とにかく過激な内容の情報発信を
した方が注目されるという
「アテンションエコノミー」
しかし
行きすぎた内容は
「名誉毀損」などの法的なトラブルを
引き起こす可能性があります。
(今日の「棒人間」 注目されたい人?)
<毎日更新1206日目>
今は
企業の約4割がSNSを
活用しているという時代。
中小零細企業でも
自社の営業や認知度向上のために
SNSを活用している
ケースも多いでしょう。
京都のある内装会社の社長が
「職場の裏側を投稿しております」と
TikTokのアカウントを開設し
日々の社内の出来事などを
投稿していました。
当初は当たり障りのない内容の
投稿だったようですが
次第に投稿内容が「過激」に
なって行きます。
ある投稿では
社員に片付けが不十分なことを理由に
「どつくぞ」と言いながら
やり直しを命じる場面も
あったようです。
内容が過激になるにつれて
いわゆる「バズる」現象も現れ
同社のアカウントのフォロワーは
7万人を超えました。
そして
人気が出るにつれて
さらに内容は過激に
なっていきました。
ある動画では
社内のトラブルに対してある
男性社員が虚偽の説明をしたと糾弾。
「噓つきが直りますように」などと
半裸の上半身に油性ペンで
書き込んだそうです。
男性が両手を必死に上げ下げ
しながら謝罪する姿を
社長と別の従業員らが笑いものにする
ような動画を投稿したそうです。
やがて
この動画で標的にされた男性社員は
出社を拒むようになりました。
ところが
社長のその後の投稿は
ますますエスカレート。
この男性社員が会社貸与の作業服や
工具を返却していないことを激しく非難し
顔写真も公開しました。
その上
驚くべきことに
視聴者に「目撃情報を募ります」などと
あおる動画も投稿したとのことです。
その後
この社員は
社長が投稿した7本の動画で
名誉を傷つけられたとして
裁判を起こしました。
そして
この裁判の判決は
一般人の感覚を基準とすると一連の動画は男性について「謝罪がろくにできず人に迷惑をかける人物」という印象を与える
と指摘し
名誉毀損の成立を認め
動画削除と
社長と会社が連帯して
22万円を支払うように命じました。
名誉毀損というのは
公然と事実を示すなどして
人の社会的評価を低下させる
行為を言います。
冒頭の事例の動画では
一人の社員に対するいじめ
のような酷い投稿であり
名誉毀損の要件を満たす
ことは明らかでしょう。
民事裁判で名誉毀損が認められると
加害者は被害者に対して
謝罪広告その他名誉を回復する
措置などが命じられます。
さらに
慰謝料等の損害賠償責任も発生します。
そして
実はそれだけではなく
刑法上も名誉毀損罪という
犯罪が定められています。
この名誉毀損罪に該当する場合には
刑法230条1項により
という刑罰も定められています。
したがって
名誉毀損は下手をすると
被害者から告訴などをされて
刑事事件として立件されて
しまうリスクもあります。
特に
インターネット上の投稿は
「公然と」全世界に対して
公開するものですから
やはり投稿内容によっては
この「名誉毀損」のリスクは
付きまとうと言えます。
ところが
他人の名誉を毀損したり
誹謗中傷したりする投稿は
今の時代
特にインターネット上では
注目を集めやすいという
性質があります。
当たり障りのない投稿では
注目されませんが
こういった「危うい」内容の
投稿は注目されて
いわゆる「バズる」という
現象も起こります。
冒頭の例ではないですが
投稿者がそれに味をしめて
さらに投稿内容が過激化していく
ということは十分にあり得ることです。
今の時代は
「アテンションエコノミー」と言われ
そうやって注目を集めることで
経済的利益を得ようとする
動きが少なからずあります。
しかし
中小零細企業経営者の情報発信
として考えなければならないのは
何のためにSNSなどのネットを利用し
何のために注目されるのか
ということです。
他人の
しかも自社の社員の名誉を毀損し
「いじめ」のような動画を投稿することで
注目を集めていったい
何になるのでしょうか?
そんなことで注目を集めても
本当に自社が必要とする良いお客様に
来ていただけるとは到底思えません。
とにかく注目されたい
というアテンションエコノミー時代の
情報発信の危うさがここにあります。
中小零細企業企業が
情報発信をする本来の目的は何なのか?
それは
良い情報を社会に発信することで
自社の理念を伝えるとともに
真の意味で自社の商品やサービスを
必要としているお客様に情報を
届けることではないでしょうか?
少なくとも
人の人権を侵害し
社会に害を撒き散らしてまで
注目を浴びることではないはずです。
実は
冒頭の事例は
日経新聞の「揺れた天秤」という
司法問題を扱う記事に
掲載されていたものです。
私も情報発信者の端くれとして
今の「アテンションエコノミー」時代の
情報発信について
深く考えさせられる事例でした。
くれぐれも
情報発信の目的を
見失わないようにしたいものです。
それでは
また。
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Profile
中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。
中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。
【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。
中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。
私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。
また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。