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渋谷の弁護士吉田悌一郎

【間違い探し】「懲戒解雇は退職金はなく、予告なく解雇できます」

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「懲戒解雇は退職金はありません」

 

 

「懲戒解雇は

予告なく解雇できます。」

 

 

これはよく誤解されていますが

法的に見ると両方とも間違いです。

 

 

(今日の「棒人間」 間違い探し??)

 

<毎日更新1213日目>

有名人のベストセラーにも間違いが??

こういうところは、悪い癖なのか

間違いがつい気になってしまうのです。

 

 

ある著名人のベストセラーに

なっている本を何気なく

読んでいたときのことです。

 

 

ある文脈で

懲戒解雇というのは、・・・犯罪行為などの時に適用される懲戒処分の中でももっとも重い処分です。退職金はなく予告なく解雇することができるものです。

と書いてありました。

んんん・・・あれ?ちょっと違うな。

問題は

この「懲戒解雇は退職金はなく

予告なく解雇できます」の一文です。

 

 

 

実は

これには法律的に見ると

2つの間違いが含まれています。

 

 

 

 

 

懲戒解雇だから退職金がないとは限らない

まず

懲戒解雇は「退職金がない」

という点。

 

 

これは

多くの方が誤解して

いる点でもあります。

 

 

確かに

よく会社の就業規則などに

 懲戒解雇になった者には、退職金を支給しない

という規定が置かれて

いることがあります。

 

 

しかし、法的に見ると

仮に懲戒解雇が有効であったとしても

それと退職金の支給はまた別問題です。

 

「懲戒解雇なら、退職金はすべて支払わなくていい」は本当ですか?

 

 

というのは

退職金というのは

 

 

賃金の後払いという

性質を持っています。

 

 

ということは

いくら懲戒解雇になった

社員だからといって

 

 

そう簡単に不支給や減額はできない

という結論になります。

 

 

なので

懲戒解雇になった社員に対して

 

 

退職金を不支給ないし減額が有効

となるためには、

社員のそれまでの勤続の功労を抹消ないしは減殺してしまう程度の、著しく信義に反する行為があった場合に限られる

とされています。

 

 

ただ

裁判例などに照らしても

退職金の全額の不支給が許されるのは

 

 

相当限定的な場合ということになろうかと

思います。

 

 

ですから

当然のように

 

 

懲戒解雇だから「退職金はない」

と記載するのは

 

 

やはり法的には間違いと

言わざるを得ません。

 

 

 

 

 

 

懲戒解雇は予告なく解雇できる??

次に

 

 

懲戒解雇は

「予告なく解雇することができる」

という点です。

 

 

この点

解雇予告について定めた

労働基準法20条1項は

 

 

次のように定めています。

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

 

つまり

社員を解雇する場合には

やはり原則として30日以前に

予告は必要ということです。

 

 

そして

もし予告なく解雇する場合には

 

 

30日分以上の平均賃金を

支払わなければなりません。

あれ?だけどこの条文の後段を見ると、「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」は「この限りでない」と書かれていますね。
これって、懲戒解雇する場合と違うんですか?

確かに

こんな疑問を持たれるでしょうね。

 

 

結論的に言うと

これは厳密には

 

 

「労働者の責に帰すべき事由

に基いて解雇する場合」と

 

 

懲戒解雇の場合は

イコールではないのです。

 

「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」
 ≠
懲戒解雇

 

 

この労働基準法20条1項後段の

「労働者の責に帰すべき事由

に基いて解雇する場合」と言うのは

「使用者に解雇に当たっての予告または予告手当の支給を要求する必要のない程度に

重大な背信的行為」があった場合

を言うとされています。

 

 

具体例を挙げますと

例えば無断欠勤が長期間続いた場合は

 

 

懲戒解雇が有効とされる

可能性は高くなるでしょう。

 

 

しかし

 

 

解雇の予告が不要となるまでの

「重大な配信的行為」とまでは

言えない場合が多いでしょう。

 

 

すなわち

解雇の予告が不要となる

 

 

「労働者の責に帰すべき事由

に基いて解雇する場合」

には該当しないということです。

 

 

ですから

この場合には

きちんと予告するか

 

 

解雇予告手当を支払った上で

懲戒解雇を行う必要がある

ということなのです。

 

 

イメージとしては

こういう感じでしょうか。

 

懲戒解雇
 ≧
「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」

 

 

それにしても

著名人の書いた本にも

 

 

法的に見ると間違いとなることが

堂々と書かれていることがあるものです。

 

 

ちなみに

この本の作者は

 

 

法律の専門家ではないですが

いわゆる著名な有識者の方です。

 

 

それだけに影響力も

大きいわけです。

 

 

この本を読んで

知らない方は

そうか!懲戒解雇は退職金も出ないし、予告も不要なのか!

と誤った知識を持って

しまうのも問題でしょう。

 

 

やはりこの辺は

正確に書いてほしいものですね。

 

 

それでは

また。

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名前吉田 悌一郎
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Profile

中小零細企業の顧問契約をメインの仕事としています。

中小零細企業が法的トラブルに巻き込まれるのを未然に防止すること、 そして、 情報発信を通じて弁護士の敷居を下げ、中小零細企業にもっと弁護士を利用していただくことを使命として活動しています。

【私のミッション】
中小零細企業の味方であり、中小零細企業のトラブルを「裁判しないで解決すること」をミッションにしています。

中小零細企業のトラブルが、「裁判沙汰」にまで発展すると、経営者の方にかかる時間的・経済的負担が大きく、エネルギーを消耗します。

私は、中小零細企業のトラブルをできる限り未然に防止する、万が一トラブルになっても、それをできるだけ小さいうちに「解決」することで、経営者の方の余計な負担をなくし、本業にエネルギーを傾けていただきたいと考えています。

また、中小零細企業の「お困りごと」に関しては、法律問題という弁護士の職域を超えて、経営コンサルタント(キャッシュフローコーチ)として、経営相談や金融機関融資の支援などを通じて、日本経済を支える中小企業の「お困りごと」全般のお手伝いをすることにも力をいれています。

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