「裁判しないで解決」する建設業・不動産業を多く扱う
渋谷の弁護士吉田悌一郎

10%までなら社員の給料を減額できるという大きな誤解

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ネット情報などで、

「10%までなら社員の

給料を減額できる」という

噂が流れていることが

ありますが、

正確ではありません。

 

 

間違った知識で

判断すると、

社員との間で思わぬ

トラブルになりますので、

注意が必要です。

 

(今日の「棒人間」 一方的な減給はトラブルのもと?)

 

<毎日更新1021日目>

10%までなら社員の給料を減らせる??

先日、

都内で建設業を営む

会社を経営している

A社長から、

社員の給料に関する

ご相談を受けました。

実は、うちも今なかなか業績が厳しくて、おまけにコロナ融資で銀行から借りたお金の返済も始まって、いろいろ大変なんです。

会話

なるほど、それは大変ですよね。

そこで、当面の間、社員の給料を一律10%下げたいと考えているのですが、問題ないでしょうか?

会話

10%の減給ですね。実は法律的には結構ハードルが高いですよ。

え、そうなんですか?
実は、インターネットで調べたら、10%までなら社員の給料を減らすことができる、と書いてありましたよ。

会話

それはおそらく、懲戒処分として社員に減給処分をかす場合の話だと思います。
そうではなくて、会社の都合によって社員の給料を下げるのは、「労働条件の不利益変更」、となります。

労働条件の不利益変更、ですか?

会話

そうなんです。給料というものは、会社と社員との間の労働契約の内容となっているので、会社の都合で給料を減らすというのは、そうした契約で決まった労働条件を社員の不利益に変更する、ということになるわけです。

なるほど、じゃあ、やっぱり一時的でも社員の給料を減らすのは難しいのでしょうか?

会話

そうですね、原則として社員の合意なく会社が一方的に減給することはできません。

やっぱりそうですか〜。

会話

ただし、例外的に、会社の経営状況からして、減給がやむを得ない場合で、しかも減給の程度がそれほど大きくなければ、就業規則の変更によって減給ができる場合もあり得ます。

 

労働条件変更としての「減給」は難しい

やはり、

インターネットの情報

というものは、

お手軽な分、

正確ではない情報も

あふれています。

 

 

経営者としては、

やはり労務に関しても

正しい法的知識を

身につけておく必要が

あります。

 

 

よく「10%までなら、

会社は社員の給料を下げられる」

などと言っている

人がいますが、

正確に言えばそれは

間違いです。

 

 

社員の労働条件は、

会社と社員との合意、

すなわち労働契約に

基づいて決定されるのが

原則です。

 

 

そこで、

労働条件を変更する

という場合も、

会社と社員との合意に

基づいて行われるのが

原則となります。

 

 

社員の給料の金額も、

これは労働条件という

ことになりますので、

会社が一方的に社員の

給料を減額する、

ということはできません。

 

 

それは

「労働条件の不利益変更」

と言って、一種の

労働契約違反

ということに

なってしまいます。

 

 

ただし、

もし給料などの労働条件が

会社の就業規則

定められている場合で、

次の要件を満たす場合には、

 

 

就業規則を変更して

労働条件を変える

ことができます。

 

 

つまり、

その場合には例外的に

社員の同意がなくて

労働条件を変更する

ことが可能になります。

 

 

すなわち、

会社側が

変更後の就業規則を社員に周知させ、かつ、就業規則の変更が、社員の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものである

というような場合です。

 

 

ただし、

給料の減額は、

労働条件の変更の中でも、

社員の生活に直接

大きな影響を与える

ものですので、

実際にはかなり

ハードルが高いです。

 

 

上記の例で言えば、

経営悪化がかなり客観的な資料

等から明らかである

必要があるでしょう。

 

 

また、

仮に減額ができる場合でも、

おおむね10%程度の減額

であれば認められる

可能性がありますが、

 

 

それを超える大幅な減額は、

就業規則変更の合理性

がないとされる

可能性が高いでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

懲戒処分として「減給」する場合

上記のような、

労働条件の不利益変更

としての「減給」とは別に、

社員の懲戒処分として

「減給処分」を行う

場合があります。

 

 

社員の懲戒処分というのは、

戒告、減給、出勤停止、

懲戒解雇などの一定の

種類があります。

 

 

通常は、

社員が業務上何らかの

問題行動を起こし、

その程度によって懲戒処分の

重さが決まってきます。

 

 

まず大切なことは、

社員に懲戒処分としての

減給処分を行う場合、

必ず就業規則の中で

減給処分になる場合が

規定されていること。

 

 

そして、

実際に社員が行った

問題行動が、

その就業規則にある

減給処分になる

場合に当てはまる、

ということが必要

となります。

 

 

また、

就業規則に根拠規定が

あったとしても、

常識的に見て社員が

行った行動に比較して、

減給処分が重すぎる

ような場合は、

 

 

不当な懲戒処分として

法律上無効となります。

 

 

すなわち、

あらゆる懲戒処分が

そうですが、

 

 

社員の問題行動と比較して、

実際に課される懲戒処分が

重すぎてなならない、

という「相当性のルール」

というものがあります。

 

 

極端な例をあげれば、

始業時刻に30秒遅刻しただけで、

減給処分を行うというのは

明らかに重すぎますので、

そうした懲戒処分は

無効になる、

ということです。

 

 

さて、

減給処分が有効であるとしても、

実際の減給の範囲については

法律上制限があります。

 

 

労働基準法91条で、

社員の懲戒処分としての

減給処分を課す場合には、

その減給の額は、

給料総額の10%を超えては

ならないと定められています。

 

 

この「10%」というのが一人歩きして、

 10%までなら会社が給料を下げられる

という誤解が生まれてい

るものと思われます。

 

 

そうではなくて、

懲戒処分として減給する場合には、

就業規則に根拠規定があること、

その処分が不当に重すぎないこと、

といった上記の要件があります。

 

 

その上で、

減給できる金額は、

給料総額の10%までですよ、

と法律で定められている

わけです。

 

 

ちなみに、

1回の問題行動に対して

懲戒処分としての減給を

行えるのは1回だけです。

 

 

社長や取締役などの

役員とは異なり、

たとえば3ヶ月減給とか、

半年間減給すると

いうように期間を定めて

減給することはできない、

とされています。

 

 

このように、

インターネット上には

不正確な情報もたくさん

あります。

 

 

安易にネット情報を信頼して、

社員の減給を行なってしまうと、

社員との間でトラブルとなり、

最悪は「裁判沙汰」に

陥る危険があります。

 

 

この点、

私のミッションは、

ということ。

 

 

社員との「裁判沙汰」を

予防するためにも、

ネット情報を安易に鵜呑みに

して物ごとを決めては

いけません。

 

 

やはり重要なことは、

弁護士などの専門家に

相談するようにして下さい。

 

 

それでは、

また。

 

 

 

 

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最新動画 

今回は「情報発信 書く・話す・描くのバランス」というテーマでお話ししています。

 

 

 

 

活動ダイジェスト

昨日は、青梅マラソン(30キロ)に出場してきました。この大会は4回目の出場です。
前半はのぼり15キロ、後半は下り15キロのコース。前半は順調でしたが、後半の下りは足が痛くなって大幅ペースダウン。それでも何とか完走できました。
やはり日頃からもう少し走り込まないと、と反省しました。

 

 

 

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名前吉田 悌一郎
住まい東京都

Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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