える

ことがあります。

 

 

その場合、

会社は取引先から

損害賠償を請求される

ことがあります。

 

 

社員の不祥事で、

会社が賠償責任を

負わされる理由とは?

 

(今日の「棒人間」 社員の不始末の責任は会社が負う?)

 

<毎日更新1003日目>

社員が勝手に架空の水増し請求

建設業を営むA社長

からのご相談です。

 

 

今回は、

何やらかなり慌てて

いるご様子です。

いや〜、今回は参りました。

会話

A社長、青い顔をして、いったいどうされたんですか?

実は、我が社で主に取引先との間の契約を任せていた社員がいたんですが・・・。

会話

その社員の方が、どうかされたんですか?

はい、なんと取引先から受注した工事について、いろいろと架空の水増し請求をしていたことが発覚したのです。

会話

架空の水増し請求、ですか?

はい、どうも使っていない資材を使ったことにするなどして、本来よりも高額の金額を取引先に対して請求していたようです。

会話

そうだったのですね。

それで、その社員が工事代金を受領し、適正価格との差額を着服していたことがわかったのです。

会話

それで、その社員の方はどうなりました?

数日前から出社しておらず、行方不明です。今警察に捜査をお願いしたところです。

会話

なるほど、それはエラいことですね。

そうなんです。しかも、さらに大変なことに、この取引先からは、詐欺だと言われていまして、その取引先が支払った金額のうち、適正価格との差額を返せ、と言われているのですよ。

会話

そうなんですね。

私としては、まったくの寝耳に水で、社員が勝手にやったことなのですが、やはり請求されたら支払わなければならないんでしょうね。

会話

社長、残念ながら、結論はそうなります。使用者責任と言って、社員の一定の不法行為は、会社も連帯して責任を負わされるという法律があるのです。

 

使用者責任とは何か?

会社経営者の皆さん、

上記のようなお話は

納得が行くでしょうか?

 

 

社長が知らない間に、

社員が勝手に取引先に

対して架空の水増し

請求をしていて、

差額を自分の懐に

入れてしまう。

 

 

世間でよく

ありそうな話ですね。

 

 

それだけではなく、

真相を知った取引先から、

適正価格との差額を

請求されてしまった。

 

 

この場合、

本来一番悪いのは、

勝手に水増し請求

を行なって、

差額を着服した

社員です。

 

 

ですから、

法的に言えば、

この社員は取引先に

対して不法行為責任を負い、

取引先はこの社員に

対して損害賠償請求を

することができます。

 

 

しかし、

それにとどまらず、

この取引先は、

この社員を雇っていた

会社に対しても、

損害賠償請求できる

場合があります。

 

 

これを、

専門的には「使用者責任」

と言います。

そんなバカな話があるか!
社員が勝手にやったことなのに、なぜ会社が賠償しなければならんのだ!むかっ (怒り)

と、こんな風に

思われる社長も

おられるかも

知れません。

 

 

しかし、

法律の世界では、

損害賠償の問題を

考えるにあたっては、

 

 

誰にどの程度賠償

させるのが「公平」

なのか?

という観点から

考えます。

 

 

確かに、

一番悪いのは

着服した社員です。

 

 

しかし、

だいたいこの手のケースでは、

その社員はすでに

逃げてしまっているか、

そうでなくても賠償に

応じる資力がないのが

普通です。

 

 

そこで、

この場合、

この社員のせいで

発生した「損失」を、

被害にあった取引先か、

 

 

それともこの社員を

雇っていた会社か、

どちらに負担させるのが

「公平」なのか?

ということが問題に

なります。

 

 

この点、

会社というものは、

やはり社員を雇用し、

社員を使うことで

利益を上げています。

 

 

そうであれば、

この社員を使うこと

によって発生した損失

についても、

負担するのが公平である、

という考え方があります。

 

 

これを、

専門的には

「報償責任(ほうしょう責任)の原理」

と言ったりします。

 

 

そこで、

やはり上記の例でも、

社員がしでかした不始末、

ということで、

 

 

A社長の会社が

「使用者責任」を問われ、

取引先からの賠償請求に

応じる義務がある、

ということになります。

 

 

ただし、

もしこの取引先が、

実はA社長の社員が

水増し請求をしていて、

差額を着服しているという

事実を知っていたか、

 

 

あるいはちょっと

注意すれば発見する

ことができた、

という場合はどうでしょう?

 

 

この場合は、

むしろ取引先を保護

すべき要請が弱まり、

逆にA社長の会社を

保護すべき要請が

強まります。

 

 

法律的には、

「過失相殺(かしつそうさい)

と言って、

被害者側にも落ち度が

ある場合には、

 

 

その落ち度(過失割合と言います)

に応じて、

賠償額を減額される、

という制度があります。

 

 

このようにして、

法律では、

不祥事を起こした社員

による「損失」を、

誰がどれだけ負担

するのが公平か、

という観点から決められる

ようになっているわけです。

 

 

 

 

社員に任せきりにすることのリスク

とは言え、

やはり取引先に特に

落ち度がないという場合には、

A社長の会社が取引先からの

賠償請求に応じ

なければならない、

ということになります。

 

 

A社長としてみれば、

信頼して取引先との間の

契約業務をその社員に

任せていたのに、

その社員に裏切られて

大変な災難だ、

ということになるでしょう。

 

 

しかし、

いくら社員を信頼して

いるからといって、

フリーハンドで信頼して

任せきりにしていると、

 

 

上記のような場面で

会社に責任が発生する

リスクがあります。

 

 

取引先との間の契約

という会社にとって

重要な業務を、

1人の社員に完全に

任せきりにするのではなく、

 

 

できれば複数の社員

で担当させる、

社長が定期的に

チェックを入れる等、

できる限り不祥事が

起きにくい社内体制を

作ることが重要かと

思います。

 

 

社員の不祥事、

というものは、

なかなか完全に防げる

ものではないかも

知れません。

 

 

しかし、

いざ不祥事が起これば、

会社が「使用者責任」を問われ、

社員の不始末の尻拭いを

させられることがある、

ということは、

覚えておかれた方が

良いかと思います。

 

 

思うに、

信用するということと、

業務を任せきりにする、

丸投げするというのは、

意味が違います。

 

 

社員を信用しつつも、

会社としての法的な

リスクは自覚して

おかなければ

なりませんね。

 

 

それでは、

また。

 

 

 

 

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最新動画 

今回は、「ちょっと一服」が多すぎ?タバコ休憩は労働時間なのか?というテーマでお話ししています。

 

 

 

 

活動ダイジェスト

昨日は、顧問先の仕事で静岡日帰り出張でした。

 

 

 

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名前吉田 悌一郎
住まい東京都

Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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