契約書には
なぜ「ハンコ」を押すのでしょうか?
「ハンコ」押していない契約書は
法律上効力がないのでしょうか?
(今日の「棒人間」 ハンコは大事??)
<毎日更新1065日目>
いつも、このブログを読んでるもんで、なるべく取引先との契約書を作るようにしているんです。
それは、すごく良いことだと思います。
ところが、契約書にサインはしたんですが、「ハンコ」を押すのを忘れちゃいました。
契約書とか
重要な文書には
押印、つまり「ハンコ」を押すもの
という一種の「常識」があります。
この点、欧米では
「ハンコ」という文化はなく
伝統的にはもっぱら「サイン」が
重要視されていました。
よく外国の映画なんかで
お金持ちが小切手にサインを
しているシーンがありましたね。
これに対して
日本ではやはり伝統的に
「ハンコ」が重視される。
契約書には
やはり「ハンコ」を押さなければ
ならないのでしょうか?
「ハンコ」を押していない契約書は
法的な効力がないのでしょうか?
この点、法律的には
そもそも契約書というものは
当事者がそのような内容の契約を
結んだという証拠になるものです。
たとえば
AさんがBさんに100万円貸した場合に
AさんとBさんは、「借用書」という
貸金の契約書を作ったとします。
この場合
この「借用書」は
AさんとBさんが
それぞれその自分の意思にしたがって
作ったものである必要があります。
もし仮に
Aさんと、第三者であるCさんが結託して
Bさんが知らない間に
BさんがAさんから100万円を
借りたことにしてしまおう
と企んだとします。
そして
CがBさんに承諾を得ることもなく
Bさんの名前を勝手に使って
AさんがBさんに100万円を
貸したとする借用書に
Bさんの名前を書き込んだとします。
この場合
真実はBさんはAさんから
100万円を借りていませんし
Aさんとの借用書にも
一切タッチしていません。
そこで
このように
AとCが結託して
Bさんの名前を無断使用した契約書は
Bさんの意思に基づくものではないので
法的にも無効となります。
このように
契約書などの文書は
あくまでその作成者の意思に基づいて
作成されていなければならないのです。
そして
民事訴訟法という法律の228条4項で、
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
と規定されています。
契約書もここでいう
「私文書」にあたるわけですが
作成者本人の署名や「ハンコ」があれば
それは真正に成立したもの
すなわち、当事者の意思に基づいて
作成されたことが推定されるというわけです。
「推定される」というのは
反対の証拠がない限り
その契約書が作成者の意思に
基づいて作られたものと扱われる
ということです。
逆に
上記の借用書の例では
あくまで「B」と署名したのはCであり
Bさんではありません。
ですから
やはり真正に成立した文書とは認められません
(実際には、筆跡鑑定をして、Bさんが自ら署名していないこと
を立証する必要がありますが)。
署名(サイン)または
押印(ハンコ)のある契約書に
なぜこうした真正文書としての
推定が認められるのでしょうか?
これは、まず
サインは筆跡で本人以外の人間
が行うことはできません
そして、
我が国では伝統的に印鑑が重視され
自分の印鑑を他人が
持ち出すことはないだろう
という前提に立っています。
すなわち
その人の印鑑が押されていれば
それはその人の真意に基づいて
押されたものである可能性が高い
という常識的な判断が背後にあります。
現代では
こういう前提もかなり
怪しくなっていますけどね。
簡単に言えば
日本の法律では
「ハンコ」を押した文書は
真正な文書であると扱われて
重みがあるということになります。
ただし
契約書に「ハンコ」を
押していないからと言って
その契約書が法的に効力がない
ということにはなりません。
上記の民事訴訟法の規定により
本人の署名
すなわちサインがあれば
やはり真正な文書と推定されます。
とはいえ
今どき
紙の契約書に署名や押印を
しなければならない
というのはかなり面倒でもあります。
私も弁護士をしていて
多数の「契約書」を扱いますが
当事者が遠くに住んでいるようなときは
郵送で同じ契約書に順番に署名・押印
してもらうなんて面倒なことをしています。
上記のように
署名・押印した紙の契約書に
法律が一定の重きを置いている以上
致し方ない面があります。
ところが、最近は
紙ではない
いわゆる電子契約書によって
契約をする会社なども増えてきました。
当たり前ですが
電子契約書は紙ではありませんので
当然署名や押印はありません。
こうした署名や押印のない
電子契約書は有効なのか。
紙の契約書のように
本人に意思に基づいて作成されたという
真正文書の推定は働かないのか?
長くなりましたので
その辺は明日また
お話ししたいと思います。
それでは
また。
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中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
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私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。